微炭酸ロケット

Ahn!Newゐ娘

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 「何処ここ!?」
 真っ暗で、自分の掌すら見えない。外なのか中なのか。中だとしてもどれくらいの広さなのか、また、歩けるのか、歩けないのか。何があるのか。全てがわからない場所で自分の声だけが存在しているような気がした。
 試しに1歩、歩いてみる。
 ・・・普通に歩けた。
 「何処なの・・・、誰か!いないの!?」
 しかし、返事は無い。そっとしゃがんでみると、地面に手が触れた。地面は砂に近い。石やなんやらが混じったような、そんな感じ。
 そのまま手を地面に這わせてみると、少し下がった部分があった。手をもう少し進めると、まだ下がって行く。凹みのようにも感じれた。
 「凹み・・・?クレーター?」
 手を這わせたまま、走るようにクレーターの凹みの中へと向かう。
 オタクって呼べるほど月に詳しくなった私は、凹んだ物に敏感だった。これも単なる地面の凹みだったかもしれないのに、迷う事なくクレーターの中へ向かったのだった。
 クレーターの中に1人立ち、ふと思う。
 「ここ・・・、月の裏側なの?」
 何も見えない、絶望や負の感情が次から次へと湧いてくるような、暗く切ない場所。
 そんな所が私の夢見た月の裏側なの?
 私たち・・・。馬鹿だね、私は。
 恨み続けてる奴のこと、また仲間みたいに呼んで。
 結局、忘れきれてないんだ。

 「松羽!!!」
 「ッギャ!」
 踏まれた小人のような悲鳴が教室に響く。
 夢から引き戻された。
 そして、また担任の教科書が降ってきた。私はいつもこうして授業中は起こされる。
 「なんだ、また天体観測でもして寝てないのか?」
 「・・・。わかってるんなら寝かせて下さいよ」
 「そうもしたい所だがな。なにせ起きてなきゃいけないお前らのクラスメイトが可哀想だろ?」
 体を起こして辺りを見回す。皆苦笑いを浮かべていた。
 本当に、どいつもこいつも。
 すると、後ろの席の友達・あずさが「そーだよ?萃、大学行けなくなるよ?」と、にやにやしながら言ってきた。
 「馬鹿、まだ1年生の4月だっての」
 呆れて溜め息が漏れる。
 肩を下ろして前を向くも、授業に参加する気も無く、ただただ放課後の事を考えていた。
 あ、そうだった。今日は天文部に入部届けを出してこよう。
 念願の天文部にやっと入れる。いい顕微鏡を使ってより鮮明に月を見る事が出来るようになる。
 ・・・あ。
 先ほどの夢を思い出した。本当に月の裏側はただの暗闇なのかな。
 そんな事ない!!と顔をぶんぶんと横に振り、天文部に入部する放課後を楽しみに、足を組んで、私は授業を聞き出した。
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