魔王の子育て日記

教祖

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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?

母は偉大なり その13

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 「はっ!」
 一呼吸おいて気合を入れると、ダークパープルの瞳に光を宿した魔王がゆっくりと粉ミルクを地面から持ち上げ始めた。
 ゆっくりと、しかし確実に持ち上がる粉ミルクを前に、額に手を当てて呆れるパインと目を丸くする佐伯と女店主。特に女店主に至っては、驚きのあまり後ずさっている。
 「はっ! ちょっと待って、それ」
 何かを思い出したように静止を呼びかける佐伯をよそに、魔王は粉ミルクをリフトアップし続け、佐伯の用意した台車に3缶とも乗せてしまった。
 「$%&@**%@@@どんなもんよ
 「&&$! ##@***!?魔王様! 私たちが魔族だとばれたどうするつもりですか!?
 自慢げに胸を張る魔王を前に、パインの心中は穏やかではない。
 わざわざ不審がられるのを覚悟で、こんなローブを着込んで旅人然とした装いをしているというのに、こんなに堂々と力を見せびらかされては、言及されたら反論のしようがない。
 いったいどうすれば……――――パインの背に気温のせいではない汗が伝う。
 案の定、佐伯が驚き顔のままゆっくりと口を開いた。
 ねぇ、あなたって――

 
 「見かけによらず力持ちなのね!」

 「「へっ?」」
 「な、なにかしら、何か武術の心得があるとか? それとも何かコツがあるのかしらっ! 実は昔ね、あなたみたいに体が細いのに力持ちな子がいてね、それで――――」
 堰を切ったように佐伯は魔王に疑問をぶつけた。
 どこか興奮しているように見えるその姿は、魔王にいかがわしいことを強要しているように見えなくもない。
 などと混乱のあまり余計なことを考えてしまったパインであったが、ようやく自分のすべきことを思い出した。
 佐伯の気を魔王から逸らさなければ……
 「そろそろ、かいけい、したい、です」
 「あら、そうね。もっと詳しく聞きたかったわ。えっと、合計で3000マルになります」
 「すこし、まつ、して、ください」
 ローブの内ポケットから財布を取り出す傍ら、パインの心は焦燥に包まれていた。
 とりあえず、店を出るとっかかりは作れた。
 後は、このまま話題を掘り返される前に店を出られれば、ひとまず安心だ。早く店を出てしまおう。
 自分でも、こんなに焦るなんて柄でもないと分かっているが、これは焦らずにはいられない。
 ここで魔族であることがばれれば、裸一貫で敵陣に乗り込んでいることと同義。
 隣にいるのが魔族の長だとしても、分が悪すぎる。
 思考を遮る財布の感触を指先に感じ、焦りのままに鷲掴むと

 「いや、やっぱりおかしいでしょ!」
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