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~ 第一章 売られた喧嘩 ~
第七話 油断大敵
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「まず初めに申し上げておきますが、玲旺様の印象を悪くするような編集はされておりませんのでご安心ください。ただ……」
藤井が言い淀んだ理由は、動画を観てすぐに理解できた。優等生の模範解答をした玲旺に比べ、紅林の返答はあまりにも傲慢で酷い物だった。
『老舗の地位に胡坐をかいて未だに高い値段で売ってるようなブランドは、早々に退場させてやりますよ。ミーハーで中途半端な新ブランドも、いつまでもつのやら。これからは我が社の時代です。老兵が尻尾を巻いて逃げる姿は見ものでしょうね』
オーバーな身振り手振りで語る紅林は、最後に下卑た笑みを浮かべる。
名指しこそしなかったが、今までの関係性からしてフォーチュンやフローズンレインのことを言っているのだろうと、誰にでも容易に見当がついた。
「好き放題言いやがって」
不愉快極まりない紅林の言動に、玲旺は腹の底から怒りが湧いた。
フォーチュンの値段設定は確かに安くはない。ファストファッションに比べれば、桁が一つ、物によっては二つ違ってくるだろう。
しかしそれは生地や縫製、着心地などこだわり抜いた結果で、むしろこの品質で今の値段に抑えていることに高い評価を得ているくらいなのに。
フローズンレインにしたってそうだ。
紅林があげつらった「ミーハー」とは真逆の、流行に左右されない路線を貫いている。
中高生にも手が届くよう価格帯は数千円から二万円以内に絞ったが、本家の名に恥じない縫製技術と工夫を凝らしたデザインだ。ワンシーズンで着潰すような、雑な仕上がりではない。
良い品質のものは、それなりに値が張る。だからこそ、それらを身に着けた者はそのクオリティに相応しくあろうと努力する。
重要な会議で、または大切なパーティーで、ふとした日常でさえも、良質な服が自信をもたらし魔法のように背中を押してくれる瞬間がある。
その瞬間を支えることこそが、フォーチュンの願いであり矜持なのだ。
「企業に理念やプライドがあるなら、安価な服でも俺は大好きだよ。でもさぁ、ジョリーには何にもないじゃん。ただ人の真似をして努力をかっさらっておいて……そりゃないだろう」
今まで積み上げたものを汚されたような気がして、玲旺は奥歯を噛みしめた。握った拳が勝手に震える。藤井は気遣わし気な目で玲旺を見つめ、静かに口を開いた。
「玲旺様と紅林のコントラストを強調するような編集です。マスコミは氷雨さんと快晴とのデザイナー対決の他に、御曹司対決も期待しているのでしょう」
藤井が言い淀んだ理由は、動画を観てすぐに理解できた。優等生の模範解答をした玲旺に比べ、紅林の返答はあまりにも傲慢で酷い物だった。
『老舗の地位に胡坐をかいて未だに高い値段で売ってるようなブランドは、早々に退場させてやりますよ。ミーハーで中途半端な新ブランドも、いつまでもつのやら。これからは我が社の時代です。老兵が尻尾を巻いて逃げる姿は見ものでしょうね』
オーバーな身振り手振りで語る紅林は、最後に下卑た笑みを浮かべる。
名指しこそしなかったが、今までの関係性からしてフォーチュンやフローズンレインのことを言っているのだろうと、誰にでも容易に見当がついた。
「好き放題言いやがって」
不愉快極まりない紅林の言動に、玲旺は腹の底から怒りが湧いた。
フォーチュンの値段設定は確かに安くはない。ファストファッションに比べれば、桁が一つ、物によっては二つ違ってくるだろう。
しかしそれは生地や縫製、着心地などこだわり抜いた結果で、むしろこの品質で今の値段に抑えていることに高い評価を得ているくらいなのに。
フローズンレインにしたってそうだ。
紅林があげつらった「ミーハー」とは真逆の、流行に左右されない路線を貫いている。
中高生にも手が届くよう価格帯は数千円から二万円以内に絞ったが、本家の名に恥じない縫製技術と工夫を凝らしたデザインだ。ワンシーズンで着潰すような、雑な仕上がりではない。
良い品質のものは、それなりに値が張る。だからこそ、それらを身に着けた者はそのクオリティに相応しくあろうと努力する。
重要な会議で、または大切なパーティーで、ふとした日常でさえも、良質な服が自信をもたらし魔法のように背中を押してくれる瞬間がある。
その瞬間を支えることこそが、フォーチュンの願いであり矜持なのだ。
「企業に理念やプライドがあるなら、安価な服でも俺は大好きだよ。でもさぁ、ジョリーには何にもないじゃん。ただ人の真似をして努力をかっさらっておいて……そりゃないだろう」
今まで積み上げたものを汚されたような気がして、玲旺は奥歯を噛みしめた。握った拳が勝手に震える。藤井は気遣わし気な目で玲旺を見つめ、静かに口を開いた。
「玲旺様と紅林のコントラストを強調するような編集です。マスコミは氷雨さんと快晴とのデザイナー対決の他に、御曹司対決も期待しているのでしょう」
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