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~ 第二章 賽は投げられた ~
諸刃の剣⑨
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「深影さん抜きじゃ、桐ケ谷の言った『鮮烈な新人の登場で票の巻き返しを図る』って案が根底から覆されるな。他の生徒もレベルは高いが、鮮烈と言うにはインパクトに欠ける」
せっかく話が進み出したところだったのにと、久我が苦々しい表情で乱暴に前髪をかき上げた。
「事務所からNGが出たの? もしかして、快晴側で既に出演が決まってるとか」
氷雨が冷ややかな声色で質問を投げかけると、緑川は違う違うと慌てて首を振った。
「ごめんなさいね、言い方が悪かったわ。NGと言う訳ではないの。ただ、事務所からの回答は、『もう彼女はうちと無関係なので、ご自由にどうぞ』ですって。……彼女、少し前に所属事務所を解雇されていたらしいのよ」
「深影さん、どこの芸能事務所だったの?」
「ホークスアイ」
答えを聞いた氷雨は、「うわぁ、すっごい大手じゃん」と身震いする。
そんなやり取りを聞きながら、玲旺は「反対された訳ではないなら、出演は可能だな」と胸を撫で下ろした。解雇の理由は少し気になるところだが、事務所に許可を取らねばならない手間が省けて、むしろ好都合だとさえ思った。
しかし問題はそう単純でもないようで、緑川はこめかみを押さえて困ったような顔をする。
「参ったわね。芸能科在籍条件の一つが、『プロダクションか劇団に所属していること』なのよ。今すぐに退学処分ということはないけれど、早々に新しい所属先を見つけて貰わないと。規定違反者に、学校から出演許可を出す訳にはいかないわ。まったく、どうして深影さんは相談してくれなかったのかしら」
どこかに所属していなければならないと言う大前提を満たせていないと、イベント出演どころか学校に在籍する事すら危ういらしい。
今日出会ったばかりだが、深影の印象は「真面目で正義感が強そうなしっかり者」だ。それなのに解雇されたことを今まで報告できなかった心中を察すると、少し息が苦しくなってくる。
「じゃあ、氷雨さんの事務所に迎え入れてあげたら? 才能のある子だから、社長も喜ぶんじゃない」
全方向の問題を解決する、誰も困らない名案だと思ったのだが、氷雨は呆れたように肩をすくめた。
「クビになった理由によるわ。どれだけ才能があったって、超問題児じゃ困るのよ。簡単には紹介できないでしょ」
「超問題児って、そんなわけないじゃん。深影さんは見るからに優等生ぽかったし」
窘められた玲旺は、口をへの字に曲げて反発の意思を示す。それに対抗するように、氷雨は玲旺に向かって人差し指を立て、「Non,non.」と指を左右に振った。
せっかく話が進み出したところだったのにと、久我が苦々しい表情で乱暴に前髪をかき上げた。
「事務所からNGが出たの? もしかして、快晴側で既に出演が決まってるとか」
氷雨が冷ややかな声色で質問を投げかけると、緑川は違う違うと慌てて首を振った。
「ごめんなさいね、言い方が悪かったわ。NGと言う訳ではないの。ただ、事務所からの回答は、『もう彼女はうちと無関係なので、ご自由にどうぞ』ですって。……彼女、少し前に所属事務所を解雇されていたらしいのよ」
「深影さん、どこの芸能事務所だったの?」
「ホークスアイ」
答えを聞いた氷雨は、「うわぁ、すっごい大手じゃん」と身震いする。
そんなやり取りを聞きながら、玲旺は「反対された訳ではないなら、出演は可能だな」と胸を撫で下ろした。解雇の理由は少し気になるところだが、事務所に許可を取らねばならない手間が省けて、むしろ好都合だとさえ思った。
しかし問題はそう単純でもないようで、緑川はこめかみを押さえて困ったような顔をする。
「参ったわね。芸能科在籍条件の一つが、『プロダクションか劇団に所属していること』なのよ。今すぐに退学処分ということはないけれど、早々に新しい所属先を見つけて貰わないと。規定違反者に、学校から出演許可を出す訳にはいかないわ。まったく、どうして深影さんは相談してくれなかったのかしら」
どこかに所属していなければならないと言う大前提を満たせていないと、イベント出演どころか学校に在籍する事すら危ういらしい。
今日出会ったばかりだが、深影の印象は「真面目で正義感が強そうなしっかり者」だ。それなのに解雇されたことを今まで報告できなかった心中を察すると、少し息が苦しくなってくる。
「じゃあ、氷雨さんの事務所に迎え入れてあげたら? 才能のある子だから、社長も喜ぶんじゃない」
全方向の問題を解決する、誰も困らない名案だと思ったのだが、氷雨は呆れたように肩をすくめた。
「クビになった理由によるわ。どれだけ才能があったって、超問題児じゃ困るのよ。簡単には紹介できないでしょ」
「超問題児って、そんなわけないじゃん。深影さんは見るからに優等生ぽかったし」
窘められた玲旺は、口をへの字に曲げて反発の意思を示す。それに対抗するように、氷雨は玲旺に向かって人差し指を立て、「Non,non.」と指を左右に振った。
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