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依頼の優先順位 

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 狡猾なヤツだな。
 こちらの戦力を分散させるとは。
 魔族の知能は人間以上とも言われている。
 智慧がある敵ほど厄介なものはない。

「どうして、魔族は鉱山を襲ったの?」

 エルフリーデが問う。 
 確かにそれは疑問だな。
 なんで、鉱山なんかを狙ったんだ。

「分かりません。今の所、魔族の目的は不明です。ですが、鉱山に今現在も閉じ込められている御方こそが、魔族の目的やも知れません。もちろん、推測に過ぎませんが……」

 御方……。
 つまり尊い身分の方という事だ。
 思わず、俺は緊張した。

「失礼ながら、誓約をして頂いても宜しいでしょうか? 私が話した内容を口外しないという誓いが欲しいのです。 その上でないと、ここから先は、お話することが難しいのです……」

 ゴルバンさんが、申し訳なさそうに言う。

「分かりました。誓約をしましょう」

 俺が答える。

 『誓約』とは、魂で結ぶ魔法だ。
 今回の場合だと、『ゴルバンさんの話を口外しない』という誓約だ。
 誓約を使って、約束事をすると、絶対に違反できない。

 『誓約』をした上で、それに違反しようとすると、魂に損傷がおきて、最悪、死に至る事もある。

 それゆえに、誓約の魔法は、商人同士が契約を結ぶ際にも使用される。
 誓約の魔法で商売の契約を締結すれば絶対に裏切られないからだ。

「それでは誓約をお願い致します」

 ゴルバンさんが、言うと俺は頷く。
 ゴルバンさんが、誓約の魔法を唱えた。
 誓約の魔法は、初級魔法であり、行使するのは容易い。

「あなた方は、私が話す内容を、関係者以外に口外しない事を誓いますか?」
「誓います」 

 俺が答える。

「名誉にかけて、誓います」

 ルイズが言う。

「誓うよ」
「誓う」
「誓うの」

 フローラ、エルフリーデ、ミネルヴァも誓いを立てる。
 魔法光が俺たちを包んだ。
 これで、誓約はなされた。
 ゴルバンさんは、一つ頷くと、背を伸ばし、口を開いた。

「鉱山の中には、30数名が取り残されております。そして、その中には、我が国の第一王女アーリヤ王女殿下がおられます」

 ゴルバンさんの発言に、俺たちは一様に驚愕した。
 まさか、第一王女が人質とは……。

「鉱山には既に正規軍と、他の冒険者パーティーが封鎖された入り口を開けて、内部に入っております。皆様にも、至急、鉱山に入り、アーリヤ王女殿下を救出して頂きたいのです」

 ゴルバンさんが、言う。

 今回の依頼の優先順位は、

1,アーリヤ王女殿下の保護。
2,鉱山の内部にいるギルヴァン鋼国の民の保護。
3,魔族の撃退。

 と言われた。

「もちろん、出来れば、アーリヤ殿下だけでなく、他の民も保護し、救助して頂ければ一番有り難いのですが……」
「出来る限りの事はします」

 俺は答える。
 そして、ゴルバンさんから、現状を記した書類を受け取ると、すぐに出発した。



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