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第二章 恋(もうあなたに騙されません)

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 『時を操る闇の書』は、意外にも私に活力を与えてくれた。孤独な砂漠の生活が、意図していなかったザックリードハルトの3兄弟との遭遇によって、挑戦に満ちたものになったからだ。

 私のバケモノみたいな能力を知っても、ルイにひいた様子は無かった。

 無意識に季節を変えられる力は怖い。一人だけ勝手に人知れず3ヶ月も未来に進み、気づいていないと言うこともある。

 ラテン語と暗号で書かれた禁書は、私に新たな知識をもたらしていた。私はどうやって時間を操作することができるのか、理解し始めていた。

 ただ、それを使うには、相応の人間力とコントロール力が必要なのだ。傷心でボロボロだからと言って勝手に未来に侵入して良いわけがないのだ。私は自分のコントロールできない力を偶然に本来見るはずのない『時を操る闇の書』を使ってコントロールできる可能性がある。


 その夜、私はぐっすり眠った。
 翌朝、1867年6月22日の朝、私は目覚めると自分が子ビンタン砂漠にいる現実を忘れていた。いつもにように、新聞を手にしようとして、ハッと気づいたのだ。新聞は無い。灼熱の砂漠のど真ん中に越してきたのだから。

「そうだわ!砂漠の家に越してきたのだわ」

「そうでございますわ、お嬢様」

 朝早くからいつものように働いていたらしいテレサに声をかけられて、私はようやく自分の置かれた立場を思い出したが、すぐに飛び上がった。

「みんな、凱旋門の時計台の下にお昼に待ち合わせよ。食料を獲得するために、彼らの知識が必要だと思うの」
「まあ、私たちも行くのでございますわねっ?」
「もちろんよ。毎日のことだから、3人で交代して行くこことがあるかも知れないから、ちゃんと教えてもらいましょう」

 その日の朝食は、ハム、ベーコン、マッシュルーム、パン、コーヒーだった。私たち3人はザックリードハルトで買い物をすると言うイベントにワクワクしているのを抑えきれなかった。

 午前11時45分に、書斎の床に描いた五芒星を使って、私はレイトン、テレサ、ミラと共にザックリードハルトの凱旋門まで移動した。私達はその辺りをしばらく散策して過ごした。私は一応エイトレンスの王妃に砂漠への追放を命じられた身なので、美しい模様のモスリンのマスクで顔元を隠していた。

 凱旋門の下で、私は急に誰かに腕を疲れて、ほっとした。ルイだった。

「ルイ!」

 私たちは食料調達にかこつけて、執事のレイトンをはじめとしてザックリードハルトの都の華やかさと街の賑わいを楽しんだ。

 私たちが夢中で市場を巡っていた時、私たちの姿を見て、街の人がヒソヒソ声で会話する理由が私はわかっていなかった。ルイがお忍びで私たちと一緒にいることに街の人は気づいていたようだ。だが、私達はまるで事態を分かってはいなかった。

 食料は充実して仕入れることができたため、今後の砂漠生活では、定期的にザックリードハルトで買い物をしよう思った。テレサとミラのメイド服をもっと過ごし安くするために、私は綺麗なモスリンの花模様の生地を買った。



 私の心は、少しずつ悔しさと悲しさを乗り越えていけるかもしれないと思い始めていた。ルイがそばにいると、私の気持ちは下向かないようだ。

 彼に救われたのは私の方だ。
 これはあまりに目新しい事が次々と起こった事で、私の心が沈んでばかりいる暇が無かった事が功を奏したと言える。

 ロミィの衝動により、事件が起きるのはその後だ。


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