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皇道派?美味かったよ。
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1936年に起こった226事件をご存じだろうか?
そうだ。あの事件だ。決起部隊が帝都各所を襲い、多数の行方不明者をだした上、最後は御上、直々に征伐されたあの事件だ。
戦前最大のミステリーと呼ばれたこの事件であるが、特に不可思議な事は、如何に襲撃を受けた人物たちが、襲撃者を「撃退」したかであった。
間の抜けた事であるが、襲撃者たちは、部隊単位で襲い掛かりながら壊乱しているのだ。
現代に置いては、襲撃を受けた「本人」たちの証言により、事件の顛末は分かっているが、戦前に置いて一時は天下の一大ミステリーと小説の題材にもなった程である。
何があったのか?では見てみよう。
「貧弱だね君?それで私を殺せると思ったのかね?」
肩、左脚付根、左胸、脇腹と四発の三八年式実包を受けた鈴木貫太郎は、風にでも吹かれたと言いたげに、うそぶいた。
確かに命中した筈だ、血だってでている。それでも起き上がってきたのだ。
訳が分からない、この老人は不死身なのか?
いや外れただけだ。痩せた爺くらい直ぐに!下士官は、もう一度兵に発砲を命令しようし、、
鈴木侍従長はその場から掻き消えた。
「は?」「どこに?」「い、いません」
襲撃者たちが混乱する中、指揮官であった安藤輝三の、魂消るような悲鳴が上がる。
銃撃を指揮していた下士官が急いで振り返れば、そこにいたのは、鈴木侍従長に組みつかれ、喉元に食い込んだ乱杭歯で、ゾブリ、ゾブリと血を吸い上げられる安藤の姿であった。
「あ?」
だれもが何も言えない。理解できない。そうだろう枯れかかった老人が人を食い殺している。
ボン!恐怖に駆られた兵士が発砲したのを合図に、下士官が止めるのも聞かず、小銃弾は鈴木に襲い掛かり、、全て安藤に命中した。
一同が驚愕し、発砲が止むと下士官の姿が無い。
そしてボタリと大きな血が天井から降ってきた。顔を上げ、そして兵士たちは見る事になる。
先ほどまで生きていた筈の下士官は舌をダランと出して、天井に片手でぶら下がっている鈴木に喉元から咥えられているのだ。
ズゾゾ。そんな音が聞こえそうな勢いで下士官は萎んでいく。体中の血を生命を吸い上げられた、そうとしか言えない。
そして、ぺっ、と下士官を口から離した鈴木はこう言った。
「たかさん、ご相伴に預かっててはどうだい?若いのを頂く機会なんか、先ず無いんだ。輸血ばかりではお前も大変だろ」
?である。若いの?ご相伴??????
兵士たちは一瞬考え、そして鈴木に発砲した。だが遅い。
「そうですねぇ、あなた。あら美味し」
部屋の隅で兵士に押さえ込まれていた筈の、鈴木侍従長の妻である、たか夫人は、自分を抑え込んでいた兵士をその乱杭歯で味わっていた。
化け物が二人に増えた!もう何も言ってはいられない。撃つ者、逃げる者、侍従長官邸は修羅の巷となる。
「おいおい、どこまで逃げるのかね?年寄りをあまり運動させんでくれ」
まだ暗い、午前五時半の帝都を必死に駆ける者と、散歩でもするように追いかける者がいる。
追うものの名は高橋是清、追われる者の名は中橋基明と言った。
なんでこうなった?恥も外聞も投げ捨て、士官の魂である軍刀すら打ち捨てて自分は逃げている。
「こんな筈じゃなかった!」
止せば良いのに声がでる。だが叫ばずには入れれない。
たった数十分前なのだ。
高橋邸に突入した我らは、首尾よく奸賊を打ち取った筈なのだ。
「それが、それが、、、」
高橋邸を出発し、次の目的地に向かおうとした時、相方の中島が消えた。
つい今しがた目の前にいたのだ。それが一瞬で消えた。
「怖気づいて逃げたか!」
首相経験者を殺すと言う、大胆不敵な事をやったのだ、ここにきて臆病風に吹かれたか?
探したい、探して怒鳴りつけてやりたいが、今は時間が惜しい。動揺する兵を纏め、自分は道を急いだ。
だが出発して数分後、自分たちは街中で円陣を組み全集防御をする事になってしまっていた。馬鹿げている。なんで街中でこんな事を!
だがしない訳にはいかない。なぜなら兵が次々と襲われているのだ!
黒い塊としか見えない何かが、四方八方から隊列に襲い掛かり、悲鳴を上げる兵を掴んで何処かに消えていく。そして悲鳴が聞こえるのだ。
一人、二人、三人、悲鳴が次々と辺りから木霊する。兵の動揺は凄まじく、逃げ出す者も出だした。
自分たちは近くの空き地に陣取り、迫る謎の敵と対峙する事になってしまった。
そしてあいつが現れた。殺した筈の高橋大臣!そしてその手に持っていたのは!恐怖に歪む中島の首じゃないか!
俺は迷わず発砲を指示した。だが当たらない!
なんだ!なんなんだよ!なにがあったんだ!
吹き飛ぶ兵たち、高橋の手の一閃で首が落ち、あいつは兵を、、兵を、、食い殺しやがった!
だから逃げたって仕方ないんだ!あんな化け物と戦えるか!
「そうだな、儂でもにげるよ。でもなぁ、こんなか弱い老人を寄って集って殺そうとしたんだ。逃がす訳にはいかんのだよなぁ」
直ぐ後ろから声がする!あいつだ!高橋大臣、、いや高橋の皮を被っている化け物!
「化け者とは酷い!儂は高橋本人だよ。まあ、すこーし若返った気もするが」
何を呑気に言ってやがる!来るな!来るな!
「ん、もう日の出か?もう少し遊びたいんだが、、仕方ない。君、幸運だったな。命拾いしたんだ、大人しく出頭したまえよ」
え?へたり込んだ俺が辺りを見渡すと高橋は消えていた、、、止めだ!決起なんて出来るか!俺は抜ける!だれが付き合ってられるか!
226事件は概ねこの様にお粗末な結果となり終結した。
最終的に首相官邸に立てこもった(追い詰められた)部隊は、大量の降伏者を出し、近衛師団と御上の手により殲滅された
御上は怒りのあまり、決起部隊首謀者の首をねじり切り、最後まで降伏しなかった馬鹿たちは近衛師団の血の晩餐へと饗された。
余談ではあるが、現代においての皇居、裏の世界ではデーモンパレスと囁かれる魔宮は、絶対に侵入不可能な場所と言われている。人食い化け狸うろつく迷いの森、音もなく襲い掛かる不死の女官、なによりも近衛連隊と言う名の吸血鬼部隊が、侵入者を決して生きて出さないからと言うのがその理由だ。
そうだ。あの事件だ。決起部隊が帝都各所を襲い、多数の行方不明者をだした上、最後は御上、直々に征伐されたあの事件だ。
戦前最大のミステリーと呼ばれたこの事件であるが、特に不可思議な事は、如何に襲撃を受けた人物たちが、襲撃者を「撃退」したかであった。
間の抜けた事であるが、襲撃者たちは、部隊単位で襲い掛かりながら壊乱しているのだ。
現代に置いては、襲撃を受けた「本人」たちの証言により、事件の顛末は分かっているが、戦前に置いて一時は天下の一大ミステリーと小説の題材にもなった程である。
何があったのか?では見てみよう。
「貧弱だね君?それで私を殺せると思ったのかね?」
肩、左脚付根、左胸、脇腹と四発の三八年式実包を受けた鈴木貫太郎は、風にでも吹かれたと言いたげに、うそぶいた。
確かに命中した筈だ、血だってでている。それでも起き上がってきたのだ。
訳が分からない、この老人は不死身なのか?
いや外れただけだ。痩せた爺くらい直ぐに!下士官は、もう一度兵に発砲を命令しようし、、
鈴木侍従長はその場から掻き消えた。
「は?」「どこに?」「い、いません」
襲撃者たちが混乱する中、指揮官であった安藤輝三の、魂消るような悲鳴が上がる。
銃撃を指揮していた下士官が急いで振り返れば、そこにいたのは、鈴木侍従長に組みつかれ、喉元に食い込んだ乱杭歯で、ゾブリ、ゾブリと血を吸い上げられる安藤の姿であった。
「あ?」
だれもが何も言えない。理解できない。そうだろう枯れかかった老人が人を食い殺している。
ボン!恐怖に駆られた兵士が発砲したのを合図に、下士官が止めるのも聞かず、小銃弾は鈴木に襲い掛かり、、全て安藤に命中した。
一同が驚愕し、発砲が止むと下士官の姿が無い。
そしてボタリと大きな血が天井から降ってきた。顔を上げ、そして兵士たちは見る事になる。
先ほどまで生きていた筈の下士官は舌をダランと出して、天井に片手でぶら下がっている鈴木に喉元から咥えられているのだ。
ズゾゾ。そんな音が聞こえそうな勢いで下士官は萎んでいく。体中の血を生命を吸い上げられた、そうとしか言えない。
そして、ぺっ、と下士官を口から離した鈴木はこう言った。
「たかさん、ご相伴に預かっててはどうだい?若いのを頂く機会なんか、先ず無いんだ。輸血ばかりではお前も大変だろ」
?である。若いの?ご相伴??????
兵士たちは一瞬考え、そして鈴木に発砲した。だが遅い。
「そうですねぇ、あなた。あら美味し」
部屋の隅で兵士に押さえ込まれていた筈の、鈴木侍従長の妻である、たか夫人は、自分を抑え込んでいた兵士をその乱杭歯で味わっていた。
化け物が二人に増えた!もう何も言ってはいられない。撃つ者、逃げる者、侍従長官邸は修羅の巷となる。
「おいおい、どこまで逃げるのかね?年寄りをあまり運動させんでくれ」
まだ暗い、午前五時半の帝都を必死に駆ける者と、散歩でもするように追いかける者がいる。
追うものの名は高橋是清、追われる者の名は中橋基明と言った。
なんでこうなった?恥も外聞も投げ捨て、士官の魂である軍刀すら打ち捨てて自分は逃げている。
「こんな筈じゃなかった!」
止せば良いのに声がでる。だが叫ばずには入れれない。
たった数十分前なのだ。
高橋邸に突入した我らは、首尾よく奸賊を打ち取った筈なのだ。
「それが、それが、、、」
高橋邸を出発し、次の目的地に向かおうとした時、相方の中島が消えた。
つい今しがた目の前にいたのだ。それが一瞬で消えた。
「怖気づいて逃げたか!」
首相経験者を殺すと言う、大胆不敵な事をやったのだ、ここにきて臆病風に吹かれたか?
探したい、探して怒鳴りつけてやりたいが、今は時間が惜しい。動揺する兵を纏め、自分は道を急いだ。
だが出発して数分後、自分たちは街中で円陣を組み全集防御をする事になってしまっていた。馬鹿げている。なんで街中でこんな事を!
だがしない訳にはいかない。なぜなら兵が次々と襲われているのだ!
黒い塊としか見えない何かが、四方八方から隊列に襲い掛かり、悲鳴を上げる兵を掴んで何処かに消えていく。そして悲鳴が聞こえるのだ。
一人、二人、三人、悲鳴が次々と辺りから木霊する。兵の動揺は凄まじく、逃げ出す者も出だした。
自分たちは近くの空き地に陣取り、迫る謎の敵と対峙する事になってしまった。
そしてあいつが現れた。殺した筈の高橋大臣!そしてその手に持っていたのは!恐怖に歪む中島の首じゃないか!
俺は迷わず発砲を指示した。だが当たらない!
なんだ!なんなんだよ!なにがあったんだ!
吹き飛ぶ兵たち、高橋の手の一閃で首が落ち、あいつは兵を、、兵を、、食い殺しやがった!
だから逃げたって仕方ないんだ!あんな化け物と戦えるか!
「そうだな、儂でもにげるよ。でもなぁ、こんなか弱い老人を寄って集って殺そうとしたんだ。逃がす訳にはいかんのだよなぁ」
直ぐ後ろから声がする!あいつだ!高橋大臣、、いや高橋の皮を被っている化け物!
「化け者とは酷い!儂は高橋本人だよ。まあ、すこーし若返った気もするが」
何を呑気に言ってやがる!来るな!来るな!
「ん、もう日の出か?もう少し遊びたいんだが、、仕方ない。君、幸運だったな。命拾いしたんだ、大人しく出頭したまえよ」
え?へたり込んだ俺が辺りを見渡すと高橋は消えていた、、、止めだ!決起なんて出来るか!俺は抜ける!だれが付き合ってられるか!
226事件は概ねこの様にお粗末な結果となり終結した。
最終的に首相官邸に立てこもった(追い詰められた)部隊は、大量の降伏者を出し、近衛師団と御上の手により殲滅された
御上は怒りのあまり、決起部隊首謀者の首をねじり切り、最後まで降伏しなかった馬鹿たちは近衛師団の血の晩餐へと饗された。
余談ではあるが、現代においての皇居、裏の世界ではデーモンパレスと囁かれる魔宮は、絶対に侵入不可能な場所と言われている。人食い化け狸うろつく迷いの森、音もなく襲い掛かる不死の女官、なによりも近衛連隊と言う名の吸血鬼部隊が、侵入者を決して生きて出さないからと言うのがその理由だ。
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