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~ 第二章 賽は投げられた ~
第十九話 諸刃の剣
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一人が歩き始めると、十秒ほどの間隔を空けて次の生徒がまた歩き出す。
入学してから一ヶ月そこそこと言うこともあって、一年生のウォーキングはまだ少しぎこちないものだった。
それでも懸命に歩く姿は、好感が持てる。
今度の対決は投票と言う要素があるため、「応援したくなる」というポイントはかなり重要なのではないか。そうなると、百点満点のウォーキングよりも、等身大の高校生が頑張っている姿の方が観客に響くかもしれない。
それをそのまま氷雨に伝えたら、渋い顔をされてしまった。
「キミの言いたいことも解るけど、文化祭みたいなノリじゃ困るのよ。やっぱり、一定以上のレベルには達していてもらわないと。応援したいって思わせる要素も良いけど、あくまでも服を魅せてくれる子を探してね」
それもそうかと思いながら、目まぐるしく入れ替わる生徒たちのウォーキングをひたすらチェックし続ける。
氷雨が完璧な手本を見せてくれたおかげで、それほど専門知識のない玲旺でも生徒らのパフォーマンスに優劣を付けるのは難しくなかった。
男女でフォームの違いはあれど、「氷雨のウォーキングになるべく近い子を」と思えば、自然と選び分けることが出来る。
やはり餅は餅屋と言うべきか、先ほどから目に留まるのは、タレントコースの生徒より圧倒的にモデルコースの生徒が多かった。
そんな中、ランウェイを歩いている生徒より、出番を待つ一人の少年が気になって玲旺はそちらに目を向ける。
その場にまっすぐ立っているだけなのに、その姿はとても絵になっていた。
身長は恐らく、百八十センチを優に超えているだろう。その割に筋肉は少なく、病的なまでに肌は青白い。どこか陰のある儚げな印象で、独特の雰囲気があった。
「これは」と思いながら期待を込めて見ていたのだが、実際に彼が歩き出すと肩透かしを食らってしまう。
最初の二歩目までは非常に良かったのだが、彼の視線が玲旺たちを捕らえた瞬間、よろよろとバランスを崩した。
ウォーキングが上手いとか下手とか以前の問題で、緊張しているのか真っ直ぐ歩くのがやっとの状態だ。
真剣なのは伝わるのだが、歩き方はギクシャクしていてたどたどしく、とても酷い。
玲旺は手元の資料に目を落とす。
「黛蒼汰……」
モデルではなくタレントコースの生徒だった。技術だけを見れば真っ先に落とすべきなのだが、あの存在感のある立ち姿はどうにも気になる。
少し迷ったが、玲旺はメモに彼の名前を書き残した。
その後に続いた二年生のパフォーマンスは、さすがに全員が安定していた。
やはりここでも群を抜くのはモデルコースの生徒らで、中でも氷雨にウォーキングを見せてくれと懇願した深影は、即戦力どころかプロと遜色のない実力だった。
「なるほどねぇ」
深影の歩きを見た氷雨が、意味深に口角を上げる。
玲旺たちがメモを取っているのは生徒も気になるようで、チラチラとこちらをうかがう視線を何度も感じた。
入学してから一ヶ月そこそこと言うこともあって、一年生のウォーキングはまだ少しぎこちないものだった。
それでも懸命に歩く姿は、好感が持てる。
今度の対決は投票と言う要素があるため、「応援したくなる」というポイントはかなり重要なのではないか。そうなると、百点満点のウォーキングよりも、等身大の高校生が頑張っている姿の方が観客に響くかもしれない。
それをそのまま氷雨に伝えたら、渋い顔をされてしまった。
「キミの言いたいことも解るけど、文化祭みたいなノリじゃ困るのよ。やっぱり、一定以上のレベルには達していてもらわないと。応援したいって思わせる要素も良いけど、あくまでも服を魅せてくれる子を探してね」
それもそうかと思いながら、目まぐるしく入れ替わる生徒たちのウォーキングをひたすらチェックし続ける。
氷雨が完璧な手本を見せてくれたおかげで、それほど専門知識のない玲旺でも生徒らのパフォーマンスに優劣を付けるのは難しくなかった。
男女でフォームの違いはあれど、「氷雨のウォーキングになるべく近い子を」と思えば、自然と選び分けることが出来る。
やはり餅は餅屋と言うべきか、先ほどから目に留まるのは、タレントコースの生徒より圧倒的にモデルコースの生徒が多かった。
そんな中、ランウェイを歩いている生徒より、出番を待つ一人の少年が気になって玲旺はそちらに目を向ける。
その場にまっすぐ立っているだけなのに、その姿はとても絵になっていた。
身長は恐らく、百八十センチを優に超えているだろう。その割に筋肉は少なく、病的なまでに肌は青白い。どこか陰のある儚げな印象で、独特の雰囲気があった。
「これは」と思いながら期待を込めて見ていたのだが、実際に彼が歩き出すと肩透かしを食らってしまう。
最初の二歩目までは非常に良かったのだが、彼の視線が玲旺たちを捕らえた瞬間、よろよろとバランスを崩した。
ウォーキングが上手いとか下手とか以前の問題で、緊張しているのか真っ直ぐ歩くのがやっとの状態だ。
真剣なのは伝わるのだが、歩き方はギクシャクしていてたどたどしく、とても酷い。
玲旺は手元の資料に目を落とす。
「黛蒼汰……」
モデルではなくタレントコースの生徒だった。技術だけを見れば真っ先に落とすべきなのだが、あの存在感のある立ち姿はどうにも気になる。
少し迷ったが、玲旺はメモに彼の名前を書き残した。
その後に続いた二年生のパフォーマンスは、さすがに全員が安定していた。
やはりここでも群を抜くのはモデルコースの生徒らで、中でも氷雨にウォーキングを見せてくれと懇願した深影は、即戦力どころかプロと遜色のない実力だった。
「なるほどねぇ」
深影の歩きを見た氷雨が、意味深に口角を上げる。
玲旺たちがメモを取っているのは生徒も気になるようで、チラチラとこちらをうかがう視線を何度も感じた。
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