魔王の子育て日記

教祖

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夜の魔王

考え魔王

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 「やっと落ち着いたな」
 皆の意を代表した魔王の言葉が医務室に染み渡る。
 「やっぱり、ミルクは食いつきが違いましたね。2回分一気に飲んじゃいました」
 疲れ切った魔王に反して、ヴィエルは嬉しそうだ。
 
 「泣くだけ泣いて、用が済んだらまたおねんねかよ」
 「まるで誰かさんみたいね。あっ、でも誰かさんのほうが大人なの分たちが悪いわね」
 セリアの言葉にわざとらしく口に手を当てて返すバンゼイン。
 「ほんと誰だろうな? 良い機会だから、この場にいるんだったら言ってみたらどうだい」
 「いいの? でも、やめておくわ。言ったらきっと泣いちゃうもの」
 「誰が泣くか!」
 「いやだわ、セリア。だれもあなただなんて言っていないのに」
 「目がそう言ってるんだよ!」
 
 「うーん。いつ見ても飽きないね。ここまでくると伝統芸ってやつ?」
 
 「「だれが伝統芸だ(よ)」」
 ユリユスの総括に二人が切り返す。ここまでが一連の流れだ。
 口調は強いが、二人にはこれが最適なコミュニケーションの形であることをここにいる全員が知っている。
 「やはり、赤ちゃんのお世話は大変なんですね。やってみないとわからないものです」
 新しい赤ちゃん用の寝間着をベッド横のタンスにしまうパイン。
 パイン達が人間界に出向いている間に、ヴィエルが作ってくれたものだ。
 「しかし、これからどうすっかな。帰す前に赤ん坊のこと知らねえか聞いときゃあよかったな」
 「聞いても無駄だったと思いますよ。知っていると言えば自分もさらわれかねないと口をつぐはずですから」
 「そんなことねえだろ。この容姿端麗の魔王様のご質問だぞ? 嘘偽りなく答えるにきまってんだろ」
 「また持病の発作ですか。かかりつけ医も暇ではないのですよ?」
 「なにが発作だ! ……まあ、実際警戒するだろうな。とりあえず親探しするか」
 「そうしましょう。一刻も早く同じ空間に人間がいるという状況を無くしたいですから」
 ハリルはそう言って風切り音が聞こえてきそうなほど大きく首を縦に振る。
 「……赤ん坊も、かあちゃんの腕の中が恋しいだろうしな」
 魔王が言葉を選んでいることは、明白だった。
 人間に対する思いはハリルと魔王は対極であり、どちらが歩み寄っても互いに傷ついてしまうジレンマのようなもの。
 魔王にとって大きな悩みの種であり、周りの魔族にとっても、扱いが最も難しい関係である。
 いずれは和解の糸口がつかめるだろうか。
 先の見えぬ希望を抱き、魔王は親探しへと動き出す。
 「じい! あれ・・に声かけてくれ」
 「かしこまりました。調査するよう依頼しておきます」
 「みんなもなにかあてがあれば、探してくれ。時間もちょうどいいし、解散! あと4バッツ頑張ろう」
 「「「はい!」」」
 魔王の一声で皆それぞれの持ち場へ散った。
 
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