夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

王太子目線

　初めて若き伯爵とアーニャの裏切りを知った時は、キャロラインの事を思って心が怒りで震えた。私は怒り心頭だった。

　見惚れてしまうような妻がいながら不貞を働く伯爵に、私は吐き気がした。しかも相手はキャロラインの親友だった。私はキャロラインのことを思って心が痛んだ。

　二回目に裏切りの現場を見つけたときは、正直言ってまた伯爵が不貞行為を働いているのではないかと思って、狩猟にかこつけて様子を見に行ったというのが本当のところだ。伯爵のイーサンとはなんの約束もしていなかった。

　狩猟をするとしてお供を連れてはきていたが、若き伯爵に私は不意打ちをかけた。そして現場を押さえて、美しい妻への実際の彼の仕打ちを話させたのだ。

　が、伯爵であるイーサンが妻には指一本触れていないと知って、私は神に感謝した。とても嬉しかった。気分が晴れやかになった。

　――ならば、私がキャロラインと婚姻できるっ！

　私の目からするとキャロラインは妖艶でとても美しい女性だ。伯爵が彼女に指一本触れていないとは驚いたが、彼のアーニャに対する気持ちも本物のようだったので、私は少し納得した部分があった。

　愛する女性がいるならば、他の女性には触れないと言うのは、私には理解できる。ただ、キャロラインを利用するがの如く、その財力目当てに婚姻した伯爵には苛立ちを感じた。

　伯爵の不貞の現場に遭遇したことは、私には千載一遇のチャンスだったということになる。

　――私は必ずキャロラインを幸せにしよう。

　そう心に固く誓った。早く妻に触れるのが待ち遠しい。これも本音だ。