243 / 302
~ 第三章 反撃の狼煙 ~
練習は本番のように。本番は練習のように。⑥
しおりを挟む
今が旬の超人気若手女優と相対しても、クオリティの高いパフォーマンスでインパクト勝負に競り勝った宮原。
彼がトップバッターの大役を果たしてくれたおかげで、今のところ生徒たちも委縮することなくランウェイを歩くことが出来ている。
『桜華生、みんな堂々としてて初舞台とは思えないね。知らない子ばっかりだけど、モデルの卵なのかな。人気出そうな子が多い』
『フローズンレインは統一感あるよね。でも、推しが出てるからクリアデイに五票全部入れちゃうけど』
『クリアデイはあんま服の印象残らないな。欲しいと思うのはフローズンレインの服ばっか』
『クリアデイは出演者豪華なんだよなぁ。フローズンレインの目玉って、氷雨と南野だけなの?』
ショーの完成度ではこちらに軍配が上がっているものの、やはり生徒たちの知名度の低さは投票という条件において不利だった。
シリウス所属のモデルや氷雨と南野で手堅く票を取り、サプライズ登場する湯月でどこまで追い上げられるだろうか。
そうなると、勝敗を分けるのは黛と深影のコンビかもしれない。彼らが二人揃って歩けば、宮原のインパクトすら上回る。
玲旺は、起死回生の鍵を握る黛の様子をこっそり窺った。練習では再び歩けるようになっていたが、本番でどうなるかわからない。
敢えて態度や口には出さないが、誰しもが黛のコンディションを慮っていた。
そしておそらく、誰よりも黛本人が全力を出し切りたいと願っているだろう。彼は食い入るように舞台裏モニターを見つめ、集中しながら何とか心を落ち着かせようとしていた。
異なるブランドが交互に新作を発表する、異色のショーは順調に進行していく。
SNSのトレンドワードはフローズンレインやクリアデイ、出演者の名前などショー関連の単語が占め、注目度の高さがうかがえた。
ショーの様子をパソコン画面で確認しながら唸る玲旺の横で、氷雨も同じように真剣に見入っている。
「ネガティブなコメントもあるよ。今は見ない方がいいんじゃないの」
「前に言ったでしょ、僕はタフだって。こんなことぐらいで影響されないわよ。それより、やっぱり視聴者を素人だって侮っちゃダメね。結構核心を突いたコメント多いじゃない」
画面の右横に流れるコメントを見ながら氷雨がニヤッと笑う。
「桜華生を正当に評価してるし、クリアデイ側の技術不足も見抜いてる。でも、技術を補う魅力もちゃんと感じてるから、クリアデイに票を入れちゃうのねぇ。なんだかリアルな反応で面白いわ」
「だけど、票の移動はラストまで可能だからね。今日の氷雨さんは最強だから、永遠さんと一緒にクリアデイに流れた票を奪い返してよ」
「今日も最強でしょ。票を奪い返すつもりだけどさ、服の好みもあるから、こればっかりは読めないよね」
氷雨と快晴は趣向が似ている部分も多いが、発表した服のテイストは真逆だった。
ハロウィンを意識したフローズンレインの新作は、氷雨の真骨頂と言っても過言ではない。そもそもフローズンレインのブランドコンセプトは『日常に少しの毒を』だ。
齧りかけの林檎のような、髑髏の空洞のような、調律の狂ったピアノのような、割れた砂時計のような。
不安定で不完全な美から目が離せなくなる。
黒や紫、赤を基調としたモード系の服は、ピリッと痺れる甘い刺激を惜しげもなく捧げてくれた。
対するクリアデイのブランドコンセプトは、『ひっくり返したおもちゃ箱』
新作はどれも今年らしいチェック柄を使用し、可愛らしくてポップなデザインだった。刺激とは程遠く攻撃性は皆無で、秋ならではのレジャーやインテリジェンスなイベントに出かけるのにピッタリな、元気の出る色合いが目にも楽しい。
似て非なる二人の対比が鮮明となる。
まるで毒と薬だが、それも表裏一体だ。
毒は薬になることもあるし、薬は毒になることもあるだろう。
玲旺は二匹の蛇が輪になって、互いの尻尾を食む姿を連想する。
氷雨と快晴が、ウロボロスのように思えて仕方なかった。
彼がトップバッターの大役を果たしてくれたおかげで、今のところ生徒たちも委縮することなくランウェイを歩くことが出来ている。
『桜華生、みんな堂々としてて初舞台とは思えないね。知らない子ばっかりだけど、モデルの卵なのかな。人気出そうな子が多い』
『フローズンレインは統一感あるよね。でも、推しが出てるからクリアデイに五票全部入れちゃうけど』
『クリアデイはあんま服の印象残らないな。欲しいと思うのはフローズンレインの服ばっか』
『クリアデイは出演者豪華なんだよなぁ。フローズンレインの目玉って、氷雨と南野だけなの?』
ショーの完成度ではこちらに軍配が上がっているものの、やはり生徒たちの知名度の低さは投票という条件において不利だった。
シリウス所属のモデルや氷雨と南野で手堅く票を取り、サプライズ登場する湯月でどこまで追い上げられるだろうか。
そうなると、勝敗を分けるのは黛と深影のコンビかもしれない。彼らが二人揃って歩けば、宮原のインパクトすら上回る。
玲旺は、起死回生の鍵を握る黛の様子をこっそり窺った。練習では再び歩けるようになっていたが、本番でどうなるかわからない。
敢えて態度や口には出さないが、誰しもが黛のコンディションを慮っていた。
そしておそらく、誰よりも黛本人が全力を出し切りたいと願っているだろう。彼は食い入るように舞台裏モニターを見つめ、集中しながら何とか心を落ち着かせようとしていた。
異なるブランドが交互に新作を発表する、異色のショーは順調に進行していく。
SNSのトレンドワードはフローズンレインやクリアデイ、出演者の名前などショー関連の単語が占め、注目度の高さがうかがえた。
ショーの様子をパソコン画面で確認しながら唸る玲旺の横で、氷雨も同じように真剣に見入っている。
「ネガティブなコメントもあるよ。今は見ない方がいいんじゃないの」
「前に言ったでしょ、僕はタフだって。こんなことぐらいで影響されないわよ。それより、やっぱり視聴者を素人だって侮っちゃダメね。結構核心を突いたコメント多いじゃない」
画面の右横に流れるコメントを見ながら氷雨がニヤッと笑う。
「桜華生を正当に評価してるし、クリアデイ側の技術不足も見抜いてる。でも、技術を補う魅力もちゃんと感じてるから、クリアデイに票を入れちゃうのねぇ。なんだかリアルな反応で面白いわ」
「だけど、票の移動はラストまで可能だからね。今日の氷雨さんは最強だから、永遠さんと一緒にクリアデイに流れた票を奪い返してよ」
「今日も最強でしょ。票を奪い返すつもりだけどさ、服の好みもあるから、こればっかりは読めないよね」
氷雨と快晴は趣向が似ている部分も多いが、発表した服のテイストは真逆だった。
ハロウィンを意識したフローズンレインの新作は、氷雨の真骨頂と言っても過言ではない。そもそもフローズンレインのブランドコンセプトは『日常に少しの毒を』だ。
齧りかけの林檎のような、髑髏の空洞のような、調律の狂ったピアノのような、割れた砂時計のような。
不安定で不完全な美から目が離せなくなる。
黒や紫、赤を基調としたモード系の服は、ピリッと痺れる甘い刺激を惜しげもなく捧げてくれた。
対するクリアデイのブランドコンセプトは、『ひっくり返したおもちゃ箱』
新作はどれも今年らしいチェック柄を使用し、可愛らしくてポップなデザインだった。刺激とは程遠く攻撃性は皆無で、秋ならではのレジャーやインテリジェンスなイベントに出かけるのにピッタリな、元気の出る色合いが目にも楽しい。
似て非なる二人の対比が鮮明となる。
まるで毒と薬だが、それも表裏一体だ。
毒は薬になることもあるし、薬は毒になることもあるだろう。
玲旺は二匹の蛇が輪になって、互いの尻尾を食む姿を連想する。
氷雨と快晴が、ウロボロスのように思えて仕方なかった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
『田中のおじさま♡』~今夜も愛しのおじさまと濃厚ラブえっち♡♡♡
そらも
BL
過去にとある出逢いを経て知り合った『本名さえもちゃんとわかってない』自分よりも三十二歳も年上のバツイチ絶倫変態スケベおじさまとの濃厚セックスに毎夜明け暮れている、自称平凡普通大学生くんの夜のお話♡
おじさまは大学生くんにぞっこんラブだし、大学生くんもハジメテを捧げたおじさまが大大大っだ~いすきでとってもラブラブな二人でございますぞ♪
久しぶりの年上×年下の歳の差モノ♡ 全体的に変態ちっくですのでどうぞご注意を!
※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
専業種夫
カタナカナタ
BL
精力旺盛な彼氏の性処理を完璧にこなす「専業種夫」。彼の徹底された性行為のおかげで、彼氏は外ではハイクラスに働き、帰宅するとまた彼を激しく犯す。そんなゲイカップルの日々のルーティーンを描く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる