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余計な騒動は持ち込まないでくださいます?
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当初の予定とは違ってしまったけれど、結果としてアルバート様の協力で私たちの活動はより順調になっていった。
彼は王子のいとこという立場だが、本人の肩書は一流の貴族。
様々な業界に相応のツテもあるとのことで、
様々な場面で「アルバート様から伺っております」なんて言われながら活動することが多くて驚いたものだ。
いや正直ドッキリ仕組まれてるのかなって。本当に。しかも手伝ってくれる人たち全員優秀だし。
私の周りは基本的に脳筋ばっかりだって言うのに。羨ましい。
「ユイ様、先日達成した依頼に関してなのですが…。」
「アルバート様、様付けはよしてくださいと何度も申し上げておりますが。
私とでは立場が違いすぎますので、止めていただけますと…。」
「申し訳ありません、つい癖で。」
カイル王子とはまた違った、人懐こい笑みを浮かべてアルバート様は頭をかいている。
年齢としては私とほぼ一緒。同年代と関わることができて嬉しいと、本人も言っていたけれど。
「アルバート様。今更ですがカイル王子に付き合って私たちの監査に参加されていていいんですか?
私の想像だと、貴族様って幼い時から家督を継ぐためにいろいろ勉強しなければならなくて、
忙しいものだと思っていたのですが。」
「そうですねぇ…。
我が家は城下街から少し外れていて、
中心部の貴族の方々と比べればそこまで、といった感じではあるのですが…。
皆さんの想像はそこまで外れてはいないかと思いますよ。
私も小さい頃から領地のことに関して学ばされてきましたから。」
「では…。」
「でも、今回のことは私自らの意思で参加を申し出たのです。
私は将来、カイル兄様の手伝いをしたいと思っているものですから。」
「え?」
あの王子の?こんな優秀で優しそうな人が?いろいろ無茶振りして腹黒そうな王子の手伝い?
止めた方がいいわよ。手堅く自分の家を継いだ方がいいと思います…。
「貴族の子どもは、多くの場合幼少期より将来必要となるであろう知識や経験を叩きこまれます。
我が家もその例に漏れず、物心ついた頃には家庭教師がついていましたし、
きらびやかなお茶会なんかにも連れ出されていましたよ。」
「…大変そうですね。」
「正直、当然のこととしてその環境に身を置いていましたので、あまり気にしたことはありませんでした。
社交界で知り合う人たちも、そういった方ばかりですので。」
「意識したことが無かったんですね。」
「えぇ。でも、ある日カイル兄様とお会いして。王族でありながらなんて自由な方なんだと感動したのです。」
それってただ自分勝手なだけなのでは…。
今まで自分の生活に疑問や不満を持たなかった人からしてみれば、それはそれは輝いて見えると思うけど。
まぁ、本人たちがいいなら…いいのかしらね。
「兄様は考えなしの方のように見えるかもしれませんが、
少なくとも私腹を肥やし、保身のために駆けずり回るような下劣な人間ではありませんよ。
それだけでも、貴族の中では稀有な存在だと思います。
そのような方が人々の上に立つ。そのような世界を私は近くで見てみたいと思っています。」
…確かにメンツのことしか考えていないお偉いさん方よりかは、多少いいかもしれないけども。
何よりも気になるのは、王子が考えなしに見えるって部分は否定しないのね、アルバート様。
「今回のことも、この国の将来を思ってのことであることは疑いようもありませんし。
皆さんもそう感じたから、こちらに兄様が来ることを受け入れてくださったんですよね?」
「はぁ、まぁ…。」
キラキラした目で王子について語るアルバート様を直視しないように、
適当に返事をしながら届いた依頼書を開封していく。
もう少ししたら新しい依頼書を誰か持ってくるでしょうから、仕分けを進めておかないとどんどん遅れるわ。
私が依頼書を読み始めたのを見て、何も言わずにアルバート様はペーパーナイフで開封作業を始めてくれた。
この気配りができるかできないか!これよ。これをうちの男どもにも見習ってもらいたいわねー。
「お、お疲れ様、ユイさん…。アルバート様も…。」
「お疲れ様です。」
「お疲れ様。今回はどんな感じ?」
「す、少しずつ増えているかな…。あ、そ、そうだ、ユイさん。
さっきここに来るとき、み、店の前に知らない人がいたんだけど…。」
「知らない人?お客さんか、相談しに来た人じゃないの?」
「う、うん…。そ、そう思って、声をかけようとしたら、すぐにどこかに行っちゃって…。」
「ふーん…?」
確かに今の時間に相談者との予定はないし…、何だったのかしら。
「それはもしかすると、我が家から使わされた人間かもしれません。」
「「へ?」」
アルバート様のお家…?使いの人間…?
ってよく考えたら、この人だって私たちから見ればやんごとなき立場の人!
身の危険がないように周りを警戒しておくのは当然じゃない!
王子が転がり込んでいるせいで感覚がおかしくなってるわ!
「私は一人息子ですので、一応将来領主となることが決まっている身。
様子を見に来たりはするかなーと思っていましたが、そうですか。」
「後継者である一人息子!周りの人たちは気が気じゃないですよ!
そんな依頼書を開封する仕事なんてしないでいいです!私の首が危うい!」
「えぇ…?そんなにしなくても大丈夫ですよ。
確かに一人息子ではありますが、いとこたちはいるのでそちらを後継者にという人間もいるので、
万が一私に何かあっても誰かが領地を継ぐことはできますから。」
「いやそれもっと複雑なやつ!」
ニコニコといとこについて話し始めるアルバート様に、初めてイラつきを憶えたわ。
それってつまり、お家騒動ってやつじゃない…!
裏ではアルバート様を領主にしたい一派と他のいとこたちを担ぐ一派が揉めていたりして…!
いやー、こんなところに巻き込まれたくないわ!私たちは何も知らない。そうよね、うん。
…そういえば、カイル王子から護衛の話とかって聞いたことないわね。
アルバート様がいるから、必要ないって判断されたのかと思っていたけど、
立場からしてそんなことありえないわよね。
…もう考えるのやーめた!
彼は王子のいとこという立場だが、本人の肩書は一流の貴族。
様々な業界に相応のツテもあるとのことで、
様々な場面で「アルバート様から伺っております」なんて言われながら活動することが多くて驚いたものだ。
いや正直ドッキリ仕組まれてるのかなって。本当に。しかも手伝ってくれる人たち全員優秀だし。
私の周りは基本的に脳筋ばっかりだって言うのに。羨ましい。
「ユイ様、先日達成した依頼に関してなのですが…。」
「アルバート様、様付けはよしてくださいと何度も申し上げておりますが。
私とでは立場が違いすぎますので、止めていただけますと…。」
「申し訳ありません、つい癖で。」
カイル王子とはまた違った、人懐こい笑みを浮かべてアルバート様は頭をかいている。
年齢としては私とほぼ一緒。同年代と関わることができて嬉しいと、本人も言っていたけれど。
「アルバート様。今更ですがカイル王子に付き合って私たちの監査に参加されていていいんですか?
私の想像だと、貴族様って幼い時から家督を継ぐためにいろいろ勉強しなければならなくて、
忙しいものだと思っていたのですが。」
「そうですねぇ…。
我が家は城下街から少し外れていて、
中心部の貴族の方々と比べればそこまで、といった感じではあるのですが…。
皆さんの想像はそこまで外れてはいないかと思いますよ。
私も小さい頃から領地のことに関して学ばされてきましたから。」
「では…。」
「でも、今回のことは私自らの意思で参加を申し出たのです。
私は将来、カイル兄様の手伝いをしたいと思っているものですから。」
「え?」
あの王子の?こんな優秀で優しそうな人が?いろいろ無茶振りして腹黒そうな王子の手伝い?
止めた方がいいわよ。手堅く自分の家を継いだ方がいいと思います…。
「貴族の子どもは、多くの場合幼少期より将来必要となるであろう知識や経験を叩きこまれます。
我が家もその例に漏れず、物心ついた頃には家庭教師がついていましたし、
きらびやかなお茶会なんかにも連れ出されていましたよ。」
「…大変そうですね。」
「正直、当然のこととしてその環境に身を置いていましたので、あまり気にしたことはありませんでした。
社交界で知り合う人たちも、そういった方ばかりですので。」
「意識したことが無かったんですね。」
「えぇ。でも、ある日カイル兄様とお会いして。王族でありながらなんて自由な方なんだと感動したのです。」
それってただ自分勝手なだけなのでは…。
今まで自分の生活に疑問や不満を持たなかった人からしてみれば、それはそれは輝いて見えると思うけど。
まぁ、本人たちがいいなら…いいのかしらね。
「兄様は考えなしの方のように見えるかもしれませんが、
少なくとも私腹を肥やし、保身のために駆けずり回るような下劣な人間ではありませんよ。
それだけでも、貴族の中では稀有な存在だと思います。
そのような方が人々の上に立つ。そのような世界を私は近くで見てみたいと思っています。」
…確かにメンツのことしか考えていないお偉いさん方よりかは、多少いいかもしれないけども。
何よりも気になるのは、王子が考えなしに見えるって部分は否定しないのね、アルバート様。
「今回のことも、この国の将来を思ってのことであることは疑いようもありませんし。
皆さんもそう感じたから、こちらに兄様が来ることを受け入れてくださったんですよね?」
「はぁ、まぁ…。」
キラキラした目で王子について語るアルバート様を直視しないように、
適当に返事をしながら届いた依頼書を開封していく。
もう少ししたら新しい依頼書を誰か持ってくるでしょうから、仕分けを進めておかないとどんどん遅れるわ。
私が依頼書を読み始めたのを見て、何も言わずにアルバート様はペーパーナイフで開封作業を始めてくれた。
この気配りができるかできないか!これよ。これをうちの男どもにも見習ってもらいたいわねー。
「お、お疲れ様、ユイさん…。アルバート様も…。」
「お疲れ様です。」
「お疲れ様。今回はどんな感じ?」
「す、少しずつ増えているかな…。あ、そ、そうだ、ユイさん。
さっきここに来るとき、み、店の前に知らない人がいたんだけど…。」
「知らない人?お客さんか、相談しに来た人じゃないの?」
「う、うん…。そ、そう思って、声をかけようとしたら、すぐにどこかに行っちゃって…。」
「ふーん…?」
確かに今の時間に相談者との予定はないし…、何だったのかしら。
「それはもしかすると、我が家から使わされた人間かもしれません。」
「「へ?」」
アルバート様のお家…?使いの人間…?
ってよく考えたら、この人だって私たちから見ればやんごとなき立場の人!
身の危険がないように周りを警戒しておくのは当然じゃない!
王子が転がり込んでいるせいで感覚がおかしくなってるわ!
「私は一人息子ですので、一応将来領主となることが決まっている身。
様子を見に来たりはするかなーと思っていましたが、そうですか。」
「後継者である一人息子!周りの人たちは気が気じゃないですよ!
そんな依頼書を開封する仕事なんてしないでいいです!私の首が危うい!」
「えぇ…?そんなにしなくても大丈夫ですよ。
確かに一人息子ではありますが、いとこたちはいるのでそちらを後継者にという人間もいるので、
万が一私に何かあっても誰かが領地を継ぐことはできますから。」
「いやそれもっと複雑なやつ!」
ニコニコといとこについて話し始めるアルバート様に、初めてイラつきを憶えたわ。
それってつまり、お家騒動ってやつじゃない…!
裏ではアルバート様を領主にしたい一派と他のいとこたちを担ぐ一派が揉めていたりして…!
いやー、こんなところに巻き込まれたくないわ!私たちは何も知らない。そうよね、うん。
…そういえば、カイル王子から護衛の話とかって聞いたことないわね。
アルバート様がいるから、必要ないって判断されたのかと思っていたけど、
立場からしてそんなことありえないわよね。
…もう考えるのやーめた!
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