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ブラック労働は神でも怒る

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 「これで、戦争も終わりだ。流石のジャップもこれで諦めるだろう」





 世界初の大都市に対する核攻撃にして、未曽有の大虐殺を終えた男は、心に残る重いしこりを吐き出す様に、独り言ちた。自分だって、こんな事を好き好んでやりたい訳ではない。だがこれは任務だ。





 そうだ。この攻撃は、工業は破壊され、流通は麻痺し、都市と言う都市は爆撃を受けているにも関わらず、大人しく両手を上げない大日本帝国と言う国家に、抗戦を諦めさせるのに必要な事なのだ。





 己に言い聞かせる様に心の中で思った男は、任務成功の喜びに沸くクルーに対して、冷静にサイパンへの帰還を指示しようとした。





 その時である。





 「おどりゃー!何しよるんじゃ!」





 男。B29エノラゲイ機長、ポール・ティベッツは己には分からぬ、日本語での怒鳴り声と共に繰り出された下駄の一撃を頭に受け、目に火花を散らした。





 突然の事に、訳の分からぬ彼が機長席から機内を振り返る。そこに居たのはジュニアスクールの生徒程度の子供が両手に下駄を掴み、自分に次なる一撃を繰り出そうとしている所だ。痛い!





 「なんだ貴様!」





 余りの事にそんな言葉しか出てこない。気づけけば機内は、手に手にすりこ木だの竹やりだのを持った人間でギュウギュウ詰めになっているではないか!





 「こいつらじゃ!シゴウあげたれ!」





 「何をする!止めろ!落ちる!誰か!」





 非常用拳銃を抜く暇も無い。手に手に雑多な武器を持った暴徒の群れはエノラゲイ乗員に襲い掛かり袋叩きにしていくではないか。ここは遥か空の上だぞ!そんな事したら!





 「機長!助けて!」「止めろ!操縦が!落ちる!」





 当然の事であるが、上空数千メートルで謎の暴徒の集団に襲われたエノラゲイはキリモミしながら地面に落ちていく。何だ!何が起った!暴徒?集団?空の上で?そも、なんで急に現れたの?







 可哀そうなエノラゲイと乗員、怒れる暴徒事、カープ命の広島人が仲良く地上に落ちたので説明しよう。なに?人が死んだんだぞ?その軽い態度はなんだ?





 落下地点を見て良ーく見て欲しい。





 「きちょーう、、、生きてますか~?」





 「生きてるよぉ~」「何で死んでないんすかね~?」





 「俺がしるかー」







 地に叩きつけられたB29の中から這い出してくる乗員が見えましたか?あっ!暴徒も出て来た!追いかけまわされてるね。





 





 さて今度こそ説明しよう。ラクダの背骨を折るのは 最後に乗せた藁一本と言う言葉がある。この日、エノラゲイが広島に投下した原爆はその最後の藁だった。





 如何いう事か?こういう事だ。







 





 ここでは無い何処か、遥か高次元





 「ボス!サタナエルから電話です!向こうは凄い騒ぎで、地獄の君主連中が、これ以上仕事を増やすなら、反乱も辞さないとルシファーに詰め寄ってるとか!」





 「ボス~!こっちもです!閻魔大王、泰山夫君、ヤマ神も過労で倒れたそうですぅ」





 「オーディン神が、ヴァルハラに、これ以上勇士はいらないと、門を閉めたそうです!ヘルヘイムも、もうめい一杯詰め込んでしまって、亡者が溢れてるとヘル神からクレームが、、、、」





 「カロンの船が過積載で沈みましたぁ~。だから、今時木製の船は止めろと言ったのに聞かないから、、、」





 「心臓の食べ過ぎで、アメミットが腹を壊して寝込んでます!トート神とアヌビス神がカンカンに怒って、怒鳴り込んできてます。どうしましょう?ねえボスってば~」





 「天国の門でユダヤ人とドイツ人とフランス人が喧嘩してますよ!誰か!サムソン呼んできて!」





 「テスカトリポカ神が、これ以上生贄が増えると、世界中が白夜になると言ってます!どうしましょう?」 





         「ボス!」「ボス!」「ボス!」「ボス!」「ボス!」





 「五月蠅い!どうもこうもあるか!静かにしろ!」





 此処は天界。人間の目から見れば眩い光の集合にしか見えない、高次元の存在達は、ひっきりなしに来る、クレームと仕事の波に押し流されそうになっている。ボス、ボスと呼びかけられ遂に切れたのは、その中でもひと際大きな、この空間そのものと言える程大きな光だ。





 「ねぇ、父さん。矢張り、五日で世界を作ったのは失敗だったんじゃないかなぁ」





 「だがなぁ、今回は私が急に世界を作る事になったんだ。文句を言ってくる連中、あいつ等が自分の世界に、掛かり切りで、ちっとも新しい世界を作ろうとしなものだから、我らがやる事になったんだぞ。手だって抜きたくなる」





 「それでもねぇ。システム破城がこのまま続けば、他の世界にも影響がでるよ?」





 「だよなぁ。我ら全知だから、その後の事も分かるの、後かたずけに十万年はかかる。嫌だなぁ残業、シナイ山に帰ろうかな?久しぶりに軍神の仕事でもして、相撲見物でも、、、」





 「父さん?明けの明星が泣いてるの聞こえないの?彼、ここ七億年は家に帰れてないみたいだよ?手伝うから何とかしよ?私もバカンス中なのに切り上げて友達と戻ってきたんだから」





 「仕方ない。本腰をあげてやるか。問題はなんだっけ?」





 切れ散らかし、空間に波動の嵐を巻き起こしていた大きな光は、その横にいる小さな光に説得され、渋々、いい加減に作った世界の修正に乗り出す事にした。その存在が虚空に向け、現在の問題を問うと、波動の嵐に巻き込まれ、数百光年先まで吹き飛ばされていた光たちが報告を始める。





 「キャパシティオーバーですね。この世界、ボスがいい加減にお作りになった物ですから、地獄も天国も狭いのですよ」





 「おかげで、出張所を設けてる他の方々の所も狭すぎます、これでは文句も言いたくなりますよ。あっ!また電話だ!はい、はい、どうもイザナギ様、何時もお世話になって、、、なんですか!天照さんが岩戸に隠れると言って暴れてる?弟さんが捕まえてるが持ちそうもない?はい!ボスに伝えます!」





 「ボス。どうするんですか?天照さんが隠れると、日本列島全体で太陽が出なくなりますよ?これ以上死人が増えたら、根の国もパンクします」





 「むむむ」





 「むむむ、じゃありませんよ!どうするんですか?」





 「よーし決めた!死ぬの禁止にしよう!」





 なんかすごい事を言い出したぞ。死ぬのを禁止にする?そんな馬鹿な!でもこの存在だったらできるんだろうなぁ、そんな気がする。





 「ここ最近の死者も娑婆に追い出そう。なにが有っても死なない様にして、そうだな慰謝料として、老いるのも無しにして、全盛期の姿に戻すのも付けて、後はリスポーン機能と故郷に戻してやるのも付けるか、後は、、、恨みも溜まってるだろうし少し殴り会わせてやろう。暫く殴り会っていれば、戦う無駄を悟って大人しくなるはずだ」



 



 「マジですか!そんな事したら、世界中大混乱ですよ!」





 「良いんだよ。そも一度ならず二度も大戦争してシステムを圧迫する方が悪い!大量に殺すのもだ!我らが決めた!今決めた!」





 「本当に良いんですかねぇ?」





 「我らが決めた事が法則!それで少しはシステムも軽くなるはずだ、その間に復旧作業を進めよう!」





 「良いのかなぁ」





 いい加減だ、凄ーくいい加減だ。でも仕方ない、相手は全知全能らしい、逆らってみても仕方がない。こういう訳で。冒頭の事態になった訳である。所で皆さんお判りだろうが、今は1945年である。どうなるかは分かりますよね?
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