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~ 第二章 賽は投げられた ~
始動②
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玲旺は赤くなった顔を冷ますように、手でパタパタ扇いで風を送る。
あのスタジオにもし久我がいたらと想像するだけで、何だかくすぐったくて落ち着かなくなる。
そんな様子を見た久我は、くすっと笑いながら前に向き直り、車を発進させた。
「仕方ない。それなら、雑誌を楽しみにしておくか」
「ヘンな顔で写ってても、笑わないでね」
「笑う訳ないだろ。玲旺の表情なら、どんな瞬間だって全部見ていたいのに。絶対可愛いに決まってる」
久我がさらりと情熱的なことを言うので、玲旺の体温がグンと上がってしまう。
「からかわないでよ」
「本気で言ってるんだけどな。ただ、久々に氷雨が表紙に登場するし、玲旺の話題性とイベント直前の注目度で、雑誌が品薄状態になるんじゃないか心配だよ。今から予約しておかないと」
真顔で入手困難になることを懸念する久我に、玲旺は呆れたような視線を送る。
「湯月さんが献本くれるって言ってたから、大丈夫でしょ」
「献本程度じゃ全然足りないだろう」
「何冊買うつもりなの」
「額縁に入れて飾る用と、スクラップブッキング用、それに観賞用と保存用。あとは予備に、最低五冊は欲しいかな」
久我があまりにもキッパリ言い切るので、玲旺は照れながら口をつぐんだ。だがもし久我が雑誌に載ったとしたら、確かに最低五冊は欲しい。
「藤井はもっと買うかもなぁ」
ははは。と楽しそうに笑う久我は、やはりいつも通りに見えた。
渋滞に巻き込まれることもなく、車は順調に進み桜華大を目指す。
桜華大が正式に協賛を表明すると共に、敷地内にある施設を練習場所として提供してくれたのだ。日程に余裕があるならいざ知らず、大人数でのレッスン場を毎回確保するのは非常に難しいだろうと予想していたので、その申し出は非常に有難かった。
生徒たちが放課後そのまま校内に残ればいいだけなのも、何かと安心だ。部外者も易々入っては来れないので、マスコミ対策にもなる。
いつものように職員用の駐車場に車を停め、関係者を示すネームタグを首から下げる。何度も来ているうちに顔見知りになった守衛と挨拶を交わしてから、高等部の校舎ではなく大学構内にある講堂を目指した。
講堂はオーディションを行ったレッスン室より格段に広く、本格的な舞台設備とランウェイがあるらしい。練習場所としてはこれ以上ない程の恵まれた環境だ。
いよいよ動き出すんだなと噛みしめながら、玲旺は緊張した面持ちで廊下を進み、久我に問いかける。
「今回オファーした二十名の生徒のうち、何人残ってくれたの?」
あのスタジオにもし久我がいたらと想像するだけで、何だかくすぐったくて落ち着かなくなる。
そんな様子を見た久我は、くすっと笑いながら前に向き直り、車を発進させた。
「仕方ない。それなら、雑誌を楽しみにしておくか」
「ヘンな顔で写ってても、笑わないでね」
「笑う訳ないだろ。玲旺の表情なら、どんな瞬間だって全部見ていたいのに。絶対可愛いに決まってる」
久我がさらりと情熱的なことを言うので、玲旺の体温がグンと上がってしまう。
「からかわないでよ」
「本気で言ってるんだけどな。ただ、久々に氷雨が表紙に登場するし、玲旺の話題性とイベント直前の注目度で、雑誌が品薄状態になるんじゃないか心配だよ。今から予約しておかないと」
真顔で入手困難になることを懸念する久我に、玲旺は呆れたような視線を送る。
「湯月さんが献本くれるって言ってたから、大丈夫でしょ」
「献本程度じゃ全然足りないだろう」
「何冊買うつもりなの」
「額縁に入れて飾る用と、スクラップブッキング用、それに観賞用と保存用。あとは予備に、最低五冊は欲しいかな」
久我があまりにもキッパリ言い切るので、玲旺は照れながら口をつぐんだ。だがもし久我が雑誌に載ったとしたら、確かに最低五冊は欲しい。
「藤井はもっと買うかもなぁ」
ははは。と楽しそうに笑う久我は、やはりいつも通りに見えた。
渋滞に巻き込まれることもなく、車は順調に進み桜華大を目指す。
桜華大が正式に協賛を表明すると共に、敷地内にある施設を練習場所として提供してくれたのだ。日程に余裕があるならいざ知らず、大人数でのレッスン場を毎回確保するのは非常に難しいだろうと予想していたので、その申し出は非常に有難かった。
生徒たちが放課後そのまま校内に残ればいいだけなのも、何かと安心だ。部外者も易々入っては来れないので、マスコミ対策にもなる。
いつものように職員用の駐車場に車を停め、関係者を示すネームタグを首から下げる。何度も来ているうちに顔見知りになった守衛と挨拶を交わしてから、高等部の校舎ではなく大学構内にある講堂を目指した。
講堂はオーディションを行ったレッスン室より格段に広く、本格的な舞台設備とランウェイがあるらしい。練習場所としてはこれ以上ない程の恵まれた環境だ。
いよいよ動き出すんだなと噛みしめながら、玲旺は緊張した面持ちで廊下を進み、久我に問いかける。
「今回オファーした二十名の生徒のうち、何人残ってくれたの?」
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