上 下
40 / 84

ある悪ガキの話~キョウダイ⑤~

しおりを挟む
オレたちが15歳になってからも、各々こっそりと準備を進めていた。幸いなことに、と言っていいのか、元々家の仕事を手伝っていたオレたちは、大きな生活の変化もなく過ごしていた。もちろん、今まで以上に仕事に本腰を入れることにはなったので、全く同じ生活とも言えないのだが。
そんなオレたちをよそに、ガラリと生活が変化した人物がいた。ルゥだ。今まで多少のやんちゃは注意される程度だったが、15歳になった途端全く許されなくなった。これにはさすがに面食らっていたな。

「…よし。」
「どこいくんだ?」
「うわっ、レイ!びっくりさせないでよ!」
「勝手にびっくりしたんだろ。…また抜け出したのか。」
「…だって。」
「今まで勉強してこなかったのに急にやれって言われても、だろ?いい加減聞き飽きたぜ。…気持ちは分からなくないけどな。」
「でしょ!?」
「今まで散々周りを振り回してきたんだから、腹くくっていうこと聞いとけよ。もう15歳なんだしよ。」
「…15歳になったからって、どうしてこんな…。」
「あーこんなところにいたのね!」

親父から仕事に使う書類の整理を言いつけられ、書斎に向かっていたところ、廊下を見回している不審人物、もといルゥを見かけた。様子から察するに、というかここ最近の行動と本人の性格からして、勉強が嫌になって逃げだしているところであることは明確。声をかけるとやはり、といったところだ。オレも手伝いをさせられるようになった初めの頃は逃げ出す方法ばかり考えていたから、正直気持ちはよく分かる。よく分かるが、もうオレたちはわがままを言って逃げ出せるような年齢ではない。ルゥはまだ、急な環境の変化に馴染めないでいる。
ちょっと愚痴っぽくなってしまったが、こそこそと廊下の端で話しているところを母親に見つかってしまった。気の強い母親に昔から怒られているせいか、ルゥはビクリと肩を跳ねさせオレの後ろに引っ込む。

「こら!まだ勉強終わってないでしょう!レイは仕事があるんだから、邪魔しないの。」
「邪魔なんかしてない!これは、たまたま…。」
「うん。これからちょうど書斎に行くとこだったんだ。…オレが引き留めちまったな、ルゥ。勉強頑張れよ。」
「あ…。」

親父に散々噛みついてきたオレも、母親には歯向かえない。これはもはや体に染みついたもんだろう。…親父ですら頭が上がらないしな。悲しそうな顔をしたルゥを送り出して、オレも書斎へと体を滑り込ませた。
オレはルゥの勉強の内容がどんなもんなのか、全く知らなかった。だから、なぜ悲しそうな表情をしていたのか、心の隅に少し引っかかっていた。だがそれも、日々の忙しさの中でどんどん奥まったところへと追いやられ、いつの日か気にならなくなってしまった。

それから、両親から厳重注意でも受けたのか、家の中にいてもルゥに接触する機会がめっきり減った。とはいえ、オレも親父と共に仕事のために家を空けることも少なくなかったので、それのせいもあるだろう。昔は2人で1部屋で与えられていたので、顔を見ないことなど不可能だったが、年齢を重ねて小さいながらも自室を持つようになっていた。初めのうちは互いに違和感があっただろうが、それにも慣れるもんだなとぼんやりと思う。寝静まる頃に2人で同じ布団に潜り込んで、朝起こしに来た母親に呆れられていた頃が懐かしい。
時折村の中でルゥを見かけることがあるが、あのわがまま放題していた奴が嘘のように静かに振る舞うようになっていた。勉強の成果ともいえるが、オレには別人になってしまったようにも見えて少し、何だろうな…。怖かった、のかもしれない。とにかく、どうにも声をかけるような気分にはなれなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

処理中です...