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「食事だ!」
「読書だ!」
「芸術だ!!」
「頭おかしくなったかお前たち。」

今日も今日とて、ギルドの扉を開けるなり謎のポーズを取りながら奇声を発する三人の頭を心配してしまう。
ちなみに三人というのは、声を発した順番にユイ、アレックス、ウィルとなる。
個人的には最後が最も理解できないのだが。

「失礼ね、『食欲の秋』って知らないの?食欲って言うのは女子としてちょっとはばかられるから、品よく掛け声を食事に変えたっていうのに。」
「変なポーズしてる方がはばかられるわ。」
「よ、ようやく涼しくなって、読書に集中できるようになったよ。」
「お前は年中食欲あるから消去法で読書担当になったんだろ。」
「季節の移り変わりは創作意欲が刺激される。」
「お前が一番納得いかねぇ。さっさと他の担当に変更しろ。」

三人が意気揚々と秋だから~と語り始める。また変なもんに影響されやがったな。
あーもう、今から嫌な予感しかしねぇ!

「…一応、話は聞いてやろうか。何なんだよ、今回は。」
「なんてことはないわよ。あの過酷な夏がやっと終わって涼しくなったんだから、やりたいことを満喫しよう!ってだけ。」
「そんだけで済んだことってないんだよなぁ…。」
「秋ってなんでこう美味しいものが並び始めるのかしらね!控えめに言って最高。」
「はいはい…。」
「昨日もエナちゃんと話題になってるスイーツ食べに行ったし、今日もこの後別のお店に食べに行く約束をしてる。」
「エナもか…!お前たちが組むと碌なことにならねぇが、まぁ静かに楽しんでくれ…。」
「おいしい物を食べ歩くのもいいんだけど、今度自分たちで作ってみるのもいいんじゃないかって!かぼちゃのパイなんかいいんじゃないかしら。収穫からやっていくから、皆も協力してね。」
「収穫から!?」

追及するにしては結構難易度高いと思うが!?

「ど、読書はなんてことないよ…。魔女の一撃で本を借りて読んでるんだ。」
「あぁ、あのばあさん専門書とか持ってそうだもんな。なんてったって魔女だし。」
「も、もちろん医学書もたくさんあるんだけど、文学作品も多くてさ…。特に恋愛作品が多くて、読み終わったら感想聞かれるんだ。…こ、今度、レイも一緒に読んでみない?」
「それオレにも感想聞いてくるやつだろ!やだよ!面倒なことに巻き込むなよ!っていうか、ばあさんの愛読書恋愛作品かよ、意外過ぎるわ。」

誰が何を読んでいようが構わないが、年若い男に勧めるのがそれって選択どうなんだ?せめて感想は求めないでやってくれ!?

「…それで俺の芸術なんだけど…。」
「お前はいい。」
「なんで。」
「お前の芸術は理解できんからな。」
「芸術の門は誰にでも開かれているよ?」
「お前の作る芸術作品が俺には理解できねぇんだよ!センスゼロが芸術語るな!!」
「え、ウィルってそんなにひどいの…?」

意気揚々と語り始めようとしたウィルをすぐさま遮る。まぁ誰が芸術を求めようが構わん。こいつ以外な!
オレの語気の荒さに何かを感じ取ったのか、ユイが恐る恐る様子を伺ってくる。事情を理解しているアレックスは苦笑いしている。

「あぁ、ひどいなんてもんじゃねぇ。こいつの芸術とやらを目にしたら最後、思考が空の彼方に吹っ飛んで異世界の神が新文明を作り上げるだろうぜ。」
「…何言ってるの?」
「それだけすごい作品だってことだよ、ユイさん。」
「ちっげーよ!」
「ぼ、僕も…ちょっと理解はできない、かな…。」
「…何となく、理解したわ。ちなみに、何を作るの?」
「俺は絵を描くんだ。涼しくなってきて、集中して向かい合えるんだ。」
「へー…ちょっと描いて見せてよ。」
「おい正気か!?こいつの絵を見るなんて!」
「ここまで言われるのも興味あるじゃない。四人で同じテーマで描いて、誰が一番上手か見せ合いましょうよ!」
「いいね!」
「…マジかよ…。」
「や、やめておいた方が、いいと思うけど…。」

何てことを提案しやがるんだ…!ユイはウィルの描いた絵、いやバケモンを見たことがないからこんなことが言えるんだ。散々被害者になってきたオレやアレックスの反応を見ろ!どうやっても嫌な予感しかしないだろ、そうだよな!?
そう思って全力で否定やら拒否やらするものの、当の本人は面白そうじゃないの一点張り。これから加害者になるであろうウィルもじゃあ準備しないと!なんて軽い足取りで道具を取りに出て行ってしまった。
…もう何もかも終わりだ。
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