会いたいが情、見たいが病

雪華

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◆第一幕 一ヵ月だけのクラスメイト◆

応援団②

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 始業のチャイムと共に教室に入ってきた担任は、備えつけの大型モニターを黒板の前まで移動させ、繋いであるパソコンを操作しだした。

「例年通り一組は赤、二組青、三組が白。今年は団長も決めるからな。下級生を引っ張る重要な役だから、そのつもりで去年の動画を観て参考にしてくれ。時間ないから、ダイジェスト版さっそく映すぞ」

 大画面に応援合戦の様子が映し出された。白組の団長が着物姿でハチマキをなびかせながら、口上を堂々と述べる。それと同時に応援旗が大きく振られ、中々の迫力があった。

「どうだ、団長やりたい奴はいないか。女子だっていいんだぞ。遠藤、やってみないか?」

 担任から指名された遠藤は、わざとらしく眉を寄せ困って見せた。後ろの席の女子に「理沙ならできるよ」と声を掛けられ、「えー」と首を傾げてクスクス笑う。

「先生、私、団長はちょっと。でも、副団長なら出来そうかなぁって思います」
「お、引き受けてくれるか。じゃあ副団長は遠藤に決定だな。団長は……そうだな、佐伯はどうだ? お前は元気がいいから、白組全体が盛り上がるだろう」

 今度は陸に白羽の矢が立ち、賛同する声が教室に広がった。急に名前を呼ばれて目をしばたたかせる陸に代わって、哲治がガタっと椅子を鳴らして立ち上がる。

「先生、俺は佐久間が良いと思います」

 名前を挙げられた清虎は、居心地悪そうに背を丸めた。

「俺もそう思う! だって、清虎の声は良く通るし華やかだし。それに、袴姿超見たいし!」

 陸の言葉に、クラス全体が「確かに」と頷いた。担任までもが納得したように膝を打ったが、当の本人である清虎は「いやいや」と冷静に首を振る。

「団長なんて大役、昨日来たばっかの奴に任せたら絶対アカンやろ。しかも俺、運動会の次の日にはまた転校して、ここにはもうおらんのやで? もっとこの学校に馴染みのある奴がやった方がええって」

 反論しながら教室中を見回した清虎だったが、意外にもクラスメイトは団長というものに執着していないようだった。それどころか清虎が団長になることを歓迎していて、既に決定したような空気が教室中に満ちている。

「清虎のこの学校での思い出をさ、運動会で締めくくろうよ。俺も応援団に入って支えるし。ね? 一緒にやろう」

 少し離れた席から陸が、屈託のない笑顔を向ける。清虎は観念したように溜め息を吐きながら、最後の抵抗を試みた。

「でも俺、放課後とか残れへんよ。舞台あるし」
「へーき、へーき。俺たちも塾あるから、放課後は残らないよ。そのかわり昼休みに練習があるけど、それなら大丈夫でしょ?」

 あっさりと陸に言い込められ、清虎は眉間に皺を寄せながらも「わかった」と頷いた。

「ほんまにみんな、俺でええんやな?」
「ありがとう! 清虎」

 嬉しそうに手を叩く陸につられて、拍手が沸き起こった。遠藤も顔の前で可愛らしく手を叩きながら、清虎に向かって微笑む。

「私も清虎くんの団長姿楽しみ。一緒にがんばろうね」
「あぁ……よろしゅうに」

 苦笑いを浮かべつつ清虎が答える。そんな様子を眺めていたら、背中をツンとつつかれた。

「陸、俺も応援団やるよ」
「ありがと、哲治。今年の運動会は盛り上がりそうだね」

 再び清虎の方に顔を向けると、目が合ってドキリとする。一瞬だけ見せた清虎のくしゃっとした笑顔に、陸は小さく息を呑んだ。
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