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◆最終幕 依依恋恋◆
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「きよとらぁ」
「陸……。アカン、今そないに甘い声で名前呼ぶの、反則やで。また勃ってもうた」
陸を抱きすくめて、清虎が呼吸を整える。
「布団、行こか。ここは膝が痛なる」
「だから言ったじゃん」
ごめんと笑いながら、清虎はへばっている陸の腕を引き上げた。
清虎はベッドに腰掛けると、向かい合うように陸を自分の膝に座らせる。
「陸が自分で挿れて、動いてみ」
「えっ」
陸は羞恥に顔を赤らめ一度は躊躇ったが、清虎のねだるような視線に負けてしまった。清虎の陰茎を自分の後孔にあてがい、ゆっくり腰を落とす。
「ん、んんっ」
押し広げて侵入してくる熱い雄に、達したばかりの体が再び快楽を求めだした。
「そない浅いとこでええの? もっと奥が好きなんちゃうん」
清虎は陸の胸を舌先で転がしながら、上目遣いで愉しそうに様子を伺う。腰を緩やかに上下させる度に、ぴくんぴくんと小刻みに陸の体が震えた。
「あは。陸かわいい。これはこれで気持ちええけど、これじゃいつまで経ってもイケないなぁ」
もどかしそうに身をよじった清虎が、陸の腰を掴んで引き寄せる。
「ごめんな。やっぱ俺が動くわ」
言った瞬間、下から激しく突き上げられた。ガクガク揺さぶられ、陸の体に電流が走る。
「やっ、あああッ。そんな、奥、入んな……っ」
喘ぐ陸の胸にむしゃぶりつきながら、清虎が陸の竿を扱き、鈴口を親指で捏ねる。体温が上昇し、陸の意識は飛びそうになった。
「も、ヤダ。清虎が好き過ぎて、ヘンになるっ」
「ええやんか。そうでないと困る。俺から絶対離れられんようにしたるわ」
陸は清虎にしがみつき、金色の髪をぐちゃぐちゃに掻き混ぜた。快感が脳天まで突き抜けて、もう何も考えられない。
自分の輪郭がぼやけていく。
同じように清虎の輪郭も曖昧になり、どこまでが自分の体か解らなくなった。
この荒い呼吸はどちらのものだろう。
滴る汗は。飛散った白濁は。重ねた唇の端から漏れる唾液は。
もう、どちらのものでも構わない。
今、絡み合って溶け合って、一つになってしまおう。
「陸、死ぬまで離れんとってな」
「当たり前だろ。死んだって離れないよ」
さんざん快楽を分かち合った陸と清虎は、力尽きてベッドに倒れ込んだ。
息を弾ませた陸が、恨めしそうに清虎を睨む。
「舞台であんなに踊った後で、よくこんなに動けるよね。あー、体中の関節が痛い。俺、明日有給取って移動日の手伝いするのに、役に立てなかったら清虎のせいだよ」
「あっは。役者の体力舐めたらアカンで。せやけど、しばらくこんなことも出来んと思たら、名残りおしゅうて、しゃあないやんか」
陸の隣に寝ころがり、手の甲にキスをする。「堪忍な」と呟いた後、寂しそうに目を伏せた。
「今日、陸が舞台袖から見ててくれたん、めっちゃ嬉しかってん。客と役者だけやない繋がりみたいの感じてなぁ」
さすがに疲れたのか、清虎の瞼は重そうだった。陸に体を摺り寄せて、小さな声でぽつぽつ語る。
「あんな。誰にも言うてないねんけど、ホンマは今日、道成寺踊り切れたら、役者辞めてまおか思うとってん。そしたら陸とずっと一緒におれるやんか」
衝撃的な告白に、陸は思わず体を起こして清虎を見た。
「だ、ダメでしょそんなの。清虎が役者辞めるなんて、絶対ダメだよ」
清虎は目を閉じたまま、「うん」とうなずいて静かに笑う。
「そうやね、やっぱ無理やった。今日は何とか踊り切れたけど、まだまだ直したいとこいっぱいあんねん。俺、もっと上手くなりたい。もっと稽古せな。まだ、舞台に立ってたい……」
もう意識は半分夢の中にいるのかもしれない。後半はまるで独り言のようで、だからこそ本音なのだろうと思った。
「陸、ごめんなぁ」
「なんで清虎が謝るんだよ。あのさ、俺だって……」
陸は反論しかけたが、清虎から寝息が聞こえてきて口をつぐんだ。
穏やかな寝顔を見つめ、清虎の髪を梳く。
「ごめんね、清虎。俺も謝らなきゃいけないことがあるんだ。でも、また明日ね」
清虎の額にキスを落として、陸も目を閉じる。
「おやすみ、清虎。良い夢を」
「陸……。アカン、今そないに甘い声で名前呼ぶの、反則やで。また勃ってもうた」
陸を抱きすくめて、清虎が呼吸を整える。
「布団、行こか。ここは膝が痛なる」
「だから言ったじゃん」
ごめんと笑いながら、清虎はへばっている陸の腕を引き上げた。
清虎はベッドに腰掛けると、向かい合うように陸を自分の膝に座らせる。
「陸が自分で挿れて、動いてみ」
「えっ」
陸は羞恥に顔を赤らめ一度は躊躇ったが、清虎のねだるような視線に負けてしまった。清虎の陰茎を自分の後孔にあてがい、ゆっくり腰を落とす。
「ん、んんっ」
押し広げて侵入してくる熱い雄に、達したばかりの体が再び快楽を求めだした。
「そない浅いとこでええの? もっと奥が好きなんちゃうん」
清虎は陸の胸を舌先で転がしながら、上目遣いで愉しそうに様子を伺う。腰を緩やかに上下させる度に、ぴくんぴくんと小刻みに陸の体が震えた。
「あは。陸かわいい。これはこれで気持ちええけど、これじゃいつまで経ってもイケないなぁ」
もどかしそうに身をよじった清虎が、陸の腰を掴んで引き寄せる。
「ごめんな。やっぱ俺が動くわ」
言った瞬間、下から激しく突き上げられた。ガクガク揺さぶられ、陸の体に電流が走る。
「やっ、あああッ。そんな、奥、入んな……っ」
喘ぐ陸の胸にむしゃぶりつきながら、清虎が陸の竿を扱き、鈴口を親指で捏ねる。体温が上昇し、陸の意識は飛びそうになった。
「も、ヤダ。清虎が好き過ぎて、ヘンになるっ」
「ええやんか。そうでないと困る。俺から絶対離れられんようにしたるわ」
陸は清虎にしがみつき、金色の髪をぐちゃぐちゃに掻き混ぜた。快感が脳天まで突き抜けて、もう何も考えられない。
自分の輪郭がぼやけていく。
同じように清虎の輪郭も曖昧になり、どこまでが自分の体か解らなくなった。
この荒い呼吸はどちらのものだろう。
滴る汗は。飛散った白濁は。重ねた唇の端から漏れる唾液は。
もう、どちらのものでも構わない。
今、絡み合って溶け合って、一つになってしまおう。
「陸、死ぬまで離れんとってな」
「当たり前だろ。死んだって離れないよ」
さんざん快楽を分かち合った陸と清虎は、力尽きてベッドに倒れ込んだ。
息を弾ませた陸が、恨めしそうに清虎を睨む。
「舞台であんなに踊った後で、よくこんなに動けるよね。あー、体中の関節が痛い。俺、明日有給取って移動日の手伝いするのに、役に立てなかったら清虎のせいだよ」
「あっは。役者の体力舐めたらアカンで。せやけど、しばらくこんなことも出来んと思たら、名残りおしゅうて、しゃあないやんか」
陸の隣に寝ころがり、手の甲にキスをする。「堪忍な」と呟いた後、寂しそうに目を伏せた。
「今日、陸が舞台袖から見ててくれたん、めっちゃ嬉しかってん。客と役者だけやない繋がりみたいの感じてなぁ」
さすがに疲れたのか、清虎の瞼は重そうだった。陸に体を摺り寄せて、小さな声でぽつぽつ語る。
「あんな。誰にも言うてないねんけど、ホンマは今日、道成寺踊り切れたら、役者辞めてまおか思うとってん。そしたら陸とずっと一緒におれるやんか」
衝撃的な告白に、陸は思わず体を起こして清虎を見た。
「だ、ダメでしょそんなの。清虎が役者辞めるなんて、絶対ダメだよ」
清虎は目を閉じたまま、「うん」とうなずいて静かに笑う。
「そうやね、やっぱ無理やった。今日は何とか踊り切れたけど、まだまだ直したいとこいっぱいあんねん。俺、もっと上手くなりたい。もっと稽古せな。まだ、舞台に立ってたい……」
もう意識は半分夢の中にいるのかもしれない。後半はまるで独り言のようで、だからこそ本音なのだろうと思った。
「陸、ごめんなぁ」
「なんで清虎が謝るんだよ。あのさ、俺だって……」
陸は反論しかけたが、清虎から寝息が聞こえてきて口をつぐんだ。
穏やかな寝顔を見つめ、清虎の髪を梳く。
「ごめんね、清虎。俺も謝らなきゃいけないことがあるんだ。でも、また明日ね」
清虎の額にキスを落として、陸も目を閉じる。
「おやすみ、清虎。良い夢を」
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