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命を救われたら(1)

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 大観衆に高らかにバリイエル王朝の君主宣言を済ませると、ジョシュアと私はバルコニーから城の中に戻った。

 なんとか生き延びたとほっとする間もなく、バリイエル一門の人々に取り囲まれた。今度は私とジョシュアの関係に興味津々だからのようだ。

「初めての?そうだったんだな。いやぁ知らなかった。となると皇太子より前に!?」
「一体いつ二人は?」

 下世話な質問に発展しかねなかったので、私とジョシュアは黙って微笑んで「察してください」という表情を保ち、その場を去ろうとした。人の噂も75日と言われる。私とジョシュアは硬い表情のまま人々の興味をかわそうと、城の廊下を歩き続けた。

「貴賓室はどこ?」
 ジョシュアは私に小さな声で尋ねた。

「そこの廊下を左に進むとあるわ。どうしたの?」
「風呂に入りたい。君も入ってから異世界に戻った方がいい。どんなところか分からないんだから」

「貴賓室の浴室は、隣でお湯を沸かしてもらって給湯できるわ。確か今日は元々隣国の大臣をお招きするはずだったの。途中まで準備ができていたはずよ。この騒ぎで大臣は引き返したと思うわ。確認してみるわ」

 私は素早く人々の間に目を配り、宮殿の従者を見つけた。従者のほとんどはバリイエルやチュゴアートの貴族の出ではない者ばかりだ。彼らや彼女たちは無事なはずだ。

 私の目配せで従者の数人が密かに近づいてきた。私は皇太子妃だったため、私の指示にはすぐに従うことが習慣づけられていた。

 チュゴアートの王妃だった義母は隣国に旅行中だったはずだ。この騒ぎでもおそらく無事であろう。

「貴賓室の準備ができていたと思うの。お湯の確認をお願いできるかしら?新国王のために急いで準備したいの」

 私は駆け寄ってきた従者に素早く伝えた。

「かしこまりました」
 
 従者たちはすぐに確認と準備をしてくれて、私のところに戻ってきてささやいた。

「準備ができております。すぐにでもお使いいただけます。」
「では貴賓室とその隣の専用浴室をしばらく使うわ。誰も入れないように入り口を見張っておいてくれるかしら?」

「かしこまりました、グレース王妃様」

 彼らがドアの前に待機してくれて、私とジョシュアは貴賓室に入った。すぐに隣の浴室の様子を見てみると、なるほど準備は完璧に整っていた。

「いいわよ」

 私はジョシュアに浴室を使うようにすすめた。

「命を助けた引き換えにさっきの続きをしたい」

 ジョシュアは私の目を見て真剣な表情で唐突に言った。

「さっきって……ジョシュアの部屋でのこと?」
「そう。君は3年前に僕を裏切った。それなのに命を僕に救ってもらったよね?」

「そうね」
「それはフェアじゃない」

 私の心臓はドキドキしてきた。

「早くしないと時間がない。続きをするでいいよね?」

 ジョシュアは決まったことのように言って、私を浴室に押しやった。私の周りの空気は急に熱くなったかのようだ。私の顔は燃えるようにに赤く上気した。


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