6 / 175
第一部:2章:物語のヒロイン
6話:なぞの視線
しおりを挟む
あれから一週間――あのエルスターが少しばかり丸くなった…気がしなくもない。
その情報は彼のことを知っている人たちを驚かせた。
彼は認めた人間以外は一定以上ふみこませないことで有名で、それが国王という立場でも変わらない。どんな相手でもどんな場面だろうが毒を吐きまくり、少しでも怪しいと判断した相手は徹底的に調査する。
これまで彼が認める人間は複数いたが、その中でも飛びぬけているのは2名だった。
反抗期で言いこそ荒くなるが、従うところは従っている――父親。
どんな汚れたことでも躊躇わず行動する――デイン第三王子。
そして、最近追加されたのがネルカ・コールマン。
コールマン伯爵の姪だったが、両親が亡くなり独り身になったため養子として迎え入れられた。しかし、狩人として暮らしていたのに一等教室に入り、あのエルスターが認めたどころか求婚までしたということはただの令嬢であるはずがない――それこそが貴族間で共有されている認識である。
根も葉もない噂というのはこういう時に出来上がるもの。
実は王家の隠し子でコールマン家は隠れ蓑、国の極秘実験によって育てられたエリート兵士、女に見えるが本当は男、彼女の母親がエルスターの生き別れの姉、隠れ巨乳……そしてこれらの噂のことをネルカは把握している。別に秘匿されているわけではないはずなのに、真の情報を知っているのは王家回りで働く貴族だけなのが現状だった。
「ハァ…そんなわけないのに。」
「ハハハ、ネルちゃんも大変だねぇ~。」
一時期は収まっていたはずの奇異の目が再発する中、当のネルカは友人であるエレナと昼飯を食べていた。二人は購買でパンを買った後、いつも中庭のベンチでゆっくりしている。悪い噂こそ聞かないが変な噂はよく聞くので、前以上に避けられるようになっておりこれ以上の友達は見込めない。
「ねぇエレナ…あの子知ってる? 第二教室のピンク髪。」
狩りの生活の中で培ったネルカの第六感、多くの視線の中で一つだけ別種のものが混じっている。その視線は明らかにネルカに対する敬意なので悪い気はしないが、そんな感情を向けられることもしてないはずなので違和感があったのだ。
ネルカはチラッとその方を見ると、やはり今日もその人物はこちらを見つめている。
第二のピンクってだけで有名なのか、エレナはその方向を見るまでもなく頷いた。
「マリアンネ嬢のことだね。ボクと同じ市民なんだけど……なんと孤児院出身なんだって。孤児院から入学ってだけなら極稀にいるらしいけど、第二まで来れたのは初らしいしスゴイよね。」
(つまり、第一教室に入った私とエレナに興味が…ってとこかしら?)
それからはたわいもない雑談をして過ごしただけだが、昼休憩の時間が終わるころにはマリアンネのことなど頭から離れていた。
― ― ― ― ― ―
(一度知ってしまったからこそ目で追っているのかしら…。)
――朝の寮内食堂、離れた席。
――日課の朝ランニング、木の陰。
――昼飯の休憩時間、校舎の窓。
――寮の共用風呂、のぼせている。
――あの曲がり角、目が合うと慌てて逃げる。
――寝る前にふと覗いた窓、木の上にいる。
ネルカの行くところに必ずマリアンネがいた。
(いや、これ…ストーカーってやつじゃないの?)
あまりにも手慣れているようだったので、それまで気にしなかっただけで本当は最初からストーカーされていたかもしれない。あまりに見る時間が長いせいか、目を閉じても残像として瞼の裏にあの髪色が残るほどである。さすがのネルカも怖いと思ったのか、行動せざるをえなくなってしまった。
どうして自分を追うのだろうか、まずは情報収集から。
頼りたくないがネルカが使える情報源はアイツが一番詳しいはず。
アイツ――エルスターの元へと彼女は向かった。
「ねぇ、マリアンネさんについて教えてくれるかしら?」
「ふむ、あのピンクに目を付けるなんて流石ですね。何も行動していないように見えていましたが、裏ではきちんと私のパートナーとしての動いていたのですか。やはりそんじょそこらの愚鈍共とはわけが違いますね。」
エルスターは何か勘違いしているようだったが、随分と機嫌がいいようなのでネルカは黙っておくことにした。すると彼は懐から手帳を取り出すととあるページを開いた。そこに書いてあるのはマリアンネについての情報だった。
「孤児院出身だが発想力が凄まじく、王都南部では彼女が考案した食べ物や商品が流行っているようですね。いろんな商会が彼女を守っていて『ヤマモト連合』などと呼ばれています。高位貴族にはまだ浸透していないですが、美容関連の商品は下位貴族で買われていますよ。」
彼女は儲けたお金でこの学園の入学資金を確保したのだが、聞き込み調査によると学園に『入らなければならない』かのような言動をしていたらしい。彼女だけが知りえる情報があり、それが事態が大きいことであるとエルスターは踏んでいた。
「私がここまでの調査をしているのは…彼女は未来が見えるんじゃないかと予想しているからです。」
「未来が…?」
「王都でとある病が流行ったとき、彼女が広めた衛生知識が市民を守った。雨が降らず不作が発生したとき、彼女が広めた野菜は育ち飢餓から守った。とある伯爵家の馬車が襲われたとき、彼女が呼んだ衛兵が一家を守った…一部の者からは『聖女』などと言われています。」
未来視の魔法を扱える者は案外いるが、消費する魔力の量が多かったり時間の指定ができなかったりなど、あってないようなものだとされている。しかし、マリアンネがここまで悲劇を回避しているとなると、彼女の未来視だけは価値は変わってくる。
そして、仮に彼女の未来視が予想通りの代物であったのなら、ストーカーされているネルカが次の悲劇対象である可能性が高い。なんだかエルスターの命令で動いているようで癪に障るネルカだったが、背に腹は代えられないと覚悟を決めた。
「女性のことは女性が一番…私に任せても? マクラン様?」
「助かります。私ではなぜか逃げられ…まぁ調査しにくかったので。」
エルスターはその言葉を待っていましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべたが、ふと何を思ったのか顎に手を当てる。しばらくの沈黙があったのち口を開く。
「あぁ、それと…前にも言いましたが『エル』と呼んでくださいね。」
絶対に呼んでたまるかと心の中で悪態を吐いたネルカは、その場から逃げるように早足で立ち去った。エルスターが少し寂しそうなのに気づくことなどなかった。
その情報は彼のことを知っている人たちを驚かせた。
彼は認めた人間以外は一定以上ふみこませないことで有名で、それが国王という立場でも変わらない。どんな相手でもどんな場面だろうが毒を吐きまくり、少しでも怪しいと判断した相手は徹底的に調査する。
これまで彼が認める人間は複数いたが、その中でも飛びぬけているのは2名だった。
反抗期で言いこそ荒くなるが、従うところは従っている――父親。
どんな汚れたことでも躊躇わず行動する――デイン第三王子。
そして、最近追加されたのがネルカ・コールマン。
コールマン伯爵の姪だったが、両親が亡くなり独り身になったため養子として迎え入れられた。しかし、狩人として暮らしていたのに一等教室に入り、あのエルスターが認めたどころか求婚までしたということはただの令嬢であるはずがない――それこそが貴族間で共有されている認識である。
根も葉もない噂というのはこういう時に出来上がるもの。
実は王家の隠し子でコールマン家は隠れ蓑、国の極秘実験によって育てられたエリート兵士、女に見えるが本当は男、彼女の母親がエルスターの生き別れの姉、隠れ巨乳……そしてこれらの噂のことをネルカは把握している。別に秘匿されているわけではないはずなのに、真の情報を知っているのは王家回りで働く貴族だけなのが現状だった。
「ハァ…そんなわけないのに。」
「ハハハ、ネルちゃんも大変だねぇ~。」
一時期は収まっていたはずの奇異の目が再発する中、当のネルカは友人であるエレナと昼飯を食べていた。二人は購買でパンを買った後、いつも中庭のベンチでゆっくりしている。悪い噂こそ聞かないが変な噂はよく聞くので、前以上に避けられるようになっておりこれ以上の友達は見込めない。
「ねぇエレナ…あの子知ってる? 第二教室のピンク髪。」
狩りの生活の中で培ったネルカの第六感、多くの視線の中で一つだけ別種のものが混じっている。その視線は明らかにネルカに対する敬意なので悪い気はしないが、そんな感情を向けられることもしてないはずなので違和感があったのだ。
ネルカはチラッとその方を見ると、やはり今日もその人物はこちらを見つめている。
第二のピンクってだけで有名なのか、エレナはその方向を見るまでもなく頷いた。
「マリアンネ嬢のことだね。ボクと同じ市民なんだけど……なんと孤児院出身なんだって。孤児院から入学ってだけなら極稀にいるらしいけど、第二まで来れたのは初らしいしスゴイよね。」
(つまり、第一教室に入った私とエレナに興味が…ってとこかしら?)
それからはたわいもない雑談をして過ごしただけだが、昼休憩の時間が終わるころにはマリアンネのことなど頭から離れていた。
― ― ― ― ― ―
(一度知ってしまったからこそ目で追っているのかしら…。)
――朝の寮内食堂、離れた席。
――日課の朝ランニング、木の陰。
――昼飯の休憩時間、校舎の窓。
――寮の共用風呂、のぼせている。
――あの曲がり角、目が合うと慌てて逃げる。
――寝る前にふと覗いた窓、木の上にいる。
ネルカの行くところに必ずマリアンネがいた。
(いや、これ…ストーカーってやつじゃないの?)
あまりにも手慣れているようだったので、それまで気にしなかっただけで本当は最初からストーカーされていたかもしれない。あまりに見る時間が長いせいか、目を閉じても残像として瞼の裏にあの髪色が残るほどである。さすがのネルカも怖いと思ったのか、行動せざるをえなくなってしまった。
どうして自分を追うのだろうか、まずは情報収集から。
頼りたくないがネルカが使える情報源はアイツが一番詳しいはず。
アイツ――エルスターの元へと彼女は向かった。
「ねぇ、マリアンネさんについて教えてくれるかしら?」
「ふむ、あのピンクに目を付けるなんて流石ですね。何も行動していないように見えていましたが、裏ではきちんと私のパートナーとしての動いていたのですか。やはりそんじょそこらの愚鈍共とはわけが違いますね。」
エルスターは何か勘違いしているようだったが、随分と機嫌がいいようなのでネルカは黙っておくことにした。すると彼は懐から手帳を取り出すととあるページを開いた。そこに書いてあるのはマリアンネについての情報だった。
「孤児院出身だが発想力が凄まじく、王都南部では彼女が考案した食べ物や商品が流行っているようですね。いろんな商会が彼女を守っていて『ヤマモト連合』などと呼ばれています。高位貴族にはまだ浸透していないですが、美容関連の商品は下位貴族で買われていますよ。」
彼女は儲けたお金でこの学園の入学資金を確保したのだが、聞き込み調査によると学園に『入らなければならない』かのような言動をしていたらしい。彼女だけが知りえる情報があり、それが事態が大きいことであるとエルスターは踏んでいた。
「私がここまでの調査をしているのは…彼女は未来が見えるんじゃないかと予想しているからです。」
「未来が…?」
「王都でとある病が流行ったとき、彼女が広めた衛生知識が市民を守った。雨が降らず不作が発生したとき、彼女が広めた野菜は育ち飢餓から守った。とある伯爵家の馬車が襲われたとき、彼女が呼んだ衛兵が一家を守った…一部の者からは『聖女』などと言われています。」
未来視の魔法を扱える者は案外いるが、消費する魔力の量が多かったり時間の指定ができなかったりなど、あってないようなものだとされている。しかし、マリアンネがここまで悲劇を回避しているとなると、彼女の未来視だけは価値は変わってくる。
そして、仮に彼女の未来視が予想通りの代物であったのなら、ストーカーされているネルカが次の悲劇対象である可能性が高い。なんだかエルスターの命令で動いているようで癪に障るネルカだったが、背に腹は代えられないと覚悟を決めた。
「女性のことは女性が一番…私に任せても? マクラン様?」
「助かります。私ではなぜか逃げられ…まぁ調査しにくかったので。」
エルスターはその言葉を待っていましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべたが、ふと何を思ったのか顎に手を当てる。しばらくの沈黙があったのち口を開く。
「あぁ、それと…前にも言いましたが『エル』と呼んでくださいね。」
絶対に呼んでたまるかと心の中で悪態を吐いたネルカは、その場から逃げるように早足で立ち去った。エルスターが少し寂しそうなのに気づくことなどなかった。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる