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悶絶米国1945  アンクルの事本気で怒らせちゃったねぇ!

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 此処まで見ていて、些か、、、かなーり、悪の黒幕である大日本腐敗帝国のチグハグで行き当たりバッタリの行動に疑問を覚えた方々も多いだろう。



 決着を付ける積りであるならば、方は直ぐに付くのに、悪戯に事を長引かせ、猫がネズミをいたぶる様に、世界最強の国家を只管に弄び笑っているのだから。



 これまでのやりようは、もう完全に遊んでいるとしか思えない。人の心がない。慈悲とかモットない。



 答えは簡単である。



 真実、楽しんで遊んでいるのだ。真剣に、誠実に、本気で、合衆国を小突いて小突いて小突き回して掌でコロコロしている。



 理由はちゃんとある。世界より生者による組織的な抵抗が潰えた時、新大陸は大きな大きな放牧地になるのだ。



 もっと正確に言えば自然保護区と言う意味合いが近いかもしれない。自然のままの生者たちが荒野に追いやられ、偶にハンティングに来る死者たちに追い回され、必死に生にしがみ付きながら、在りし日の栄光を取り戻そうと元気に走り回る世界を大日本帝国と永山は構想している。



 そんな保護動物たちには、何時までも反抗心を持ってもらい、大規模反乱を数十年に一回は起こしてもらう事が期待されている。死者の統べる新しい世界には、挫けぬ魂の持ち主は黄金や宝石より輝かしく価値ある資源なのだ。



 事が全て終われば世界は死者の物になる事は決定している。それはどんな世界かと言えば、一言で言えば修羅の世である。



 最早死ぬこと無い存在たちが、生前に倍する剥き出しの権力欲と支配欲で己の領地拡大に邁進し、飽きることなく戦い続ける。彼らの圧制の元、生者は貴重な資源として飼育され、終わらぬ戦いに怯えながら人生を送り、その終わりに支配者の先兵となる。



 永遠の闘争状態。終わらない宴。だが安心して欲しい、其処には核はないし、戦略爆撃もない、古式ゆかしくルールを持って王たちは闘争を行うのだ。



 生者は資源であり財産でありトロフィーだ。



 この様な世界で、飼育下では滅多に手に入らない天然物を養う地、それが新大陸である。



 その様な大地に生きる事になる子孫たちの為に、先祖になるであろう合衆国国民や新大陸の住民たちには希望を持って地獄に落ちて貰いたい。 



 「あと一歩及ばなかった!」「あの新兵器が投入されていれば!」「政治的な決断がもっと早く!」「諦められない!何時の日かきっと!」



 儚い希望、敵わぬ思い、先祖に申し訳が、神はまだ我々を見放していない。そんな感じの所を何時までも何時までもずーっと抱えて生きて欲しい。腕白で健康に伸び伸びと育って行って欲しい。



 「牛肉はマッサージとビールで育てた霜降りも美味しいですが、広い大地で牧草だけで育った赤身も美味しいのです!皆さまもご承知でしょう?酒と葉巻の風味が利いた宰相閣下の味と、戦火に鍛えられた砂漠のキツネさんや、ストレス塗れでウォッカ漬けになっていた赤軍元帥殿では大きな違いがあった筈です。凡夫であったとしてもそこは変わりません。飼育には飼育の天然ものには天然物の良さがあります」



 「「うーむ、深いもんだなぁ味の探究と言う奴は、、」」「ワインでは予も一家言あるがこの分野は未開拓だ、ドクターの言に従おう」「食えれば良いと言う物ではないか、、、」「ローマの叔父貴連中、死んどる癖に品質に五月蠅いさかいなぁ、、やれ肥育の方法がどうだとか、生け簀の配置がどうだとか。美味いもんでも食わせて黙って貰わんとやり難くて仕方ないわ、儂は反対せんで」「国民は兎も角、総統閣下には安心して提供できる物だけをお出ししたい物です。ねぇ総統、、、うん?ハイドリヒ君!オムツの変えを持って来たまえ!」



 美食家たちは永山の説明に大いに頷き、新大陸の分割と戦後の経営に手心を加える事に同意したのだ。各自持ち寄った案では、狐狩りと鷹狩とサファリハンティングを毎月行う事になっていたので、そのまま通ったら野生種の人類は五年で北米から絶滅していただろう。



 危ない所であった。



 上記の様な事情で、新大陸は早晩にひき肉機に掛けられる運命を免れた訳である。一気に崩しては面白味もないし、今後無気力な家畜を産むだけとの手前勝手な理由でだ。



 ハッキリと言って舐めている。



 涎でベトベトになる位舐めている。トムおじさんは大型犬の毛づくろいを受けた猫の様にシンナリしている。



 大日本狂犬帝国は、江戸の開国から幾星霜、自分達を振り回すだけ振り回して来た列強諸国、その筆頭になっている国家を舐め回せる事に夢中なっていた。



 だからこそ思わぬ所で予定が崩れてしまったのだ。





 1945年の始まりは通夜同然の暗いムードで始まった。新大陸では。



 ユーラシアでは違う。そこかしこで生者が死者を相手に必死の抵抗を続けており、時に死者の側に付いた生者たちが今までの支配者に昔年の恨みをぶつけているのだ。



 もう乱痴気騒ぎである。それでも、いち早く死者の支配に屈した地域は生き残った事に感謝しながら、明日の命がある事を祈って新年を祝っている。



 そんな中で一番能天気なのは、大日本ハッピーセット帝国の一般住民たちである事は明らかだ。彼らの手に出来る情報では、欧州には平和維持軍として皇軍が進駐し、混乱の坩堝であった英国ではチャーチル卿亡き後に国王親政による新政権が経った事になっているのだ。



 「「今次大戦は皇国の活躍により集結した。合衆国がやった事は余計な手間を掛けただけで、彼らが横やりを入れずに皇国に頭を下げて協力を仰げば事は簡単に済んだのだ」」



 「世界をリードする日本!世界の盟主たる大日本帝国!万歳!万歳!」



 これが素直な感想である。だからこそ、欧州反抗と言う大博打に大失敗した癖に一向に頭を下げてこない上、敵対的な合衆国に日本国民はイラついている。



 そのイラつきは余裕のなせる業だ。情報統制の中にある帝国臣民達であるが、帝国が空前の好景気を生み出し、世界の必需品となった奇跡の薬の独占販売権を握っている事くらいは知っている。



 海の向こうの合衆国が際限なくがぶ飲みし、国家として完全に薬物中毒に陥っている事も連日報道されていたからだ。



 合衆国ばかりではない。新大陸の住民はその殆どが薬の魔力にやられているのだ。優先権を持つ合衆国がその殆どを買い占めているせいで、微々たる量しか手に入らないとしても、先を争って自分たちの製品を求めている。



 この状況で「頭を下げないと売らん!」と言われれば、如何な合衆国とは言え、総すかんを食らい、「日本さんゆるしてぇ!」と泣きを入れてくる筈なのだ。そうでなけれ可笑しい。



 まして世界情勢は我が方優勢、戦火で疲弊しているとは言っても、欧州さえ帝国連合加盟に前向き、これで皇国に盾突いて、益の在る筈もない。



 天に届こうかという程の慢心であるが、帝国臣民は輝かしい未来と大日本の栄光を能天気に信じている。政府は弱腰に過ぎる!もっと揺さぶれ!位は思っているし、口にも出している。



 臣民の皆さんはこの様にお考えだが、上層部はどうであろうか?何も知らない臣民が利いたら飛び上がりそうな、新大陸征服計画を画策する悪鬼の群れは何を考えているのだろうか?



 

 

 「不味いですね、、、どうしましょ、、、」

 

 「不味いじゃすまんよ永山君、、どうするんだねこれ」



 何と汗をかいていた。連日、お祭り騒ぎをして、ああでもないこうでもないと合衆国を挑発していたお歴々は「「やべぇよ、やべぇよ、どうすんべ」と頭を抱えていたのだ。



 なぜか?



 一向に仕掛けてこないのだトムおじさんが。あれだけ挑発し「さあ来い!」と待っているのに、幾ら「かもーん!べぃべぇ」と言っているのに、太平洋艦隊を殴り込ませて来るでも無く、台湾に空襲掛けても来ず、幾ら新聞を読んでも「国籍不明の潜水艦による雷撃!」当たりの一面記事は載っていない。



 じゃあテメェで仕掛けろよ!とお思いであろうが、それでは駄目なのだ。永山は帝国を支配するにあたり、とある約束を国家の重鎮たちとしている。



 「良いですよ!ドーンと任せなさい!」とした安請け合いが、大幅な予定変更を余儀なくしている。



 その約束とは「帝国の完全なる勝利」である。完全とは何か?「軍事的」「経済的」な勝利は勿論、「道徳的」な勝利も大いに期待されている。

 

 つまり大日本ビックジャスティス帝国は、仕掛けられた戦争に果敢に立ち向かい、悪辣で金権主義で帝国主義的な敵からの解放者であると言う夢を、無知蒙昧な臣民に見せて欲しいと言う事である。



 そう夢だ。正義の帝国、アジアの曙、圧制からの解放者、五族協和で皆幸せ、人類皆、天皇陛下と日本人の元に平等となるという痴人の妄想。



 満鉄印のアヘンを致死量吸引しても、とても見られそうにない夢を臣民にプレゼントしたい、、しろ!でないと協力しない!我らは人間止めたが臣民全部を地獄行き列車に乗せるのは如何かと思う!せめて夢見るままに生涯を送って欲しい!死んだ後は知らん!死んだら同胞だから遠慮無用!苔の生す迄帝国の礎になるんだ!我らと一緒に!



 魔界転生を経ても残った人間性に発露であろうか、偉い人々は永山にその様な要求を出している。後半で化け物要素が駄々洩れだが。



 だからこそ仕掛けて来て貰わないと大変に困る。迎撃計画も立ててしまった。皆殺るきだったのだ。



 海軍一同は「「やっとこさ海に出られる!もう地平線ばかり見るの飽きた!戦艦は戦艦と戦ってこそ!これ以上陸にいたら干物になる!新造艦なんぞ一度も塩水に漬かってない!何処にそんな海軍あるんだ!」



 とひじょーに五月蠅い。陸軍も陸軍で、カネの茶碗と竹の箸をチンチキしながら「「小官らは確かに仏様になっとります!でもねぇ大半は食いもするし飲みもするの!戦が無くなって永山君の代用食ばかり!いい加減に新鮮なとこを寄越せ!われわれ~は~たいぐ~のかいぜんを~よ~きゅ~する!い~けにえ~のど~くせんを~ゆるすな~!せんそ~させろ~!はらが~へったぞ~」」

 

 等とソ連人の食い過ぎであろうか危ない事を言う兵までいる。矢鱈目ったらとレッサーなデーモン共を増やし過ぎた弊害であろう。



 そうは言われても来ない者は来ないのだ。だからと言って仕掛けるのは今までの努力が無になってしまう。これまで帝国は治安の維持だとか、同盟国の要請だとか、已むに已まれず頼まれて王道を持って世界に貢献してきたのだ(そう思っているのは日本人だけだが)それを今更特に理由もなく戦争始めたくはない。お為ごかしとは言え臣民は夢の中にいるのだ。



 だがそうも言っていられない状況になりつつある。それが先に永山が言っていた困った事態である。



 

 

 米国は激怒した。必ず邪知暴虐な帝国を除かねばならないと決意した。米国に国外事情はどーもよく分からぬ、米国はモンローな国家であった。経済的な繁栄を謳歌し、南米を棍棒でシバキ倒して暮らしてきた。



 シバキ回す側だったので、シバかれる痛みには敏感である。さあこれから世界に雄飛し、栄光のロードに向かおうしていて居たのに旧大陸から叩きだされ、頓智気な悪夢に国民全員が襲われる等あってはならない事なのだ。



 こんな屈辱はロクデナシの親父にホワイトハウスを焼かれて以来だ。頭から湯気が出る。出来る事なら日本製のあの薬をボストン湾に投げ入れたいが、禁輸されているから我慢している。



 そして我慢して我慢して直ぐにでも宣戦布告してやりたい気持ちを抑え、叫ぶ国民を宥め空かしていると、傍と気づいたのだ。



 だれもが頭の隅には確かにあったが信じられない、信じたくはなかった可能性である。



 「「あいつ等、遊んでいるのだ!我々で!世界で!」」



 そうだろう?誰が、何処の誰が数百万、数千万、数十億の人々と彼らの構成する国民国家群を相手に詰まらない上に笑えもしない露悪的な遊戯をするのだ?



 けれどそう考えると全て合点がいくのだ。大使含め日本側代表の舐め腐った態度、1936年から向こう常識外れで理解不能な出来事の連続、何よりもあのふざけた悪夢!



 



 「本気で言ってるのかね?」



 憔悴激しい大統領は新設されたシンクタンクの報告に地の底から響く様な声音で尋ねた。回りにいる閣僚たちも半信半疑と言った風だ。



 半信と言う所がミソである。いい加減、誰もが思っていた事なのだから。



 「間違いありません閣下。あの悪夢、、いえプロパガンダ放送と言った方が正しいでしょう。あれには法則性もあれば、穴もあります。報告書をお読み下さい。言語学者も動員して分析しましたが、確かにそこに書いてある言葉が放送中に漏れ聞こえているのです、、微かでは有りますが確かに」



 その言葉に報告書に目を落とす大統領。其処にあったのは、馬鹿馬鹿しくやる気のなくなり、その代わりに怒りが湧いて来る事夥しい文言だった。

 

 曰く「何時までやるんだ」「いい加減ネタ切れ」「早くしろよアメちゃん」「陛下、飽きて来たとお言いでしたよ」「次の撮影何時?」「飯まだ?」等等、悪夢に魘される合衆国国民を舐め腐った言葉の羅列である。



 「なんだねこれは」

 

 「書いてある通りです。ハッキリ言いまして知能指数を疑いたい程馬鹿げた発言の数々です。ですが完全にこちらに油断しているんでしょう。遊び半分でやってますから、かなり重要な事も漏らしています。本当にふざけた連中です。しかし日本人にこれほどユーモアがあるとは知りませんでした」



 その言葉に、しばし会議の場に気まずい空気が流れた。次いで噴出する様に出席者たちの聞くに堪えない罵声が飛び出す。



 「それで、、これらの事から何が分かったんだね?ただ遊ばれているだけでは話にならんぞ」



 一しきり出席者たちの(大統領も含む)罵声が収まった後、気を取り直した大統領は当然の質問をした。



 「確かにそうです。ですが出て来る単語には重要な意味があるのです。我々はそれを学ぶ必要があると思われます」



 「学ぶ?この馬鹿げた報告書の何処に学ぶ所があるんだね?我々が子供の悪ふざけに付き合わされていると言う事以外にだ」



 「ええ子供の悪ふざけです。正確を期すならば質の悪い三文小説パルプフィクションでしょうな。持って来てくれ!」



 報告者はそう言うと待機していた部下に指示をだした。彼らは抱えていたトランクから安っぽい本を出してはドサドサと積み上げる。



 「大統領閣下。敵はこの中にいます」



 報告者。運命の流転により海軍技術士官から鞍替えを余儀なくされた男、アイザック・アシモフ特務少佐は本の山から一つを手に取り大統領に広げて見せた。



 思わずそれを見る大統領。本に描かれていたイラスト、頭足類と人間を合わせた様な不気味な絵、大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトはその瞳が自分を見つめている気がしてかぶりを振った。 
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