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◆最終幕 依依恋恋◆
結び直した糸④
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「ああ、それは方便と言うか……。家を出て哲治と離れようとすると、あいつは付いて来るって言うでしょ。だから深澤さんがルームシェアを提案してくれたんだ。もちろん断るけど、その設定は使えるなと思って言っただけ」
「なんや、じゃあ一緒に暮らすわけちゃうんか」
清虎は安堵したようにベッドに腰を下ろし、缶ビールのフタを開ける。プシュッと炭酸の抜ける心地良い音が部屋に響いた。缶ビールに口を付けながら、清虎がベッドをポンポン叩く。
「すまん、この部屋ソファも座布団もないねん。ここ座って」
部屋の真ん中に突っ立ったままでいた陸は、頷きながら清虎の隣に腰掛けた。ビールをちびちび飲む陸を見て、清虎が心配そうに顔を覗き込む。
「痛々しいなぁ。ホンマに哲治のヤツ、なんちゅーことすんねん」
「炭酸が沁みそうで様子見しただけ。痛くないよ」
清虎は陸の頬に貼られたガーゼを撫で、視線を少し下げてハッとした。
「首にも指の痕がうっすら残っとるやん」
陸が着ていたシャツの襟を少し開いて、清虎が眉を曇らせる。
「そんなに目立たないでしょ? 大丈夫だよ」
「大丈夫なんて簡単に言うなや。俺が大丈夫やない」
缶ビールを握りつぶした清虎は、苛立ったように陸を抱き寄せた。
「嫌や。陸が傷つけられんのは耐えられへん。もし俺がおらん時にこないなこと起きたらと思うと、気ぃ狂いそうや」
またうっかり「大丈夫だよ」と言いそうになり、言葉を飲み込む。それ以外になんと返せば良いか解らず、陸は無言のまま清虎の背中を撫でた。
「陸はもっと周りの人間を警戒しなアカン。哲治はもちろん、深澤も。親切心だけで近づいて来るとは限らんのやで」
「ただの先輩だよ」
「だとしても」
体を離した清虎が、怒ったような眼差しを向ける。
「陸は自分が魅力的なこと、ちゃんと自覚しぃや。無防備過ぎて、ホンマ心配」
首筋に強く吸い付かれ、陸は慌てて清虎を引き剥がした。
「待って清虎、痕付けないで。その場所じゃ服で隠せないよ」
「ええやんか、他の奴に見せつけたれ。……って俺、こないに自分が独占欲強いなんて知らんかった。哲治の付けた傷にすら嫉妬してまう」
陸は手にしていた缶ビールをベッドサイドに置き、改めて清虎に向き直る。
「俺も嫉妬するよ。舞台の後の送り出しで、清虎とお客さんが握手したり肩を組んで写真撮ったりするのを見て、ずっとモヤモヤしてた。だから、おあいこ」
「俺のは仕事やん。妬く要素なんてどこにも無いやろ」
「仕事だと解ってても、ってことだよ」
コツンと額をくっつけ、至近距離で見つめ合う。清虎の瞳の中に自分が映っていて、まるで吸い込まれてしまったような感覚に陥った。
触れたくて触れたくて、陸は耐えきれずに清虎の上唇を食む。清虎の瞳にギラリと光が差した。
「なんや、じゃあ一緒に暮らすわけちゃうんか」
清虎は安堵したようにベッドに腰を下ろし、缶ビールのフタを開ける。プシュッと炭酸の抜ける心地良い音が部屋に響いた。缶ビールに口を付けながら、清虎がベッドをポンポン叩く。
「すまん、この部屋ソファも座布団もないねん。ここ座って」
部屋の真ん中に突っ立ったままでいた陸は、頷きながら清虎の隣に腰掛けた。ビールをちびちび飲む陸を見て、清虎が心配そうに顔を覗き込む。
「痛々しいなぁ。ホンマに哲治のヤツ、なんちゅーことすんねん」
「炭酸が沁みそうで様子見しただけ。痛くないよ」
清虎は陸の頬に貼られたガーゼを撫で、視線を少し下げてハッとした。
「首にも指の痕がうっすら残っとるやん」
陸が着ていたシャツの襟を少し開いて、清虎が眉を曇らせる。
「そんなに目立たないでしょ? 大丈夫だよ」
「大丈夫なんて簡単に言うなや。俺が大丈夫やない」
缶ビールを握りつぶした清虎は、苛立ったように陸を抱き寄せた。
「嫌や。陸が傷つけられんのは耐えられへん。もし俺がおらん時にこないなこと起きたらと思うと、気ぃ狂いそうや」
またうっかり「大丈夫だよ」と言いそうになり、言葉を飲み込む。それ以外になんと返せば良いか解らず、陸は無言のまま清虎の背中を撫でた。
「陸はもっと周りの人間を警戒しなアカン。哲治はもちろん、深澤も。親切心だけで近づいて来るとは限らんのやで」
「ただの先輩だよ」
「だとしても」
体を離した清虎が、怒ったような眼差しを向ける。
「陸は自分が魅力的なこと、ちゃんと自覚しぃや。無防備過ぎて、ホンマ心配」
首筋に強く吸い付かれ、陸は慌てて清虎を引き剥がした。
「待って清虎、痕付けないで。その場所じゃ服で隠せないよ」
「ええやんか、他の奴に見せつけたれ。……って俺、こないに自分が独占欲強いなんて知らんかった。哲治の付けた傷にすら嫉妬してまう」
陸は手にしていた缶ビールをベッドサイドに置き、改めて清虎に向き直る。
「俺も嫉妬するよ。舞台の後の送り出しで、清虎とお客さんが握手したり肩を組んで写真撮ったりするのを見て、ずっとモヤモヤしてた。だから、おあいこ」
「俺のは仕事やん。妬く要素なんてどこにも無いやろ」
「仕事だと解ってても、ってことだよ」
コツンと額をくっつけ、至近距離で見つめ合う。清虎の瞳の中に自分が映っていて、まるで吸い込まれてしまったような感覚に陥った。
触れたくて触れたくて、陸は耐えきれずに清虎の上唇を食む。清虎の瞳にギラリと光が差した。
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