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~ 第二章 賽は投げられた ~
強引な招待状⑥
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全くもってその通りだったが、玲旺は首をすくめながら小さな抵抗を試みた。
「で、でも。一ヶ月あれば……」
「ファッションショーって、ただ服を着て歩けばいいってもんじゃないのよ? どんな順番で新作の服を登場させるか。音楽は、照明は。モデルだって、一人ずつ歩くとは限らないからね。色違いコーデで、一度に何人かいっぺんにランウェイに出ることもある。そんな時のフォーメーションも決めなきゃ。それに、モデルの体形に合わせて服を調整する作業もあるし、ちょっと考えただけでも準備しなきゃいけないこと山盛りなワケ」
氷雨が思いつくままやるべきことを列挙し、指折り数えていく。到底指十本では足らず、玲旺は気が遠くなった。
「ごめん、ちょっと簡単に考え過ぎてた」
「でしょー?」
浅はかだったと頭を垂れる玲旺に、氷雨は満足そうに微笑んで頷く。それから「でもねぇ」と言葉をつづけ、口角を上げた。
「最終的にキミが『やる』って言うなら、僕は従うよ。例え死ぬほど嫌だったとしてもね」
「えっ」
俯いていた玲旺は、勢いよく顔を上げる。隣に座る久我も、氷雨の意見を肯定するように「ああ」と相槌を打った。
「もし桐ケ谷が受けて立つと言うのなら、一ヵ月の準備期間でなんとかしてみせるよ。ただ、あちらが無茶を言っているのは誰が見ても明白だ。今回の申し出を断っても、業界での評価は下がらないだろう。敢えてリスクを取る必要はないが……どうする?」
判断を委ねられた玲旺は、膝の上で握った拳をジッと見つめた。こめかみから汗が伝う。
そんな張り詰めた空気の中、ふいにドアを叩く音がした。
「玲旺様。先ほどクリアデイから、イベントの正式なオファーが届きました」
言いながら部屋に入って来た藤井は、緊迫した空気を感じ取ったのか三人の顔を順に見た。最後に久我と目線を合わせ、藤井は渋い表情をする。
「……まさか、受けるつもりじゃないよな?」
「俺も氷雨も、桐ケ谷の判断に従おうと思っているよ」
久我の返答を聞いた藤井は信じられないというように目を見開き、ソファに座る玲旺の前に跪いて懇願した。
「玲旺様、受けるべきではございません。丸腰で敵陣に乗り込むようなものです。どんな罠が仕掛けられているか……。こちらをご覧ください。一見我々に配慮しているように見えますが、実際は酷く不利な条件です」
藤井はクリアデイから送られてきた企画書入りの封筒を玲旺に差し出す。それを受け取った玲旺の喉が、ゴクリと鳴った。
「で、でも。一ヶ月あれば……」
「ファッションショーって、ただ服を着て歩けばいいってもんじゃないのよ? どんな順番で新作の服を登場させるか。音楽は、照明は。モデルだって、一人ずつ歩くとは限らないからね。色違いコーデで、一度に何人かいっぺんにランウェイに出ることもある。そんな時のフォーメーションも決めなきゃ。それに、モデルの体形に合わせて服を調整する作業もあるし、ちょっと考えただけでも準備しなきゃいけないこと山盛りなワケ」
氷雨が思いつくままやるべきことを列挙し、指折り数えていく。到底指十本では足らず、玲旺は気が遠くなった。
「ごめん、ちょっと簡単に考え過ぎてた」
「でしょー?」
浅はかだったと頭を垂れる玲旺に、氷雨は満足そうに微笑んで頷く。それから「でもねぇ」と言葉をつづけ、口角を上げた。
「最終的にキミが『やる』って言うなら、僕は従うよ。例え死ぬほど嫌だったとしてもね」
「えっ」
俯いていた玲旺は、勢いよく顔を上げる。隣に座る久我も、氷雨の意見を肯定するように「ああ」と相槌を打った。
「もし桐ケ谷が受けて立つと言うのなら、一ヵ月の準備期間でなんとかしてみせるよ。ただ、あちらが無茶を言っているのは誰が見ても明白だ。今回の申し出を断っても、業界での評価は下がらないだろう。敢えてリスクを取る必要はないが……どうする?」
判断を委ねられた玲旺は、膝の上で握った拳をジッと見つめた。こめかみから汗が伝う。
そんな張り詰めた空気の中、ふいにドアを叩く音がした。
「玲旺様。先ほどクリアデイから、イベントの正式なオファーが届きました」
言いながら部屋に入って来た藤井は、緊迫した空気を感じ取ったのか三人の顔を順に見た。最後に久我と目線を合わせ、藤井は渋い表情をする。
「……まさか、受けるつもりじゃないよな?」
「俺も氷雨も、桐ケ谷の判断に従おうと思っているよ」
久我の返答を聞いた藤井は信じられないというように目を見開き、ソファに座る玲旺の前に跪いて懇願した。
「玲旺様、受けるべきではございません。丸腰で敵陣に乗り込むようなものです。どんな罠が仕掛けられているか……。こちらをご覧ください。一見我々に配慮しているように見えますが、実際は酷く不利な条件です」
藤井はクリアデイから送られてきた企画書入りの封筒を玲旺に差し出す。それを受け取った玲旺の喉が、ゴクリと鳴った。
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