君と出逢ったあの時から

月待

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ひヾき 最終章

君探し

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本日曇天。数日続いてた頭痛はない。君の片鱗はなぜあの時、君を否定したのだろうか、と思う。歯切れの悪い否定の言葉だったけれど。この大海のような空間で私は君の片鱗を意識的に、そして無意識に探し続けてる。



君探しであるのに、いったん君という枠を外さないと君は探せない。タイプも、年齢も、性別さえも。そういう外的な特徴を取り払って君のエッセンスを見つける作業。でも君に通じる何かしらを認めても断定はしない。




君かな?君じゃないかな?という天秤はずっとゆらゆらさせて見定めていく作業。ああ、君じゃなかったのか!っとずいぶん時間をかけてから断定することもある。



そしてその後、その人違いだった人物から君に纏わる何かしらが零れて来る時もある。例えばその人は出身地や居住地が君とごくごく近かったりする。同じような過去や、同じような病を抱えていたり、同じような生業の方だったりする。



私は感じ取ることが出来ても、君と断定する事は難しく、常に疑いを持つよう心掛けてこの空間に在る。それは、もしかしたら君ではないか?というものと、君ではないのではないか?という二重の疑念だった。



そしてまた君は虚構の名の、虚構の人格の元に虚構を交えて真実を織り込む。その真実はまた一つではなく、私の全く知らない人との真実であったりもする。それはこの空間の特質上、やむを得ないことも承知している。


皆が知っている君を知らない私は、なんとか君をみつけようとしたけれど、疑心は心を病む。私は常にこの人は君ではないか?または君ではないのではないか?という二つに悩まされるようになった。それは時に怖れとなった。



昨夜、君が私を無視するのには理由があった事はわかった。君にとっては実に曖昧模糊としたこのスタンスが適しているのだろうことも、以前から感じていた。君に尋ねたところで答えはなかった。そしてまた君の片鱗は否定する。



うつつでは君は定期的に彼女(君にそっくりな彼女とは君探しをしていたら遭遇してしまった)と逢瀬を重ねる……。私が知らない誰かとも交流があるのかもしれない。いずれにせよ、君は君を全うしているだけだから、それはもう構わないことにした。所詮君も私も雲散霧消する雲のような霧のような存在なのだから…っと。








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