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~ 第一章 売られた喧嘩 ~
油断大敵③
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里中に見送られ、中目黒店を後にする。玲旺は車内で紅林の動画を改めて見返し、うんざりしたように重い息を吐き出した。
「これ、今日の議題に上るかな」
「どうでしょう。社長には先ほど報告しましたが、まだ本社が対応するような案件ではないという雰囲気でした」
「なるほど。まぁ、対応はこちらに任せてくれて構わないけど、危機感は共有して欲しいよなぁ」
これからクリアデイがどう仕掛けてくるのか気が気でない玲旺は、落ち着かないように腕を組んで窓の外に目を向けた。丁度よく視界に飛び込んできた看板がクリアデイのもので、さらに憂鬱な気分になる。
藤井の予想通り、フォーチュンの経営会議でクリアデイの件が議題に上がることはなかった。最後にさらりと進行役から報告され、それ以上その話題に触れないまま会議が締められそうになったので、慌てて玲旺が意見する。
しかし、快晴についての情報や今後脅威になり得る可能性について述べても、重役たちは余りピンときていないようだった。
『ジョリーごときが今更足掻いたところで』
そんな楽観的な空気が流れている気がしてならない。玲旺は「油断していたら足元をすくわれるかもしれない」と訴えたが、真剣な表情でうなずいてくれるものの、そこまで深刻には受け止めて貰えなかった。
若き指導者が初めての困難に直面し、ただ狼狽えているように見えたのだろうか。それとも、フローズンレインの問題は自分たちで何とかしろと突き放されたのか。
「玲旺様、そろそろ戻りましょう」
会議が終わった後も考え込んでなかなか席を立とうとしない玲旺に、藤井が静かに声をかける。
促されてようやく会議室を後にした玲旺は、エレベーターホールへ向かう途中で足を止めた。露骨に嫌そうな顔をした玲旺の視線の先には、エレベーターを待つ社長の姿がある。
現フォーチュンの代表取締であり上司でもあるその人物は、玲旺にとっては父親でもあった。ただし常に多忙な父とは、幼少期の頃を含めてもあまり親子らしい時間を過ごしたことが無い。
ゆえに、こうして顔を合わせても、何を話せばいいのか解らない。
父親がこちらに気付く前に会議室に引き返してやり過ごそうかと思ったが、藤井に背中を押されて無理矢理歩かされた。振り返って睨んでみても藤井は全く怯まず、笑顔のまま背中を押す手に力を込める。まるで突き飛ばされたような格好になり、つんのめりながら父親の目の前に躍り出てしまった。仕方なく玲旺は「お疲れ様です」と小さな声で告げる。
急に現れた息子に軽く目を見開いた父親は、少し戸惑っているように見えた。
「これ、今日の議題に上るかな」
「どうでしょう。社長には先ほど報告しましたが、まだ本社が対応するような案件ではないという雰囲気でした」
「なるほど。まぁ、対応はこちらに任せてくれて構わないけど、危機感は共有して欲しいよなぁ」
これからクリアデイがどう仕掛けてくるのか気が気でない玲旺は、落ち着かないように腕を組んで窓の外に目を向けた。丁度よく視界に飛び込んできた看板がクリアデイのもので、さらに憂鬱な気分になる。
藤井の予想通り、フォーチュンの経営会議でクリアデイの件が議題に上がることはなかった。最後にさらりと進行役から報告され、それ以上その話題に触れないまま会議が締められそうになったので、慌てて玲旺が意見する。
しかし、快晴についての情報や今後脅威になり得る可能性について述べても、重役たちは余りピンときていないようだった。
『ジョリーごときが今更足掻いたところで』
そんな楽観的な空気が流れている気がしてならない。玲旺は「油断していたら足元をすくわれるかもしれない」と訴えたが、真剣な表情でうなずいてくれるものの、そこまで深刻には受け止めて貰えなかった。
若き指導者が初めての困難に直面し、ただ狼狽えているように見えたのだろうか。それとも、フローズンレインの問題は自分たちで何とかしろと突き放されたのか。
「玲旺様、そろそろ戻りましょう」
会議が終わった後も考え込んでなかなか席を立とうとしない玲旺に、藤井が静かに声をかける。
促されてようやく会議室を後にした玲旺は、エレベーターホールへ向かう途中で足を止めた。露骨に嫌そうな顔をした玲旺の視線の先には、エレベーターを待つ社長の姿がある。
現フォーチュンの代表取締であり上司でもあるその人物は、玲旺にとっては父親でもあった。ただし常に多忙な父とは、幼少期の頃を含めてもあまり親子らしい時間を過ごしたことが無い。
ゆえに、こうして顔を合わせても、何を話せばいいのか解らない。
父親がこちらに気付く前に会議室に引き返してやり過ごそうかと思ったが、藤井に背中を押されて無理矢理歩かされた。振り返って睨んでみても藤井は全く怯まず、笑顔のまま背中を押す手に力を込める。まるで突き飛ばされたような格好になり、つんのめりながら父親の目の前に躍り出てしまった。仕方なく玲旺は「お疲れ様です」と小さな声で告げる。
急に現れた息子に軽く目を見開いた父親は、少し戸惑っているように見えた。
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