10 / 13
第10話『東の空のおこりんぼう』
しおりを挟む
南の空をあとにしたモックじいさんと雲は、今度は東の空へと向かいました。太陽が昇り出る、東の空を見てみようということになったのです。
モックじいさんと彼を乗せた雲は、また鳥かなにかを見つけて雲の居場所をたずねてみようかと相談していましたが、どうやらその必要はなさそうでした。なぜなら、東の空が近づくにつれ、もくもくとした真っ黒な雲が目の前に現れたからです。
雲は時々ゴロゴロという唸り声をあげては、大事そうに抱えたピカピカした雷を、それとばかりに地上に落としていました。その度に、大地は揺れ、耳をつんざくような音が鳴り響きます。
モックじいさんたちはおっかなびっくりと、雲に近づいて聞きました。
「どうした、どうした。なにをそんなに怒っとる」
雲は少しのあいだ手をやすめることにしたようで、ゴロゴロ言いながらモックじいさんの質問に答えました。
「どうしたもこうしたもあるかい。おいら今こうやって、地上のやつらを震えあがらせてんのさ」
それを聞いたモックじいさんは、なげかわしいとばかりに首を振りました。
「そんなひどいことはもうおやめ。地上のものがおまえになにをしたというんだ」
すると雲はあきれたように言いました。
「なにをしたかだって? なにかしでかさないように、こうやっておいらが脅かすんじゃないか」
「脅かすなんて、いったいなぜ?」
「傲ったり、見下したりさせないためさ」
モックじいさんはさっきと同じことを聞きました。
「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」
雲はどこかで聞いたようなことを言いました。
「そんなの、おいらもよくわかんないよ。でも、とっても大切なことだと思うから、ここぞというときに、えいやと雷を投げつけるのさ」
「なにもあんなに脅かさなくてもいいんじゃないか? ほどほどというわけにはいかんのか」
「そりゃ、しょっちゅうゴロゴロドンドンしやしないよ。でも、やるときゃやらなきゃ意味がないよ」
「そんなものか」
「そんなものだよ」
やっぱり雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、怒ってばかりでもないようなので、ひとまず安心しました。そしてここでも、最後にひとつだけ聞いてみることにしました。
「じゃあ、おまえはそれで満足なんだな?」
「満足かどうかだって? そんなの今はわかりゃしないよ。下のやつらが雷に驚いて、自分が一番えらくて強いだなんて思わないように、その鼻が伸びる前にへし折ってるんだから。だから、おいらの雷がなくても、謙虚でつつましく暮らすものばかりになったそのときに初めて、ようやく満足いったかどうか決まるんだと思うよ」
モックじいさんと彼を乗せた雲は、また鳥かなにかを見つけて雲の居場所をたずねてみようかと相談していましたが、どうやらその必要はなさそうでした。なぜなら、東の空が近づくにつれ、もくもくとした真っ黒な雲が目の前に現れたからです。
雲は時々ゴロゴロという唸り声をあげては、大事そうに抱えたピカピカした雷を、それとばかりに地上に落としていました。その度に、大地は揺れ、耳をつんざくような音が鳴り響きます。
モックじいさんたちはおっかなびっくりと、雲に近づいて聞きました。
「どうした、どうした。なにをそんなに怒っとる」
雲は少しのあいだ手をやすめることにしたようで、ゴロゴロ言いながらモックじいさんの質問に答えました。
「どうしたもこうしたもあるかい。おいら今こうやって、地上のやつらを震えあがらせてんのさ」
それを聞いたモックじいさんは、なげかわしいとばかりに首を振りました。
「そんなひどいことはもうおやめ。地上のものがおまえになにをしたというんだ」
すると雲はあきれたように言いました。
「なにをしたかだって? なにかしでかさないように、こうやっておいらが脅かすんじゃないか」
「脅かすなんて、いったいなぜ?」
「傲ったり、見下したりさせないためさ」
モックじいさんはさっきと同じことを聞きました。
「おれはおまえの言うことがさっぱりわからん。どうしてそんなことをするんだ」
雲はどこかで聞いたようなことを言いました。
「そんなの、おいらもよくわかんないよ。でも、とっても大切なことだと思うから、ここぞというときに、えいやと雷を投げつけるのさ」
「なにもあんなに脅かさなくてもいいんじゃないか? ほどほどというわけにはいかんのか」
「そりゃ、しょっちゅうゴロゴロドンドンしやしないよ。でも、やるときゃやらなきゃ意味がないよ」
「そんなものか」
「そんなものだよ」
やっぱり雲の言うことは今ひとつよくわかりませんでしたが、怒ってばかりでもないようなので、ひとまず安心しました。そしてここでも、最後にひとつだけ聞いてみることにしました。
「じゃあ、おまえはそれで満足なんだな?」
「満足かどうかだって? そんなの今はわかりゃしないよ。下のやつらが雷に驚いて、自分が一番えらくて強いだなんて思わないように、その鼻が伸びる前にへし折ってるんだから。だから、おいらの雷がなくても、謙虚でつつましく暮らすものばかりになったそのときに初めて、ようやく満足いったかどうか決まるんだと思うよ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
あいつは悪魔王子!~悪魔王子召喚!?追いかけ鬼をやっつけろ!~
とらんぽりんまる
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞、奨励賞受賞】ありがとうございました!
主人公の光は、小学校五年生の女の子。
光は魔術や不思議な事が大好きで友達と魔術クラブを作って活動していたが、ある日メンバーの三人がクラブをやめると言い出した。
その日はちょうど、召喚魔法をするのに一番の日だったのに!
一人で裏山に登り、光は召喚魔法を発動!
でも、なんにも出て来ない……その時、子ども達の間で噂になってる『追いかけ鬼』に襲われた!
それを助けてくれたのは、まさかの悪魔王子!?
人間界へ遊びに来たという悪魔王子は、人間のフリをして光の家から小学校へ!?
追いかけ鬼に命を狙われた光はどうなる!?
※稚拙ながら挿絵あり〼
表と裏と狭間の世界
雫流 漣。
児童書・童話
夢を無くした
ファンタジー小説家の卵と
やぶ睨みの不気味な老人。
得体の知れぬ監視人たち。
現実と幻想…
日常に潜む異質。
親友リックの
不自然な事故をきっかけに
次第に未知の世界へと
引きずり込まれてゆく
孤高の青年、カイ。
全ては、小さな田舎町での
運命の出会いから始まる。
蔦に覆われた古い骨董品店、
その重く軋んだ
樫の木の扉を押し開け
いざゆかん
表と裏と狭間の世界へ。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
地底少女は虫笛を吹く
秋長 豊
児童書・童話
巨大昆虫と人間が共存する地底国家「親虫王国」。昆虫師と呼ばれる者たちは、凶暴な昆虫から市民を守るために日々戦っていた。普通科の学校に通う10歳の近江結(おうみゆい)は、極度の虫嫌いで臆病な女の子。そのせいでいじめを受けるも、親友の友子がいるおかげで学校に通うことができた。
ある日、修学旅行で昆虫師協会の見学に訪れた結は、研究所で飼われている飛べない白いガと出合う。「ボクと友達になってよ」その言葉は、結にしか聞こえない”声”だった……
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
もう一つの小学校
ゆきもと けい
児童書・童話
パラレルワールドという世界をご存じだろうか・・・
異世界や過去や未来とは違う現在のもう一つの世界・・・
これはパラレルワールドで、もう一つの別世界の同じ小学校へ行った先生と生徒たちの物語です。
同じ時間が流れているのに、自分たちが通っている小学校とは全く違う世界・・・
ここの自分たちが全く違うことに戸惑いながらも、現実としてそれを受け入れる生徒たち・・・
そして、元の世界に戻ってきた生徒たちが感じた事とは・・・
読んで頂けてら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる