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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?
母は偉大なり その12
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「ちょっと!? 私なにかした!?」
自由だった左手を魔王にとられ、右手も粉ミルクの缶で塞がれた佐伯は、身動きの取れぬままパインに助けを求める。
パインとしては、あと少しで魔王を地に伏させることができようというところを邪魔され、面白くない。
「わたし、わかる、しない、です」
明らかにわざとらしく首をかしげて見せることが彼女の答えだった。
佐伯は魔族コンビの少し後ろで行く末を見守ってきた女店主に助けを求めるが、満面の笑みで返される。
私が知るはずないだろう。知っていたらこんな状態にはなっているはずないだろうという顔だ。
それから魔王が佐伯の腕を解放したのは、佐伯がパインと魔王とに目を泳がせること4回目に差しかかろうというところ。
「%&@:+*」
言葉以上の態度を示す魔王。
ここまでしっかりと人に感謝の意を示した魔王の姿は初めて見たかもしれない、と魔王を横目にパインは複雑な思いを抱くのだった。
「よくわからないけど、はい、お望みの粉ミルク」
佐伯から渡された粉ミルクの缶は3つ。風呂桶ほどの円周に、高さは魔王の膝丈ほどと思ったよりも大きかったが、持てないほどの大きさではない。持ちやすいようにと金属の持ち手をひとまとめにしなおして、佐伯は魔王に渡してくれた。
きらきらと瞳を向けながら魔王は粉ミルクを受け取り、感謝を述べる・・・・・・はずだった。
佐伯が不自然に体を左に曲げている。不思議に思い歩み寄ろうとすると右腕を強い力で引っ張られる。右手には今貰った粉ミルクの缶が店の床とよろしくしている。
まさかと思いながら持ち上げようと試みるがびくともしない。
「$%&……」
「あら、いけない。男の子だし大丈夫だと思ったんだけど、そういえば3つあったのよね」
いけないいけない――と、佐伯は店の奥に小走りで戻っていった。
佐伯の後ろ姿を見送ると、パインは苦戦する魔王へ寄った。
「そんなにですか?」
「いや、これはヤベエぞ」
「魔王様が非力なだけではありませんか? 一つ貸してください」
あまりに驚いた表情の魔王に、半信半疑ながらパインも粉ミルクの缶の持ち手の一つに手を通す。
「っ!?」
重いというよりも、床と同化しているような感覚。生半可な力ではビクともしないようだ。
次こそはと気合いを入れ、両手で引き上げると、どうにか缶の半歩分動かすことができた。
だからといって、この粉ミルクの異常性が治るわけではない。
「おまたせー。あってよかったわ」
抱きかかえるように佐伯が持ち出してきたのは、古びた荷車だった。
「この店の前の店主が置いていったものなんだけど、まだ使えるはず」
その言葉通り、外見の割には佐伯が地面に降ろしたときギシリともしなかった。
これなら強度上問題はない。それは良いとして……。パインはもはや粉ミルクと呼ぶかも怪しい、謎の缶を見つめる。
「そうよね! 待って今載せるから」
悪戦苦闘する魔王に手を差し伸べる佐伯。
しかし、魔王は粉ミルクから手を放そうとはしなかった。
「$。%&@*。&%%$」
「? っ! まさか」
「なに?」
状況を把握できていない佐伯をよそに、パインの制止の甲斐もなく魔王は右手に力を込めた。
自由だった左手を魔王にとられ、右手も粉ミルクの缶で塞がれた佐伯は、身動きの取れぬままパインに助けを求める。
パインとしては、あと少しで魔王を地に伏させることができようというところを邪魔され、面白くない。
「わたし、わかる、しない、です」
明らかにわざとらしく首をかしげて見せることが彼女の答えだった。
佐伯は魔族コンビの少し後ろで行く末を見守ってきた女店主に助けを求めるが、満面の笑みで返される。
私が知るはずないだろう。知っていたらこんな状態にはなっているはずないだろうという顔だ。
それから魔王が佐伯の腕を解放したのは、佐伯がパインと魔王とに目を泳がせること4回目に差しかかろうというところ。
「%&@:+*」
言葉以上の態度を示す魔王。
ここまでしっかりと人に感謝の意を示した魔王の姿は初めて見たかもしれない、と魔王を横目にパインは複雑な思いを抱くのだった。
「よくわからないけど、はい、お望みの粉ミルク」
佐伯から渡された粉ミルクの缶は3つ。風呂桶ほどの円周に、高さは魔王の膝丈ほどと思ったよりも大きかったが、持てないほどの大きさではない。持ちやすいようにと金属の持ち手をひとまとめにしなおして、佐伯は魔王に渡してくれた。
きらきらと瞳を向けながら魔王は粉ミルクを受け取り、感謝を述べる・・・・・・はずだった。
佐伯が不自然に体を左に曲げている。不思議に思い歩み寄ろうとすると右腕を強い力で引っ張られる。右手には今貰った粉ミルクの缶が店の床とよろしくしている。
まさかと思いながら持ち上げようと試みるがびくともしない。
「$%&……」
「あら、いけない。男の子だし大丈夫だと思ったんだけど、そういえば3つあったのよね」
いけないいけない――と、佐伯は店の奥に小走りで戻っていった。
佐伯の後ろ姿を見送ると、パインは苦戦する魔王へ寄った。
「そんなにですか?」
「いや、これはヤベエぞ」
「魔王様が非力なだけではありませんか? 一つ貸してください」
あまりに驚いた表情の魔王に、半信半疑ながらパインも粉ミルクの缶の持ち手の一つに手を通す。
「っ!?」
重いというよりも、床と同化しているような感覚。生半可な力ではビクともしないようだ。
次こそはと気合いを入れ、両手で引き上げると、どうにか缶の半歩分動かすことができた。
だからといって、この粉ミルクの異常性が治るわけではない。
「おまたせー。あってよかったわ」
抱きかかえるように佐伯が持ち出してきたのは、古びた荷車だった。
「この店の前の店主が置いていったものなんだけど、まだ使えるはず」
その言葉通り、外見の割には佐伯が地面に降ろしたときギシリともしなかった。
これなら強度上問題はない。それは良いとして……。パインはもはや粉ミルクと呼ぶかも怪しい、謎の缶を見つめる。
「そうよね! 待って今載せるから」
悪戦苦闘する魔王に手を差し伸べる佐伯。
しかし、魔王は粉ミルクから手を放そうとはしなかった。
「$。%&@*。&%%$」
「? っ! まさか」
「なに?」
状況を把握できていない佐伯をよそに、パインの制止の甲斐もなく魔王は右手に力を込めた。
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