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第三章 囚われの身から幸せへ

フォースター朝の創設 ヴァイオレットSide(2)

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 しかし、私の力はまだまだ試されるようだ。 
 海軍と陸軍の撤収を話し合っていた時だ。

 縄が解かれたルノーは私に飛びかかってきた。私はエリオットと見つめあっていて完全に油断していた。甘い雰囲気に気を取られていた私の耳元で、うめき声が聞こえた。ハッとしてみると、魔導師ジーニンが私を庇ってルノーの短剣に刺されて倒れていた。アルフレッド王子の臣下の者が即座にルノーをひっとらえたが、ジーニンは息も絶え絶えだ。

 愛人ジゼルとソフィー妃も祝福のために広間に集まってきていたので、彼女たちの悲鳴と臣下の者たちの叫ぶ声で大騒ぎとなった。

 私は震える思いでジーニンの紫色のマントが赤く血に染まるのを見た。

 ワナワナ手が震える。

 ――しっかりしてっ!蘇生術よ

 私はガタガタ震えながら集中した。目を見開いて音に集中する。私の周りに風が起こり、一瞬、フードコートで私を涙を流しながら「処刑されたお嬢様がよくぞここまで」と涙していたジーニンの姿が見えた。

 涙で目が曇る。

 ――大丈夫だ。私ならできるわ!
 
『Lvl11万9264の蘇生術を使いますか?』
「使います」
『Lvl11万9264の治癒修復術を使いますか?』 
「使います」

 魔導師ジーニンの顔色が戻り、血に染まったマントはそのままに、ジーニンがゆっくりと目を開けた。

「ヴァイオレットお嬢様、よくぞここまで……」
 
 そこでおいおいと泣き出した。

「異世界転生クラスを使って私をニホンに転生させて、私の力が戻るまで一緒にいてくれたジーニンがここに戻ってきたということね?」

 私はそっと聞いた。

「はい」

 私とヒュー王子と魔導師ジーニンは抱き合って喜びあった。

「私を守るために、あなた来ていたの?」
「さようでございます。わたくしは忠実なしもべですから」

 私は思わず涙がこぼれるままに笑いながら泣いた。

「さあさあ、皆様、祝杯と結婚式と戴冠式の準備で大忙しですわよ」
「そうですわ。みんないっぺんにやりましょうか」

 ソフィー妃とジゼルが私が泣き笑いをしている姿を優しく抱きしめて、皆に言った。

 ルノーは地下牢に入れられた。カール大帝はナツメグの島に移動させて欲しいというので、スキルで移動させてあげた。数人の忠実な臣下も一緒に移動させたので大丈夫だろう。セミになった乳母のシャーリーンが戻ってきたら、ナツメグの島に移動させてあげると約束した。

 乳母のシャーリーンはきっとカール大帝が心配で戻ってくるだろう。

 17歳のヴァイオレットは戴冠式まで見届けたら、一度戻ろう。18歳で結婚式を挙げるのだ。レキュール辺境伯エリオットと私は待ちきれない思いだった。

 私は感情をコントロールして聖女の力を発揮できるように少しはなれただろうか。

 前よりできるようになった気が自分でもした。

 空を見上げると青い空が広がっていた。火炙りにされた日も青空が広がっていた。あの悲しい日が遠くに小さく消えていく気がする。
 
 次は結婚式だ。
 新フォースター王朝の紋章は赤と白と青い薔薇と黄色い獅子の組み合わせに決まった。
 
 エリオットはハープスブートの王座に就いた。前回の人生とは真逆になった。




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