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出会いの喜び
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「そう考えると、やっぱり今も昔もあまり変わらないのかもしれないよね。」
「え?」
「だって、さっきの良太君の考えで言えば、
周りの人間にどう思われるかを推察して、自分の行動を決めているってことだよね。
それは今の時代の人だって、さして変わらないんじゃないのかい?」
「…まぁ…、その考えだって、もともと僕の想像でしかないですし…。
って、さっきから何となく他人事みたいな口ぶりですね。
ロイさんは…、周りの目が気になることってないんですか?」
「俺?俺はないなぁ。」
あー、イケメンは何でも自信があって羨ましいなぁ!
どうせ僕みたいな凡人は、何をするにしたって周りの人間にどう思われるかが気になって仕方がありませんよ!
「自分のことを大して知らない人間にどう思われようと、俺は自分の好きなように生きていたいからねぇ。
俺はいろんなところに行き来してるから、
何かあったとしても、他のところに行ってしまえば大した問題じゃなくなるしね。」
「…羨ましいですね。」
「良太君もそうすればいいじゃないか。別に一つの場所に留まるように決められているわけじゃないんだろう?」
「そう言われても…。僕、大学ありますし。」
「何で大学生になったんだよ。何か理由があったのかい?」
「それは、それは…。」
何となく、というのが正直な感覚なのかもしれない。
自分がやりたいことも見えてこないのに、何のために大学に通っているのだろうか。
日本の義務教育とされているのは中学まで。高校は、普通に行くだろ。だって、行ってない奴の方が珍しいし。
高校に何となく進んで、卒業ってなったら、惰性で大学まで進んだ。
勉強したいことがあるって言ったら、周りは納得してくれた。
周りで進学する奴が多かったから、流れに任せてついた嘘だ。
高校でそこそこの成績を取っていて、自分の学力に無理のない大学を選んで、
最近勉強しようとする人が多いような学科を選んだ。
進学理由もそれらしい話をしたら、先生たちはすんなり納得した。
僕の大学生活は、嘘でできていた。
「…。」
「特にやりたいことが無いならさ、旅に出てみるのもいいんじゃないかな。
旅は良いよ。見たこともない景色、会ったことのない人、聞いたことのない音楽!最高さ。」
「…そんな行動力、僕にはないです。」
「良太君さ、大学は地元なの?」
「え?いえ、違いますけど…。」
「何だ、もう行動しているじゃないか。生まれ育った土地から出ていくのは、不安だっただろう。
今までと違った環境に身を置かなきゃならないし、周りに見知った人なんていない。
一人暮らしなんでしょ?ご飯や掃除だって、自分でやらなきゃならないなんて、大変だろうに!」
「まぁ…そんな苦でもなかったですけど。もう慣れましたし。」
「君はそれができたのに、旅に出ることには二の足を踏むんだねぇ。」
「いや、旅と進学は、さすがに違うでしょ。」
「いいや?君の場合は違わないはずだよ。だって、君は進学に明確な理由なんてなかったんだから。
大学に行ってみたら何かあるかなって、そう思ったんじゃないのかい?
旅に出るときの気持ちだって一緒さ!
旅の中で立ち寄った場所や出会った人たちと、何かが起こりやしないかって。」
確かに進学にはっきりした理由なんてなかったけど、他人に言われると腹が立つ。
何も目標がなかったとしても、進学しないでぶらぶらするよりいいじゃないか。
適当にバイトして生活するのと、適当に進学するのと、どっちがいいってんだ。
イケメンはそこら辺の道を適当に歩てても絵になるんでしょうねぇ、
僕だったら状況によっては不審者になりかねませんよ!
「大学には、たくさん人がいる?」
「そりゃ…。僕からしてみたら、どこの大学だって人口密度高いですよ。」
「ふぅん。良太君は、あまり人がいないところで育ったのかい?」
「東北の田舎町ですよ。町って言うか、村って感じの…。
一番近いコンビニに行くのに、車が必要なところでした。スーパー行くのと変わらないんですよ。」
「へぇ。」
「山の中に人が住んでるなんて、まさに田舎って感じ。僕が小学生の頃にバスだってなくなっちゃったし。」
「バスがなくなる?」
「僕が住んでた地域のバス路線が廃止になっちゃったんです。
子供のころは、町場に遊びに行くのにいちいち親に頼まなきゃいけなくなったから、
面倒になったくらいにしか思っていませんでしたけど…。
今になって見ると、大人たちはもっと面倒だっただろうなぁ。」
「山育ちなんだね。」
「え?あぁ、はい。」
「俺は基本的に海の近くにしか行かないから。」
「あー…。つまらないですか、すみません。」
何だよ、イケメンは海限定なのかよ!山だっていいだろ、キャンプ流行っているし。…僕はインドア派だけど。
「いやむしろ楽しいよ!自分が見聞きしてこなかったことを知れるのは、人との出会いで得る喜びの1つだ。
良太君、俺は君と出会えて本当によかったよ。」
「そ、そうですか…。」
ロイさんはそれでそれで、と話を続けろと詰め寄ってくる。
その様子に若干引きながらも、僕は珍しくもない故郷の話を続けた。
「え?」
「だって、さっきの良太君の考えで言えば、
周りの人間にどう思われるかを推察して、自分の行動を決めているってことだよね。
それは今の時代の人だって、さして変わらないんじゃないのかい?」
「…まぁ…、その考えだって、もともと僕の想像でしかないですし…。
って、さっきから何となく他人事みたいな口ぶりですね。
ロイさんは…、周りの目が気になることってないんですか?」
「俺?俺はないなぁ。」
あー、イケメンは何でも自信があって羨ましいなぁ!
どうせ僕みたいな凡人は、何をするにしたって周りの人間にどう思われるかが気になって仕方がありませんよ!
「自分のことを大して知らない人間にどう思われようと、俺は自分の好きなように生きていたいからねぇ。
俺はいろんなところに行き来してるから、
何かあったとしても、他のところに行ってしまえば大した問題じゃなくなるしね。」
「…羨ましいですね。」
「良太君もそうすればいいじゃないか。別に一つの場所に留まるように決められているわけじゃないんだろう?」
「そう言われても…。僕、大学ありますし。」
「何で大学生になったんだよ。何か理由があったのかい?」
「それは、それは…。」
何となく、というのが正直な感覚なのかもしれない。
自分がやりたいことも見えてこないのに、何のために大学に通っているのだろうか。
日本の義務教育とされているのは中学まで。高校は、普通に行くだろ。だって、行ってない奴の方が珍しいし。
高校に何となく進んで、卒業ってなったら、惰性で大学まで進んだ。
勉強したいことがあるって言ったら、周りは納得してくれた。
周りで進学する奴が多かったから、流れに任せてついた嘘だ。
高校でそこそこの成績を取っていて、自分の学力に無理のない大学を選んで、
最近勉強しようとする人が多いような学科を選んだ。
進学理由もそれらしい話をしたら、先生たちはすんなり納得した。
僕の大学生活は、嘘でできていた。
「…。」
「特にやりたいことが無いならさ、旅に出てみるのもいいんじゃないかな。
旅は良いよ。見たこともない景色、会ったことのない人、聞いたことのない音楽!最高さ。」
「…そんな行動力、僕にはないです。」
「良太君さ、大学は地元なの?」
「え?いえ、違いますけど…。」
「何だ、もう行動しているじゃないか。生まれ育った土地から出ていくのは、不安だっただろう。
今までと違った環境に身を置かなきゃならないし、周りに見知った人なんていない。
一人暮らしなんでしょ?ご飯や掃除だって、自分でやらなきゃならないなんて、大変だろうに!」
「まぁ…そんな苦でもなかったですけど。もう慣れましたし。」
「君はそれができたのに、旅に出ることには二の足を踏むんだねぇ。」
「いや、旅と進学は、さすがに違うでしょ。」
「いいや?君の場合は違わないはずだよ。だって、君は進学に明確な理由なんてなかったんだから。
大学に行ってみたら何かあるかなって、そう思ったんじゃないのかい?
旅に出るときの気持ちだって一緒さ!
旅の中で立ち寄った場所や出会った人たちと、何かが起こりやしないかって。」
確かに進学にはっきりした理由なんてなかったけど、他人に言われると腹が立つ。
何も目標がなかったとしても、進学しないでぶらぶらするよりいいじゃないか。
適当にバイトして生活するのと、適当に進学するのと、どっちがいいってんだ。
イケメンはそこら辺の道を適当に歩てても絵になるんでしょうねぇ、
僕だったら状況によっては不審者になりかねませんよ!
「大学には、たくさん人がいる?」
「そりゃ…。僕からしてみたら、どこの大学だって人口密度高いですよ。」
「ふぅん。良太君は、あまり人がいないところで育ったのかい?」
「東北の田舎町ですよ。町って言うか、村って感じの…。
一番近いコンビニに行くのに、車が必要なところでした。スーパー行くのと変わらないんですよ。」
「へぇ。」
「山の中に人が住んでるなんて、まさに田舎って感じ。僕が小学生の頃にバスだってなくなっちゃったし。」
「バスがなくなる?」
「僕が住んでた地域のバス路線が廃止になっちゃったんです。
子供のころは、町場に遊びに行くのにいちいち親に頼まなきゃいけなくなったから、
面倒になったくらいにしか思っていませんでしたけど…。
今になって見ると、大人たちはもっと面倒だっただろうなぁ。」
「山育ちなんだね。」
「え?あぁ、はい。」
「俺は基本的に海の近くにしか行かないから。」
「あー…。つまらないですか、すみません。」
何だよ、イケメンは海限定なのかよ!山だっていいだろ、キャンプ流行っているし。…僕はインドア派だけど。
「いやむしろ楽しいよ!自分が見聞きしてこなかったことを知れるのは、人との出会いで得る喜びの1つだ。
良太君、俺は君と出会えて本当によかったよ。」
「そ、そうですか…。」
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