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15. 倒れそうなんですけど(颯介)

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 俺は目の前に光景に、自分の目を疑った。

 え?なんで?
 なんでまたこの3人の超絶美形のボロを着た子供たちが、俺の目の前にいるの?

 俺は今、やっと念願の田中さんに遠いニューヨークの地で偶然出会うという非常にロマンティックな奇跡の瞬間を、心から噛みしめようとしていたところだ。鐘の音が頭の中で鳴り響いてー

 いや、鳴っとる、鳴っとる。
 どこかであの鐘が鳴っとる。

 和田あきこが出てきそうになるが、違う。そんなふざけて良いシチュエーションでは、断じてない。

 そもそもだ、よーく考えろ。俺が何をした?

 今、ニューヨークの街中で、を呼び止めただけだ。目の前にはこの子たちはいなかった。で、急にぐうんと何かに引っ張られたなと思ったら、目の前に3人の子供たちがいた。悪夢だ・・・この子たちに出会うのは、もはや悪夢だ。

 俺は、気づくと、教会の鐘のような音が鳴っている、晴れた朝の青空が広がり、辺りに緑の木々があり、異国の地の様子を満遍なく撒き散らす、貧しげな村の大通りに立っていた。ここは中世ヨーロッパで間違いなし。せいかーい・・・

 ハリウッドの撮影用の村とか?いや、違うだろう。

 完全にしたよね?今、俺は。

 なんか血圧が高くなるという親がぼやいたいた気持ちがやっと分かった。二十代でまだ若いはずの俺は倒れそうな自分を感じて、必死に自分を律っしようと思い念じた。こんな所で倒れるわけにはいかない。危なすぎる。

「颯介さん?」女の子が俺に話しかけた。言葉はやはり通じる。
「ああ、君は確かジョージアだよね。」俺は答える。心なしか、俺の声は震えて震えて、蚊の鳴くような声とは文字通りこんな声を言うんだな、と思った。俺はどこかで冷静に自分を見つめていた、と思う。

「僕たち、今から伯爵の家に向かう所です。」一番大きい男の子が言った。ピーターだね、君は。
「いっしょに来る?」一番小さな男の子が言った。この子は確かレオだ。

「王子のダッカーは?」俺は聞いた。ここにはあのキラッキラの幽霊役の男の子はいないのか?

 キョロキョロあたりを見渡したが、あのキラッキラのスターみたいな子は見たらない。未来の王たる貫禄を備えた例の王子はここにはいない。
 代わりに、遠巻きに結構な数の村人がいるのに気づいた。

「みんなで伯爵の家に向かっているところ?」
 俺は皆貧しげなボロを着た村人を見て、びっくりして子供たちに聞いた。ここでは、ボロを着ているのがスタンダードらしい。

 そうか、そうか、俺のユニクロは、もしかしてものすごい未来人感を醸し出していて、かつ、洗練されてお洒落で金持ちに見える?
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