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第52話 ツガル皇国の醤油
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「美味しいの♪ 食べ終わるのが勿体ないの」
ミネルヴァが、小さな口を少しずつ動かして、ゆっくりと味わっている。
フローラと違って、我慢しながら食べる事も可能なようだ。
「クレープは気に入ったか?」
「はいなの♪」
ミネルヴァが、答える。
「にゃー、なんだかもう一つだけ食べたくなってきたよ。いや、できるなら、もう2個、いや、10個……」
フローラが、通り過ぎた屋台を振り返る。
「フローラ、クレープはもう良いでしょう? 食べるなら、せめて他の甘いモノしたらどうですか?」
「にゃ? いいの?」
フローラが、ルイズと俺を交互に見る。
「夕飯前だから、お腹いっぱいにならないように食べろよ」
自分でいっててなんだが、この台詞、お父さんだよね。
娘に言い聞かせている感じ。
さしずめ、俺がお父さんで、ルイズはお母さんかな。
なんだか、クスクスと笑ってしまった。
「先生、どうかされましたか?」
「あ、いや。なんだか、俺とルイズがお父さんとお母さんみたいだなって思ってさ」
「え?」
ルイズの美貌が、真っ赤に染まった。
頬に手をあてて、金瞳を左右に動かす。
「先生と夫婦……、結婚、子作り……、はわわ……」
銀髪金瞳のハイエルフが、なにかブツブツと言い出した。
声が小さくて聞こえない。
嬉しさを堪えるような不思議な表情を端麗な顔に浮かべている。
「ルイズ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。バッチリです!」
ルイズが、力強く答える。
「師匠の女たらし」
エルフリーデが、俺の服の裾をつまんだ。
「女たらしって……、何が?」
「私もいれて。愛人で良いから」
クレープをモグモグと食べながら、エルフリーデが言う。
「何を言っているんだ、お前は」
愛人なんて言葉、女の子が使うもんじゃありません。
だいたい、クレープを頬張りながら言っても色気が皆無だ。
「にゃー、カイン! 甘いモノの後は、やっぱりしょっぱいものだよ! 牛の串焼きにしよう♪」
フローラが、いつのまにか少し離れた露天の前にいた。
瞬間移動みたいに速いな。
いつ、俺たちの側を離れたのかさえも、分からなかった。
「醤油のタレが、一番人気らしいよ♪」
フローラはすでに屋台のおっちゃんと楽しく会話して、オススメを聞き出していた。
「醤油か」
醤油は、東方にあるツガル皇国の調味料だ。
ツガル皇国には、非常に独特な食文化がある国で、美食の宝庫だ。
醤油は、焼き串によくあう。
それに甘いモノの後だから、しょっぱいものを食べたくなる。
悪くないな。
甘いのモノとしょっぱいモノの、抜け出せない無限ループに入ってしまいそうだけど。
まあ良いか。
買い食いは王都の名物だしな。
牛肉の串焼きを買い、俺たちは、食べながら宿屋にむかった。
ミネルヴァが、小さな口を少しずつ動かして、ゆっくりと味わっている。
フローラと違って、我慢しながら食べる事も可能なようだ。
「クレープは気に入ったか?」
「はいなの♪」
ミネルヴァが、答える。
「にゃー、なんだかもう一つだけ食べたくなってきたよ。いや、できるなら、もう2個、いや、10個……」
フローラが、通り過ぎた屋台を振り返る。
「フローラ、クレープはもう良いでしょう? 食べるなら、せめて他の甘いモノしたらどうですか?」
「にゃ? いいの?」
フローラが、ルイズと俺を交互に見る。
「夕飯前だから、お腹いっぱいにならないように食べろよ」
自分でいっててなんだが、この台詞、お父さんだよね。
娘に言い聞かせている感じ。
さしずめ、俺がお父さんで、ルイズはお母さんかな。
なんだか、クスクスと笑ってしまった。
「先生、どうかされましたか?」
「あ、いや。なんだか、俺とルイズがお父さんとお母さんみたいだなって思ってさ」
「え?」
ルイズの美貌が、真っ赤に染まった。
頬に手をあてて、金瞳を左右に動かす。
「先生と夫婦……、結婚、子作り……、はわわ……」
銀髪金瞳のハイエルフが、なにかブツブツと言い出した。
声が小さくて聞こえない。
嬉しさを堪えるような不思議な表情を端麗な顔に浮かべている。
「ルイズ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。バッチリです!」
ルイズが、力強く答える。
「師匠の女たらし」
エルフリーデが、俺の服の裾をつまんだ。
「女たらしって……、何が?」
「私もいれて。愛人で良いから」
クレープをモグモグと食べながら、エルフリーデが言う。
「何を言っているんだ、お前は」
愛人なんて言葉、女の子が使うもんじゃありません。
だいたい、クレープを頬張りながら言っても色気が皆無だ。
「にゃー、カイン! 甘いモノの後は、やっぱりしょっぱいものだよ! 牛の串焼きにしよう♪」
フローラが、いつのまにか少し離れた露天の前にいた。
瞬間移動みたいに速いな。
いつ、俺たちの側を離れたのかさえも、分からなかった。
「醤油のタレが、一番人気らしいよ♪」
フローラはすでに屋台のおっちゃんと楽しく会話して、オススメを聞き出していた。
「醤油か」
醤油は、東方にあるツガル皇国の調味料だ。
ツガル皇国には、非常に独特な食文化がある国で、美食の宝庫だ。
醤油は、焼き串によくあう。
それに甘いモノの後だから、しょっぱいものを食べたくなる。
悪くないな。
甘いのモノとしょっぱいモノの、抜け出せない無限ループに入ってしまいそうだけど。
まあ良いか。
買い食いは王都の名物だしな。
牛肉の串焼きを買い、俺たちは、食べながら宿屋にむかった。
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