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Ex.それからの事とこれからの事
2人の関係
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「福沢さん、福沢さん。」
「ん-?なぁーにー、高橋君。」
「…今日って、黒沢さん、来ませんよね?」
「そうだね、今日平日だし。」
「ってことは、坂本さんも来ない?」
「そうね。…何が言いたいの?」
平日の夕方、虹の国にて。ここに来てくれるボランティアさんでも、それぞれ生活があるので比較的平日は社会人組は顔を出さない。そこには当然リョウ君や坂本さんも含まれるのだが、大学生である高橋君は土日平日関係なく不定期に参加しているメンバーの一人だった。そんな彼が、あまりを警戒するようにきょろきょろしながら小声で話しかけてくる。
「坂本さん、来る時っていっつも黒沢さんと一緒じゃないですか。…ぶっちゃけ、2人の関係って何なんですか?」
関係、ねぇ…。それはオレも聞きたいってのが本当のとこなんだけど。あの2人を見ていると、むずむずするっていうかもやもやするっていうか、リョウ君のけつを蹴り上げたくなるっていうか、ねぇ。
「この間、相川が聞いてたんすけど、『2人って付き合ってるんですか!?』って聞いても『いや…。』とか。『じゃあ友達ですか!?』って聞いても『まぁ…。』とか!曖昧な返事しかしてなかったんですよ!」
「まぁリョウ君の性格上、そうなって仕方ないと思うけど…。って言うか何、後輩使って探り入れさせた訳?情けないなぁー。」
「ち、違いますよ!あいつが勝手に話しかけてたんですよ!あいつって、怖いもの知らずっていうか周りを見ないっていうか…。とにかく、俺の指示じゃないです!」
相川君もここのボランティアとして何度か参加してくれているメンバーで、この高橋君の大学の後輩という繋がりだそうだ。動物全般大好きで、元気いっぱいの男の子だ。少し小柄なのもあってか、誰にでも話しかけられてしまう彼はどこか子犬を彷彿とさせる。大して面識もないだろうに、あのリョウ君にプライベートな質問ができるなんて、彼は大物になるかもしれない。
「まぁいいけどさ。ってことは、高橋君は坂本さん狙ってるってこと?」
「狙っているっていうか…、優しそうなお姉さんがいたら、いたいけな男の子はお近づきになりたいと思うもんでしょ。」
「なーにがいたいけな男の子だよ。前にアヤちゃんに声かけてたの忘れてないからな。」
「うっ…。」
そうこの男、まだ坂本さんがここに来るようになる前、女神であるアヤちゃんに手を出そうとしていた不届き者なのだ。とはいえ、さっぱりとした性格のアヤちゃんは、『仲良くなる分にはいいけど、年下は恋人の対象外。』とバッサリ。その言葉は今でも心の支えになっています。
「別に告白したわけじゃないですし…!それに、帰省した時のお土産渡したらお礼にってお菓子もらいましたし!」
「何ぃ!?羨ましい…じゃなくて、そんなのどうせコンビニスイーツだろ!甘い甘い!!」
「うぐぐ…!じゃあそんな福沢さんは、コンビニスイーツだろうが袋菓子だろうが、もらったことあるんですか!?」
「ギクゥ!」
「ほーら見たことか!恋愛対象にならなくても、俺の方がアヤカさんに可愛がってもらってますもんねー!」
「ぐぬぬぬぅ…!」
高橋君の言葉、福沢の心に会心の一撃!高橋君の言うことも一理ある…!心当たりがあるだけに、もう虫の息です…。
「もー先輩、遊んでないで手伝ってくださいよ。福沢さんも、代表じゃないとできない仕事だってあるんじゃないですか?」
「「はい、ごめんなさい。」」
隣の部屋から件の相川君がひょこりと顔を覗かせる。少し困ったような表情でこちらを急かす様子を見ていると、この子も年上から可愛がられそうな雰囲気だよなぁ、とぼんやりと思う。
「なぁ、相川。この間黒沢さんに坂本さんとの関係聞いてたじゃん?」
「はい。それが何か?」
「それって、お前坂本さんが気になるってこと?」
「先輩みたいな気持ちではないですけど…。まぁ気にはなるなーって感じでした。」
「「ほう。」」
これは男子トークが盛り上がりそうな予感。ワタクシ福沢といたしましては、あの2人の間に入るのは余程の事でもない限り無理だと思いますが、この相川君は不思議な魅力があるからなぁ。リョウ君にライバル登場か!?
「この間一緒に掃除した時、お菓子くれたんですよね。」
…それって餌付けされているのでは?
「それでこの間、お礼言おうと思ったら来ていたの黒沢さんだけだったので。いつも一緒なのに今日いないんですかーって話しかけたんですよ。」
「…なるほど。」
確かにそれは恋愛的な何かではないように思える。それでも黒沢君に正面から話しかけに行けるとは…。
「…そんで、どうだったんだよ。」
「用事があるとかで来ていなかったみたいです。」
「そうじゃなくて!こう…俺に勝算、ある?」
「やっぱりお前…。」
「無理だと思いますよ。」
「「おおぅ…。」」
思った以上にはっきり言うんだなこの子は。ちょっと高橋君がかわいそうになって来た。
「何で…。何でなんだ相川!俺のどこがだめだって言うんだ!」
「先輩がだめっていうか…。その、黒沢さんが…何て言うのかな、幸せそうだったんですよ。」
「幸せそう?」
「坂本さんの話をしている時の黒沢さん、すごく幸せそうだったんですよ。だから、先輩がそこに割り込むのは…。」
「…そっかぁ。」
基本的に不愛想な表情をしているあのリョウ君の感情を読み取るなんて、やっぱりこの子は大物なのかもしれない。
「ん-?なぁーにー、高橋君。」
「…今日って、黒沢さん、来ませんよね?」
「そうだね、今日平日だし。」
「ってことは、坂本さんも来ない?」
「そうね。…何が言いたいの?」
平日の夕方、虹の国にて。ここに来てくれるボランティアさんでも、それぞれ生活があるので比較的平日は社会人組は顔を出さない。そこには当然リョウ君や坂本さんも含まれるのだが、大学生である高橋君は土日平日関係なく不定期に参加しているメンバーの一人だった。そんな彼が、あまりを警戒するようにきょろきょろしながら小声で話しかけてくる。
「坂本さん、来る時っていっつも黒沢さんと一緒じゃないですか。…ぶっちゃけ、2人の関係って何なんですか?」
関係、ねぇ…。それはオレも聞きたいってのが本当のとこなんだけど。あの2人を見ていると、むずむずするっていうかもやもやするっていうか、リョウ君のけつを蹴り上げたくなるっていうか、ねぇ。
「この間、相川が聞いてたんすけど、『2人って付き合ってるんですか!?』って聞いても『いや…。』とか。『じゃあ友達ですか!?』って聞いても『まぁ…。』とか!曖昧な返事しかしてなかったんですよ!」
「まぁリョウ君の性格上、そうなって仕方ないと思うけど…。って言うか何、後輩使って探り入れさせた訳?情けないなぁー。」
「ち、違いますよ!あいつが勝手に話しかけてたんですよ!あいつって、怖いもの知らずっていうか周りを見ないっていうか…。とにかく、俺の指示じゃないです!」
相川君もここのボランティアとして何度か参加してくれているメンバーで、この高橋君の大学の後輩という繋がりだそうだ。動物全般大好きで、元気いっぱいの男の子だ。少し小柄なのもあってか、誰にでも話しかけられてしまう彼はどこか子犬を彷彿とさせる。大して面識もないだろうに、あのリョウ君にプライベートな質問ができるなんて、彼は大物になるかもしれない。
「まぁいいけどさ。ってことは、高橋君は坂本さん狙ってるってこと?」
「狙っているっていうか…、優しそうなお姉さんがいたら、いたいけな男の子はお近づきになりたいと思うもんでしょ。」
「なーにがいたいけな男の子だよ。前にアヤちゃんに声かけてたの忘れてないからな。」
「うっ…。」
そうこの男、まだ坂本さんがここに来るようになる前、女神であるアヤちゃんに手を出そうとしていた不届き者なのだ。とはいえ、さっぱりとした性格のアヤちゃんは、『仲良くなる分にはいいけど、年下は恋人の対象外。』とバッサリ。その言葉は今でも心の支えになっています。
「別に告白したわけじゃないですし…!それに、帰省した時のお土産渡したらお礼にってお菓子もらいましたし!」
「何ぃ!?羨ましい…じゃなくて、そんなのどうせコンビニスイーツだろ!甘い甘い!!」
「うぐぐ…!じゃあそんな福沢さんは、コンビニスイーツだろうが袋菓子だろうが、もらったことあるんですか!?」
「ギクゥ!」
「ほーら見たことか!恋愛対象にならなくても、俺の方がアヤカさんに可愛がってもらってますもんねー!」
「ぐぬぬぬぅ…!」
高橋君の言葉、福沢の心に会心の一撃!高橋君の言うことも一理ある…!心当たりがあるだけに、もう虫の息です…。
「もー先輩、遊んでないで手伝ってくださいよ。福沢さんも、代表じゃないとできない仕事だってあるんじゃないですか?」
「「はい、ごめんなさい。」」
隣の部屋から件の相川君がひょこりと顔を覗かせる。少し困ったような表情でこちらを急かす様子を見ていると、この子も年上から可愛がられそうな雰囲気だよなぁ、とぼんやりと思う。
「なぁ、相川。この間黒沢さんに坂本さんとの関係聞いてたじゃん?」
「はい。それが何か?」
「それって、お前坂本さんが気になるってこと?」
「先輩みたいな気持ちではないですけど…。まぁ気にはなるなーって感じでした。」
「「ほう。」」
これは男子トークが盛り上がりそうな予感。ワタクシ福沢といたしましては、あの2人の間に入るのは余程の事でもない限り無理だと思いますが、この相川君は不思議な魅力があるからなぁ。リョウ君にライバル登場か!?
「この間一緒に掃除した時、お菓子くれたんですよね。」
…それって餌付けされているのでは?
「それでこの間、お礼言おうと思ったら来ていたの黒沢さんだけだったので。いつも一緒なのに今日いないんですかーって話しかけたんですよ。」
「…なるほど。」
確かにそれは恋愛的な何かではないように思える。それでも黒沢君に正面から話しかけに行けるとは…。
「…そんで、どうだったんだよ。」
「用事があるとかで来ていなかったみたいです。」
「そうじゃなくて!こう…俺に勝算、ある?」
「やっぱりお前…。」
「無理だと思いますよ。」
「「おおぅ…。」」
思った以上にはっきり言うんだなこの子は。ちょっと高橋君がかわいそうになって来た。
「何で…。何でなんだ相川!俺のどこがだめだって言うんだ!」
「先輩がだめっていうか…。その、黒沢さんが…何て言うのかな、幸せそうだったんですよ。」
「幸せそう?」
「坂本さんの話をしている時の黒沢さん、すごく幸せそうだったんですよ。だから、先輩がそこに割り込むのは…。」
「…そっかぁ。」
基本的に不愛想な表情をしているあのリョウ君の感情を読み取るなんて、やっぱりこの子は大物なのかもしれない。
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