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第6話「パシストンのおたから」②
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「せっかくオレっちが気持ちよく寝ているというのに……それを起こすのはどこのどいつだ!」
そう言って犬小屋から現れたのは一匹の白いブルテリアでした。左眼のまわりとおしりのあたりに黒いぶち模様があります。
ブルテリアは「うぅー」と低くうなり声をあげながら、ノーブルのいるポストへ向かいました。そして、鎖が伸びきる少し手前あたりで、その大きな口をぱっくり開けて言いました。
「お前か、オレっちを起こしたのは?見ねえ顔だが、なんだ……くちばしの黄色いひよっ子カラスかよ」パシストンは「ふんっ!」と馬鹿にしたように鼻で笑いました。
「ずいぶんな口のきき方じゃねえか、パシストン。おれはあんたの大事なだあいじな《落としもの》をわざわさ届けにきてやったんだぜ」パシストンの態度は気にもとめず、ノーブルは言いました。
「落としものだぁ?」パシストンがすっとんきょうな声をあげます。
クルルは庭木の陰から、そのやり取りをなんとか耳だけで追いかけていました。枝の隙間を覗いてみましたが、そこからでは満足にノーブルたちを見ることができません。そんなクルルをよそに、ノーブルは話を続けました。
「これ、なあんだ?」ノーブルは右足に握ったあるものをパシストンへ向かって突き出しました。
白っぽくて細長く、両端が少し膨らんでいて…どうやら骨のようです。ノーブルはそれをうまくつかみ直し、先っぽを持ってヒラヒラさせると、ニヤリと笑いました。それがなにか理解したパシストンの顔は、怒りでみるみる歪んでいきました。
「オレっちお気に入りの骨をなんでお前が持ってるんだ!確かに小屋のそばに埋めたはず…」パシストンは慌てて後ろを振り返ります。
様子をうかがおうと庭木の端から少しだけ顔を覗かせていたクルルでしたが、こちらも慌てて元の場所へ戻りました。幸い、思いがけない状況に取り乱すパシストンは、クルルの存在に気付きません。小屋のそばの地面には、ついさっき掘り返したような跡がありました。
「悪い悪い。お気に入りっていうわりに、土ん中じゃああんまりだと思ってよう。さっき掘り出してやったのさ。この黄色いクチバシも、こんなときにゃあなかなか役に立つもんだぜ」
「このやろう」パシストンがノーブルをにらみつけます。
「さあて、おれはこいつをどうすればいい?どうせ埋め直すんなら手伝ってやるよ。こんな狭い庭じゃなんだから、近くの公園…いや、いっそ山の中にでも持っていこうかね」
内心ではパシストンの怒りようにひやひやしていましたが、ノーブルはそれをおくびにも出しませんでした。いかにパシストンを怒らせることができるか。それがこの作戦にとって重要な鍵だったからです。そして、いよいよ待ちに待った瞬間がやってきました。
「返せ!」
怒りが頂点に達したパシストンはノーブルへと飛びかかりました!
そう言って犬小屋から現れたのは一匹の白いブルテリアでした。左眼のまわりとおしりのあたりに黒いぶち模様があります。
ブルテリアは「うぅー」と低くうなり声をあげながら、ノーブルのいるポストへ向かいました。そして、鎖が伸びきる少し手前あたりで、その大きな口をぱっくり開けて言いました。
「お前か、オレっちを起こしたのは?見ねえ顔だが、なんだ……くちばしの黄色いひよっ子カラスかよ」パシストンは「ふんっ!」と馬鹿にしたように鼻で笑いました。
「ずいぶんな口のきき方じゃねえか、パシストン。おれはあんたの大事なだあいじな《落としもの》をわざわさ届けにきてやったんだぜ」パシストンの態度は気にもとめず、ノーブルは言いました。
「落としものだぁ?」パシストンがすっとんきょうな声をあげます。
クルルは庭木の陰から、そのやり取りをなんとか耳だけで追いかけていました。枝の隙間を覗いてみましたが、そこからでは満足にノーブルたちを見ることができません。そんなクルルをよそに、ノーブルは話を続けました。
「これ、なあんだ?」ノーブルは右足に握ったあるものをパシストンへ向かって突き出しました。
白っぽくて細長く、両端が少し膨らんでいて…どうやら骨のようです。ノーブルはそれをうまくつかみ直し、先っぽを持ってヒラヒラさせると、ニヤリと笑いました。それがなにか理解したパシストンの顔は、怒りでみるみる歪んでいきました。
「オレっちお気に入りの骨をなんでお前が持ってるんだ!確かに小屋のそばに埋めたはず…」パシストンは慌てて後ろを振り返ります。
様子をうかがおうと庭木の端から少しだけ顔を覗かせていたクルルでしたが、こちらも慌てて元の場所へ戻りました。幸い、思いがけない状況に取り乱すパシストンは、クルルの存在に気付きません。小屋のそばの地面には、ついさっき掘り返したような跡がありました。
「悪い悪い。お気に入りっていうわりに、土ん中じゃああんまりだと思ってよう。さっき掘り出してやったのさ。この黄色いクチバシも、こんなときにゃあなかなか役に立つもんだぜ」
「このやろう」パシストンがノーブルをにらみつけます。
「さあて、おれはこいつをどうすればいい?どうせ埋め直すんなら手伝ってやるよ。こんな狭い庭じゃなんだから、近くの公園…いや、いっそ山の中にでも持っていこうかね」
内心ではパシストンの怒りようにひやひやしていましたが、ノーブルはそれをおくびにも出しませんでした。いかにパシストンを怒らせることができるか。それがこの作戦にとって重要な鍵だったからです。そして、いよいよ待ちに待った瞬間がやってきました。
「返せ!」
怒りが頂点に達したパシストンはノーブルへと飛びかかりました!
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