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第10話『東の空のおこりんぼう』
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南の空をあとにしたモックじいさんと雲は、今度は東の空へと向かいました。太陽が昇り出る、東の空を見てみようということになったのです。
モックじいさんと彼を乗せた雲は、また鳥かなにかを見つけて雲の居場所をたずねてみようかと相談していましたが、どうやらその必要はなさそうでした。なぜなら、東の空が近づくにつれ、もくもくとした真っ黒な雲が目の前に現れたからです。
雲は時々ゴロゴロという唸り声をあげては、大事そうに抱えたピカピカした雷を、それとばかりに地上に落としていました。その度に、大地は揺れ、耳をつんざくような音が鳴り響きます。
モックじいさんたちはおっかなびっくりと、雲に近づいて聞きました。
「どうした、どうした。なにをそんなに怒っとる」
雲は少しのあいだ手をやすめることにしたようで、ゴロゴロ言いながらモックじいさんの質問に答えました。
「どうしたもこうしたもあるかい。おいら今こうやって、地上のやつらを震えあがらせてんのさ」
それを聞いたモックじいさんは、なげかわしいとばかりに首を振りました。
「そんなひどいことはもうおやめ。地上のものがおまえになにをしたというんだ」
すると雲はあきれたように言いました。
「なにをしたかだって? なにかしでかさないように、こうやっておいらが脅かすんじゃないか」
「脅かすなんて、いったいなぜ?」
「傲ったり、見下したりさせないためさ」
モックじいさんはさっきと同じことを聞きました。
「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」
雲はどこかで聞いたようなことを言いました。
「そんなの、おいらもよくわかんないよ。でも、とっても大切なことだと思うから、ここぞというときに、えいやと雷を投げつけるのさ」
「なにもあんなに脅かさなくてもいいんじゃないか? ほどほどというわけにはいかんのか」
「そりゃ、しょっちゅうゴロゴロドンドンしやしないよ。でも、やるときゃやらなきゃ意味がないよ」
「そんなものか」
「そんなものだよ」
やっぱり雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、怒ってばかりでもないようなので、ひとまず安心しました。そしてここでも、最後にひとつだけ聞いてみることにしました。
「じゃあ、おまえはそれで満足なんだな?」
「満足かどうかだって? そんなの今はわかりゃしないよ。下のやつらが雷に驚いて、自分が一番えらくて強いだなんて思わないように、その鼻が伸びる前にへし折ってるんだから。だから、おいらの雷がなくても、謙虚でつつましく暮らすものばかりになったそのときに初めて、ようやく満足いったかどうか決まるんだと思うよ」
モックじいさんと彼を乗せた雲は、また鳥かなにかを見つけて雲の居場所をたずねてみようかと相談していましたが、どうやらその必要はなさそうでした。なぜなら、東の空が近づくにつれ、もくもくとした真っ黒な雲が目の前に現れたからです。
雲は時々ゴロゴロという唸り声をあげては、大事そうに抱えたピカピカした雷を、それとばかりに地上に落としていました。その度に、大地は揺れ、耳をつんざくような音が鳴り響きます。
モックじいさんたちはおっかなびっくりと、雲に近づいて聞きました。
「どうした、どうした。なにをそんなに怒っとる」
雲は少しのあいだ手をやすめることにしたようで、ゴロゴロ言いながらモックじいさんの質問に答えました。
「どうしたもこうしたもあるかい。おいら今こうやって、地上のやつらを震えあがらせてんのさ」
それを聞いたモックじいさんは、なげかわしいとばかりに首を振りました。
「そんなひどいことはもうおやめ。地上のものがおまえになにをしたというんだ」
すると雲はあきれたように言いました。
「なにをしたかだって? なにかしでかさないように、こうやっておいらが脅かすんじゃないか」
「脅かすなんて、いったいなぜ?」
「傲ったり、見下したりさせないためさ」
モックじいさんはさっきと同じことを聞きました。
「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」
雲はどこかで聞いたようなことを言いました。
「そんなの、おいらもよくわかんないよ。でも、とっても大切なことだと思うから、ここぞというときに、えいやと雷を投げつけるのさ」
「なにもあんなに脅かさなくてもいいんじゃないか? ほどほどというわけにはいかんのか」
「そりゃ、しょっちゅうゴロゴロドンドンしやしないよ。でも、やるときゃやらなきゃ意味がないよ」
「そんなものか」
「そんなものだよ」
やっぱり雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、怒ってばかりでもないようなので、ひとまず安心しました。そしてここでも、最後にひとつだけ聞いてみることにしました。
「じゃあ、おまえはそれで満足なんだな?」
「満足かどうかだって? そんなの今はわかりゃしないよ。下のやつらが雷に驚いて、自分が一番えらくて強いだなんて思わないように、その鼻が伸びる前にへし折ってるんだから。だから、おいらの雷がなくても、謙虚でつつましく暮らすものばかりになったそのときに初めて、ようやく満足いったかどうか決まるんだと思うよ」
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