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~ 最終章 されど御曹司は ~
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久我はそのままの姿勢で、スーッと大きく息を吸い込む。
「玲旺の髪、凄く良い匂いがする」
覆いかぶさるように包み込まれた玲旺は、くすぐったそうに身をよじった。
「久我さんちのシャンプーなんだから、自分の髪だって同じ匂いでしょ」
「でも、玲旺は特別良い匂い」
まるで玲旺の成分を補給するかのように、久我は深呼吸を繰り返す。
キリがないなと思った玲旺は、久我を押し戻しながらバスルームを指差した。
「もうお湯が溜まった頃だと思う。食事の前に、サッパリして来たら?」
心なしか得意気に玲旺が胸を反らしたので、「褒めて欲しい」と言う意図を久我は察したのだろう。まるで子どもにするように、大袈裟に目を見開いてみせた。
「玲旺が風呂を沸かしておいてくれたの? 凄いな。ありがとう」
久我に満面の笑みで頭を撫でられ、玲旺はより一層得意顔になる。それが可愛くてたまらないと言うように、久我は玲旺の頬を両手で包み込んだ。
「一緒に入る?」
「俺は入ったばかりだからいいよ。それより、早くあの書類の説明を聞きたい」
甘い空気にはならず、きっぱりと断られてしまい、久我は見るからにガックリと肩を落とした。
「風呂に入った後、ちゃんと説明するのに」
「だって、一緒に入ったら長くなるから」
「長くなる」の部分を色々想像してしまった玲旺が、少しだけ頬を赤らめる。それを見逃さない久我が、試すように玲旺の顔を覗き込んだ。
「なんで長くなるって思うの?」
「なんでって」
だって、色んなことするじゃん。と、玲旺がもごもご答える。久我はニヤッと右の口角だけを上げ、玲旺のゆったりしたTシャツに手をかけた。
「良いじゃん、色々しようよ。ほら、脱いで」
「だから、俺はもう風呂に入ったんだってば」
「じゃあ、俺の背中を流してよ。玲旺は服着たままでいいからさ」
それなら……と玲旺は渋々うなずき、久我のあとに続いて脱衣所に向かう。
久我がシャツを脱ぐと、服の下に隠されていた筋肉が露わになった。
腕を動かすたびに僧帽筋が盛り上がり、「いつもあの背中に爪を立てているんだな」などと考えてしまった玲旺は、慌てて首を振った。
下着まで脱ぎ去った久我の裸体は良く出来たデッサン人形のようで、玲旺は惚れ惚れしながら溜め息をつく。
「俺も鍛えようかな」
あまり厚みの無い自分の胸板を、悲し気に玲旺が撫でた。
「今度一緒にジムに行こうか」
言いながら久我が、頭から思い切りシャワーを浴びる。高い位置から勢いよく放たれた水しぶきが、玲旺の方にまで届いた。
「ちょっと久我さん、俺のシャツが濡れちゃうじゃん」
「だったら、脱げばいいのに」
いつもセンターで分かれている久我の前髪が、濡れたせいで目が隠れるほどに下りている。その髪の隙間から覗く熱い眼差しに、ハッと息を呑んだ。
魅入ってしまい動けなくなった玲旺の手首を、久我が掴んで引き寄せる。もう片方の手を玲旺の腰に回し、剥き出しになっている自分の下半身に擦りつけるように押し当てた。
降り注ぐシャワーの下に引き込まれ、視界いっぱいに久我の顔が迫る。みるみる水分を含んでいくTシャツとスエットパンツが、しっとりと玲旺の肌に張り付いた。
「乳首が透けてる。エロいね」
互いの唇が触れるか触れないかくらいの位置で久我が喋るので、吐息も唇の動きもそのまま玲旺に伝わってくる。
濡れたシャツの上から胸の尖りを指先で弾かれ、玲旺の口から「んんっ」と艶めかしい声が漏れた。
その漏れた声すら外に逃がすのは惜しいと言うように、獣と化した久我が玲旺の唇を奪うように塞いだ。
「玲旺の髪、凄く良い匂いがする」
覆いかぶさるように包み込まれた玲旺は、くすぐったそうに身をよじった。
「久我さんちのシャンプーなんだから、自分の髪だって同じ匂いでしょ」
「でも、玲旺は特別良い匂い」
まるで玲旺の成分を補給するかのように、久我は深呼吸を繰り返す。
キリがないなと思った玲旺は、久我を押し戻しながらバスルームを指差した。
「もうお湯が溜まった頃だと思う。食事の前に、サッパリして来たら?」
心なしか得意気に玲旺が胸を反らしたので、「褒めて欲しい」と言う意図を久我は察したのだろう。まるで子どもにするように、大袈裟に目を見開いてみせた。
「玲旺が風呂を沸かしておいてくれたの? 凄いな。ありがとう」
久我に満面の笑みで頭を撫でられ、玲旺はより一層得意顔になる。それが可愛くてたまらないと言うように、久我は玲旺の頬を両手で包み込んだ。
「一緒に入る?」
「俺は入ったばかりだからいいよ。それより、早くあの書類の説明を聞きたい」
甘い空気にはならず、きっぱりと断られてしまい、久我は見るからにガックリと肩を落とした。
「風呂に入った後、ちゃんと説明するのに」
「だって、一緒に入ったら長くなるから」
「長くなる」の部分を色々想像してしまった玲旺が、少しだけ頬を赤らめる。それを見逃さない久我が、試すように玲旺の顔を覗き込んだ。
「なんで長くなるって思うの?」
「なんでって」
だって、色んなことするじゃん。と、玲旺がもごもご答える。久我はニヤッと右の口角だけを上げ、玲旺のゆったりしたTシャツに手をかけた。
「良いじゃん、色々しようよ。ほら、脱いで」
「だから、俺はもう風呂に入ったんだってば」
「じゃあ、俺の背中を流してよ。玲旺は服着たままでいいからさ」
それなら……と玲旺は渋々うなずき、久我のあとに続いて脱衣所に向かう。
久我がシャツを脱ぐと、服の下に隠されていた筋肉が露わになった。
腕を動かすたびに僧帽筋が盛り上がり、「いつもあの背中に爪を立てているんだな」などと考えてしまった玲旺は、慌てて首を振った。
下着まで脱ぎ去った久我の裸体は良く出来たデッサン人形のようで、玲旺は惚れ惚れしながら溜め息をつく。
「俺も鍛えようかな」
あまり厚みの無い自分の胸板を、悲し気に玲旺が撫でた。
「今度一緒にジムに行こうか」
言いながら久我が、頭から思い切りシャワーを浴びる。高い位置から勢いよく放たれた水しぶきが、玲旺の方にまで届いた。
「ちょっと久我さん、俺のシャツが濡れちゃうじゃん」
「だったら、脱げばいいのに」
いつもセンターで分かれている久我の前髪が、濡れたせいで目が隠れるほどに下りている。その髪の隙間から覗く熱い眼差しに、ハッと息を呑んだ。
魅入ってしまい動けなくなった玲旺の手首を、久我が掴んで引き寄せる。もう片方の手を玲旺の腰に回し、剥き出しになっている自分の下半身に擦りつけるように押し当てた。
降り注ぐシャワーの下に引き込まれ、視界いっぱいに久我の顔が迫る。みるみる水分を含んでいくTシャツとスエットパンツが、しっとりと玲旺の肌に張り付いた。
「乳首が透けてる。エロいね」
互いの唇が触れるか触れないかくらいの位置で久我が喋るので、吐息も唇の動きもそのまま玲旺に伝わってくる。
濡れたシャツの上から胸の尖りを指先で弾かれ、玲旺の口から「んんっ」と艶めかしい声が漏れた。
その漏れた声すら外に逃がすのは惜しいと言うように、獣と化した久我が玲旺の唇を奪うように塞いだ。
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