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あなたは何タイプ?⑥
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「ですからぁ!昔っからそうなんですよぉぉおおお!」
「おい誰だ!こんなになるまでこいつに飲ませたの!!」
「しょうがないでしょ!ジョッキ半分程度でこんなに泥酔するなんて思わなかったんだからぁ!」
「よ、酔いの回りやすさは、個人差があるから…!」
「なぁんで他のことはそつなくこなせるのに!芸術面だけは、てんでダメなんだか!!あぁぁぁあぁあ~~!」
「しかも泣き上戸!めんどくせぇなぁ!!」
いつもの四人組、ではなく、ウィルの代わりにアルバートを加えたメンバーで酒を酌み交わしていた。知り合いとはいえ、相手は貴族。しかも王族の親戚筋ときた。そんな存在と酒の席、なんてどうなってんのかとも思ったが、必死に聞いてほしい話があるとかで乗り込んできたもんだから、断れるような状況じゃなかった。
そのままなし崩しにテーブルを囲んでしまったことを、オレは早くも後悔していた。
『ウィルを外したメンバーで』という条件が出た時点で察するべきだったのだ。
「…で、あの時様子がおかしかったのは…。」
「兄様は、芸術センスが、壊滅的にないんですぅううぅ!!」
「やっぱりかよ!」
「あの絵を見ての反応を考えるとねぇ…。」
「ぼ、僕も信じられなかったよ…。あの反応は、マジのやつだったもんね…。」
おいおいと泣き喚いているアルバートを見ていると、こいつも苦労してんだな…と同情の念が禁じ得ない。だが、王子の話を信じるとすれば、元々王子が芸術に自信を持つようになったのは、こいつに絵を評価されたことがきっかけだったはず…。となれば、この状況の原因の一端を担っているということになるのでは?
何してくれてんだこいつ!
「いや、違うんです。本当に。こんなことになるとは…。我が家は他の地域との交流もあって、工芸品をいただくことも多いんです。それらを飾っておくこともあったわけです。それで…。」
「自然と磨かれた芸術センスが、悪い方向に働いちまったってわけか。」
「自分としましては、芸術センスがあるようには思わないのですが…。少なくとも、そういった品に関して勉強させていただく機会は多くありましたが。」
「それの何がいけなかったのかしらね。」
「兄様はその、自分なりに絵を描く趣味は元々あったようで。ある日その絵を、見せていただくことになりまして…。」
「不幸だな。」
「噂では聞いていたんです。…でも、誰もが絵の評価については口を閉ざしているような状況でした。その時の私には、いまいちそれがどういうことか分かっていなかったんです。…あぁ~~~。」
「た、大変だ…!これは、トラウマになってしまっている!」
「飲み過ぎだ、水でもぶっかけろ。」
「さすがに貴族様相手にそれは…。でも確かに酔い過ぎよ、後飲むのは水にした方がいいでしょうね。…こんな少ない量でよくこんなに酔えるわね…。」
本格的にぐすぐすと鼻をすすりだした。これ以上面倒になってたまるか、水がぶ飲みさせろ。
「わ、私もっ、あんなに完璧だと思っていた兄様が、あんな絵を描くとは思いもしていなくて…!」
「まぁ…アンタってあの王子を結構慕ってるの、見てて分かるしな…。」
「そ、相当ショック、だったよね…。」
「もうショックなんて言葉じゃ足りないくらい衝撃的でしたよ!今でもあの絵を思い出すと…うぅっ…!」
「そ、それ以上はいけない!精神が耐えられない!」
「どんだけやばいもんだったんだよそれ…。ちゃんと始末してきたんだろうな。」
「王子の絵は呪物か何かなの。」
「そ、そこはきちんと抜かりなく…。純銀製の入れ物に入れて密閉し、聖職者に清めてもらった後、供物とともに地中深くに…。」
「本当に呪物扱いしてて笑える。」
「笑えないわよこんなん!」
いくらひどいとはいえ、扱いまでひどくて笑えてくる。
いいぞ、もっとやれ。
そんなレベルのセンスだったってんなら、あのウィルの絵に対する反応にも納得だ。似た者同士なんだな、あいつら。そんな奴らに同じ芸術家扱いされているオヤカタが不憫でならない。
いや、あのオヤブンの性格だったら真っ向から否定するだろうか。それはそれで見てみたい気もする。
「おい誰だ!こんなになるまでこいつに飲ませたの!!」
「しょうがないでしょ!ジョッキ半分程度でこんなに泥酔するなんて思わなかったんだからぁ!」
「よ、酔いの回りやすさは、個人差があるから…!」
「なぁんで他のことはそつなくこなせるのに!芸術面だけは、てんでダメなんだか!!あぁぁぁあぁあ~~!」
「しかも泣き上戸!めんどくせぇなぁ!!」
いつもの四人組、ではなく、ウィルの代わりにアルバートを加えたメンバーで酒を酌み交わしていた。知り合いとはいえ、相手は貴族。しかも王族の親戚筋ときた。そんな存在と酒の席、なんてどうなってんのかとも思ったが、必死に聞いてほしい話があるとかで乗り込んできたもんだから、断れるような状況じゃなかった。
そのままなし崩しにテーブルを囲んでしまったことを、オレは早くも後悔していた。
『ウィルを外したメンバーで』という条件が出た時点で察するべきだったのだ。
「…で、あの時様子がおかしかったのは…。」
「兄様は、芸術センスが、壊滅的にないんですぅううぅ!!」
「やっぱりかよ!」
「あの絵を見ての反応を考えるとねぇ…。」
「ぼ、僕も信じられなかったよ…。あの反応は、マジのやつだったもんね…。」
おいおいと泣き喚いているアルバートを見ていると、こいつも苦労してんだな…と同情の念が禁じ得ない。だが、王子の話を信じるとすれば、元々王子が芸術に自信を持つようになったのは、こいつに絵を評価されたことがきっかけだったはず…。となれば、この状況の原因の一端を担っているということになるのでは?
何してくれてんだこいつ!
「いや、違うんです。本当に。こんなことになるとは…。我が家は他の地域との交流もあって、工芸品をいただくことも多いんです。それらを飾っておくこともあったわけです。それで…。」
「自然と磨かれた芸術センスが、悪い方向に働いちまったってわけか。」
「自分としましては、芸術センスがあるようには思わないのですが…。少なくとも、そういった品に関して勉強させていただく機会は多くありましたが。」
「それの何がいけなかったのかしらね。」
「兄様はその、自分なりに絵を描く趣味は元々あったようで。ある日その絵を、見せていただくことになりまして…。」
「不幸だな。」
「噂では聞いていたんです。…でも、誰もが絵の評価については口を閉ざしているような状況でした。その時の私には、いまいちそれがどういうことか分かっていなかったんです。…あぁ~~~。」
「た、大変だ…!これは、トラウマになってしまっている!」
「飲み過ぎだ、水でもぶっかけろ。」
「さすがに貴族様相手にそれは…。でも確かに酔い過ぎよ、後飲むのは水にした方がいいでしょうね。…こんな少ない量でよくこんなに酔えるわね…。」
本格的にぐすぐすと鼻をすすりだした。これ以上面倒になってたまるか、水がぶ飲みさせろ。
「わ、私もっ、あんなに完璧だと思っていた兄様が、あんな絵を描くとは思いもしていなくて…!」
「まぁ…アンタってあの王子を結構慕ってるの、見てて分かるしな…。」
「そ、相当ショック、だったよね…。」
「もうショックなんて言葉じゃ足りないくらい衝撃的でしたよ!今でもあの絵を思い出すと…うぅっ…!」
「そ、それ以上はいけない!精神が耐えられない!」
「どんだけやばいもんだったんだよそれ…。ちゃんと始末してきたんだろうな。」
「王子の絵は呪物か何かなの。」
「そ、そこはきちんと抜かりなく…。純銀製の入れ物に入れて密閉し、聖職者に清めてもらった後、供物とともに地中深くに…。」
「本当に呪物扱いしてて笑える。」
「笑えないわよこんなん!」
いくらひどいとはいえ、扱いまでひどくて笑えてくる。
いいぞ、もっとやれ。
そんなレベルのセンスだったってんなら、あのウィルの絵に対する反応にも納得だ。似た者同士なんだな、あいつら。そんな奴らに同じ芸術家扱いされているオヤカタが不憫でならない。
いや、あのオヤブンの性格だったら真っ向から否定するだろうか。それはそれで見てみたい気もする。
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