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魔王のちょっといいとこ見てみたい
びっくり魔王
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魔王城の朝は掃除から始まる。
メイド達はもちろんのこと、魔王も例外ではない。
自室を含めたいくつかの部屋は、魔王自ら掃除する。
代々魔王にのみ触れることが許された最高機密の文書などがあり、他人に任せるわけにはいかない。
とは、建前上の話。実際は各所に忍ばせた魔王秘蔵のコレクションを廃棄されることの無いよう見張っているのだ。
だが、パイン他メイド達も入室禁止というわけでないので、昨日のようにひょんなことから魔王のコレクションが白日の下に晒されることもある。
同じ轍は踏むまいと点検に余念がない。
「今日も無事でいてくれたな。よしよし」
計10点の安全確認を終えると、魔王は執務室へと脚を運んだ。
扉を開けると、掃除の最終点検を行うパインの姿があった。
「おはよう、パイン。今日もよろしくな」
「はい、お願いします」
いつものあいさつを交わし、席についた。
すかさず、湯気を立てたティーカップが手元にやってくる。中は真紅の液体で満たされている。
「今日もうまい」
「それは良かったです」
カップに口を付け、自然に口からこぼれた魔王の言葉に、パインの表情もわずかに緩む。
いつもの朝だ。
前魔王の亡き後、慌ただしく日々を過ごしてきたが、どうにか今新たな日常を手に入れた。
パインは顔には出さなくとも、何気ない日常の安らぎを噛み締めていた。
――――が、その時間は魔王のカップが空になるよりも早く終わりを迎える。
「魔王様! わかりました!」
ノックに対する返事を待たずに爺が執務室の扉を開けた。
爺の表情は険しい。
「本当か!」
それに反し、魔王の顔は高揚に満ちている。
「城内の烏と奴らが記録しておりました。こちらへ」
爺に促されるまま魔王は執務室を後にする。
「パインも来てくれ。意見は多いほうがいい」
返事を待たず魔王は執務室の扉を閉める。
パインは一人執務室に佇む。
魔王のカップにはまだ微かに湯気が立つ。
「せっかく淹れたのに……」
誰に言うわけでもなく呟くと、パインは魔王の後を追った。
パインの呟きは湯気と一緒に儚く消えた。
メイド達はもちろんのこと、魔王も例外ではない。
自室を含めたいくつかの部屋は、魔王自ら掃除する。
代々魔王にのみ触れることが許された最高機密の文書などがあり、他人に任せるわけにはいかない。
とは、建前上の話。実際は各所に忍ばせた魔王秘蔵のコレクションを廃棄されることの無いよう見張っているのだ。
だが、パイン他メイド達も入室禁止というわけでないので、昨日のようにひょんなことから魔王のコレクションが白日の下に晒されることもある。
同じ轍は踏むまいと点検に余念がない。
「今日も無事でいてくれたな。よしよし」
計10点の安全確認を終えると、魔王は執務室へと脚を運んだ。
扉を開けると、掃除の最終点検を行うパインの姿があった。
「おはよう、パイン。今日もよろしくな」
「はい、お願いします」
いつものあいさつを交わし、席についた。
すかさず、湯気を立てたティーカップが手元にやってくる。中は真紅の液体で満たされている。
「今日もうまい」
「それは良かったです」
カップに口を付け、自然に口からこぼれた魔王の言葉に、パインの表情もわずかに緩む。
いつもの朝だ。
前魔王の亡き後、慌ただしく日々を過ごしてきたが、どうにか今新たな日常を手に入れた。
パインは顔には出さなくとも、何気ない日常の安らぎを噛み締めていた。
――――が、その時間は魔王のカップが空になるよりも早く終わりを迎える。
「魔王様! わかりました!」
ノックに対する返事を待たずに爺が執務室の扉を開けた。
爺の表情は険しい。
「本当か!」
それに反し、魔王の顔は高揚に満ちている。
「城内の烏と奴らが記録しておりました。こちらへ」
爺に促されるまま魔王は執務室を後にする。
「パインも来てくれ。意見は多いほうがいい」
返事を待たず魔王は執務室の扉を閉める。
パインは一人執務室に佇む。
魔王のカップにはまだ微かに湯気が立つ。
「せっかく淹れたのに……」
誰に言うわけでもなく呟くと、パインは魔王の後を追った。
パインの呟きは湯気と一緒に儚く消えた。
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