上 下
23 / 171

結婚の申し込み(2)

しおりを挟む
 私は、王太子閣下がニコニコと私を見つめながら私のお世話をしてくれるのに戸惑っていた。ただ、偶然にも王太子閣下のお気持ちを私は聞いてしまっていたので、私は好意に素直に応えようと決めていた。

「美味しい!」
「でしょう?このサンドイッチは私が作りました」
「えっ!王太子閣下自らですか?」
「そうです。朝早かったので、頑張りましたよ」

「それは…………私などがいただいてよろしかったのでしょうか」
「あなたのために私は頑張って作ったのですから、どうぞ食べてください」
「まあ………………」

 私は胸の奥がキュンとしてしまい、思わず喉を通らなくなった。胸がいっぱいになると食べ物を食べれない。

 王太子閣下は私の様子にきょとんとした様子で、お茶が足りないのかなと言いながらお茶のポットを探した。

「どうされましたか」
「いえ、あまりの嬉しいお言葉に胸がいっぱいになりまして」
「そんな、気になさらずどうぞ食べてください」
「ありがとうございます。いただきます」

「はい、こちらに果物もありますよ」
「まあ、美味しそうですね。素敵」

 王太子閣下はお茶を飲むばかりで、私の様子を目を細めて実に嬉しそうに眺めていた。

 日差しは柔らかく、木の梢が風に揺らぎ、私は目の前の王太子閣下のお姿がとてつもなく凛々しいお姿に見えてきて、ドキドキしてしまった。

 ――これは恋だろうか。
 ――恋だ。

 私は自分で自覚した瞬間に体が思わず震えた。私は王太子閣下に恋をしていると自分で悟った。

「私ばかり食べてしまってごめんなさい。王太子閣下も食べてください」
「では、私も食べますよ。うん!美味しい!我ながらうまくできたもんだ」

「ですよね。本当に美味しいです」
「あなたが望むなら、いくらでもまた私は作りますよ」
「えっ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

(R18)私の夫を寝取った親友ー金髪美人が不幸の引き金!

青空一夏
恋愛
私が帰宅すると、出張中のはずの夫と私の親友が夫婦のベッドでアレをしていた。私は洗面所に行って鍵を閉める。そこから展開する悲喜劇。ブラックコメディー。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

処理中です...