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第9話「待ち人」③
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「ねえ。そういえばさ、お祭りどうするの?」
「祭り?あー…どうするって?」
樹はまだ何か気にかかるようで、『心ここにあらず』といった感じだった。何を考えているかもなんとなくわかった。でも、私はこの話をするためにずっと待っていたので、強引に会話を続けることにした。
「お祭り!行かないの?学校の人とかと一緒にさ」
「んー…そうだな…。今のところ、そんな予定はないな」
よしきた。心の中でガッツポーズを決める。
「じゃあさー……一緒に行かない?」
やっと言えた。実は前、夜に会ったときにもこの話をしようと待っていたのに、気が付くと眠ってしまっていた。でもあれはあれで結果オーライと言えた。頭なでてもらえたし。
「一緒にって、千鶴とか?」
だから、そう言ってるのに。鈍いやつだ。
「そう。私と…だめ?」
「そうだな……」
固唾をのんで返事を待つ。張り詰めた空気が、私だけに流れた。
「行くか」樹はそう言って、空を見上げた。
「たまには息抜きしないとな。祭りの最後の日でもいいか?ちょうどその日は予備校も無いし」
「そうだよ。息抜きしよう、息抜き。」
なんという僥倖。ここまでくればこっちのものだが、気が変わらないか心配になったので、念を押すことにした。
「じゃあ、約束だからね。最終日の夕方六時にここでいい?」
「ああ、そうしよう」
「やった。浴衣着て待ってる!」
思わず立ち上がる。
「お、おお…。なんか、気合い入ってんな」
ぽかーんとする樹をよそに、私はもう当日にどの浴衣を着るかで頭がいっぱいだった。
《キーーッ…パシュー……》
小踊りでもしたい気分だったが、バスがやって来てしまった。でも交渉はもう済んだので、よしとした。
「じゃあな。行ってくるよ」
樹がベンチから立ち上がって、乗降口に向かって歩き出した。
「じゃあね。勉強頑張って」
「ああ…またな」
小さくファイティングポーズをとって見送る。樹は振り返って、一瞬間を置いてから笑って返事をした。
《ギギッ》
ドアが閉まる。樹は窓側の席に座り、小さく手を振ってくれた。バスが走り出す。
「六時だからねー!」
両手でメガホンを作って、バスへ叫んだ。
「祭り?あー…どうするって?」
樹はまだ何か気にかかるようで、『心ここにあらず』といった感じだった。何を考えているかもなんとなくわかった。でも、私はこの話をするためにずっと待っていたので、強引に会話を続けることにした。
「お祭り!行かないの?学校の人とかと一緒にさ」
「んー…そうだな…。今のところ、そんな予定はないな」
よしきた。心の中でガッツポーズを決める。
「じゃあさー……一緒に行かない?」
やっと言えた。実は前、夜に会ったときにもこの話をしようと待っていたのに、気が付くと眠ってしまっていた。でもあれはあれで結果オーライと言えた。頭なでてもらえたし。
「一緒にって、千鶴とか?」
だから、そう言ってるのに。鈍いやつだ。
「そう。私と…だめ?」
「そうだな……」
固唾をのんで返事を待つ。張り詰めた空気が、私だけに流れた。
「行くか」樹はそう言って、空を見上げた。
「たまには息抜きしないとな。祭りの最後の日でもいいか?ちょうどその日は予備校も無いし」
「そうだよ。息抜きしよう、息抜き。」
なんという僥倖。ここまでくればこっちのものだが、気が変わらないか心配になったので、念を押すことにした。
「じゃあ、約束だからね。最終日の夕方六時にここでいい?」
「ああ、そうしよう」
「やった。浴衣着て待ってる!」
思わず立ち上がる。
「お、おお…。なんか、気合い入ってんな」
ぽかーんとする樹をよそに、私はもう当日にどの浴衣を着るかで頭がいっぱいだった。
《キーーッ…パシュー……》
小踊りでもしたい気分だったが、バスがやって来てしまった。でも交渉はもう済んだので、よしとした。
「じゃあな。行ってくるよ」
樹がベンチから立ち上がって、乗降口に向かって歩き出した。
「じゃあね。勉強頑張って」
「ああ…またな」
小さくファイティングポーズをとって見送る。樹は振り返って、一瞬間を置いてから笑って返事をした。
《ギギッ》
ドアが閉まる。樹は窓側の席に座り、小さく手を振ってくれた。バスが走り出す。
「六時だからねー!」
両手でメガホンを作って、バスへ叫んだ。
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