50 / 76
第50話 王都に来たら、買い食いするのが常識?
しおりを挟む
10日後。
王都に無事、帰還した。
正門から、王都の大通りが視界に映り込むと、ミネルヴァは、
「すごいの! 人が沢山いるの!」
と、驚いた。
天竜族の少女の瞳は、純粋な好奇心と驚嘆に染まっていた。
露天が立ち並び、無数の馬車が行き交う大通りを歩きながら、キョロキョロとあたりを見渡している。
ちなみに、ミネルヴァにはエルフリーデの服を着せている。
元々着ていた服は、露出度が高すぎるからな。
あとで、ミネルヴァに合った服をちゃんと買わないと。
「こんなに沢山人間がいるのを見たのは初めてなの!」
「人口100万の大都会ですからね」
「ひゃ、ひゃくまん? び、びっくり仰天なの」
びっくり仰天とは、ずいぶん古めかしい表現だな。
まあ、200年も監禁されていたから、言葉遣いが古くなるのは当然か。
「まあ、何度見ても王都の賑わいはすごいよな」
俺も、初めて王都に来た時は、興奮して心臓がバクバクした。
故郷がド田舎にあったから、こんなに大勢の人を見る機会なんてなかったからな。
「にゃー、ミネルヴァ、王都といったら、買い食いだよ。美味しいお店が沢山あるんだよ♪」
フローラが、妹分のミネルヴァを誘惑した。
「王都といったら甘いモノを食べながら歩くのが常識」
エルフリーデが、無表情のままドヤ顔をするという器用なまねをした。 おいおい、いつから常識になったんだ?
「そんな常識はありませんよ。先に所用をすませてから、買い食いをするべきでしょう」
常識人のルイズが、美しい声音で言う。
銀鈴の声とは、こういう声をいうのだろう。
ルイズは、絶世の美貌の持ち主だが、声も可愛くて美しい。
「買い食いはダメなの?」
ミネルヴァが、人差し指を口に含んで、上目遣いでルイズを見る。
「え、あの……」
10歳の幼女にしかみえないミネルヴァが、涙目になって上目遣い。
そのせいで、ルイズが罪悪感を感じたように表情を曇らせる。
「残念だにゃー……、でも、ルイズお母さんが、そういうならしょうがないにゃー……」
「そう、ルイズは私たちのお母さんのようなモノ……。ルイズがダメといえば全てダメ。……鬼」
「誰が、お母さんですか! それとエルフリーデ! 私を鬼と言ったでしょう? 小声でも聞こえてますよ!」
さすがは、ハイエルフ。聴覚が並じゃない。
「うん。ルイズお姉ちゃんがダメっていうなら、あきらめるの。わがまま言ってごめんなさいなの……」
ミネルヴァが、しゅんと落ち込んで項垂れる。
うわぁ。
見てると辛くなってきた……。
「あ、いえ、私はその……、別に……」
ルイズが、やや慌てて気まずそうに銀髪を片手でなでる。
そして、俺に金瞳をむけて、助けを求める。
「その……、宿屋の手配とか、冒険者ギルドに行くとか色々あるけど……、まあ、少しは買い食いぐらはしても良いかな」
俺が言うと、ルイズも、
「そ、そうですね。先生が言うなら賛成です。私も甘いモノは好きですし」
と咳払いした。
「本当? カインお兄ちゃん、ルイズお姉ちゃん、ありがとうなの!」
ミネルヴァの顔が輝く。
「やったにゃー♪」
フローラが、純粋な笑顔を浮かべた。
「クックック……、ルイズの弱点を発見した。これからはたっぷり利用させてもらう」
エルフリーデが、悪魔のような笑みを浮かべた。
弱点って、……お前ら幼馴染みで、親友のはずだよね?
「エルフリーデ。『人様を利用して、自分の利益をはかるな』、と昔、教えましたよね? 覚えていますよね?」
ルイズお母さんが、美しい笑みを浮かべたまま、恐ろしい怒気を発する。
「……はい」
青髪の精霊族は、うつむいて縮こまった。
うん。
ルイズお母さんの勝ち。
っていうか、昔って何歳の頃だ?
今度、ルイズたちの子供時代について聞いてみよう。
なんだか、面白いエピソードが沢山ありそうな予感がする。
ま、何はともあれ。
「買い食いを楽しみながら、王都を歩こうか」
「了解です」
「にゃー♪」
「ん」
「はいなの」
美少女たちの嬉しそうな声がそろった。
俺も甘いモノが大好きだし、楽しくなってきた。
王都に無事、帰還した。
正門から、王都の大通りが視界に映り込むと、ミネルヴァは、
「すごいの! 人が沢山いるの!」
と、驚いた。
天竜族の少女の瞳は、純粋な好奇心と驚嘆に染まっていた。
露天が立ち並び、無数の馬車が行き交う大通りを歩きながら、キョロキョロとあたりを見渡している。
ちなみに、ミネルヴァにはエルフリーデの服を着せている。
元々着ていた服は、露出度が高すぎるからな。
あとで、ミネルヴァに合った服をちゃんと買わないと。
「こんなに沢山人間がいるのを見たのは初めてなの!」
「人口100万の大都会ですからね」
「ひゃ、ひゃくまん? び、びっくり仰天なの」
びっくり仰天とは、ずいぶん古めかしい表現だな。
まあ、200年も監禁されていたから、言葉遣いが古くなるのは当然か。
「まあ、何度見ても王都の賑わいはすごいよな」
俺も、初めて王都に来た時は、興奮して心臓がバクバクした。
故郷がド田舎にあったから、こんなに大勢の人を見る機会なんてなかったからな。
「にゃー、ミネルヴァ、王都といったら、買い食いだよ。美味しいお店が沢山あるんだよ♪」
フローラが、妹分のミネルヴァを誘惑した。
「王都といったら甘いモノを食べながら歩くのが常識」
エルフリーデが、無表情のままドヤ顔をするという器用なまねをした。 おいおい、いつから常識になったんだ?
「そんな常識はありませんよ。先に所用をすませてから、買い食いをするべきでしょう」
常識人のルイズが、美しい声音で言う。
銀鈴の声とは、こういう声をいうのだろう。
ルイズは、絶世の美貌の持ち主だが、声も可愛くて美しい。
「買い食いはダメなの?」
ミネルヴァが、人差し指を口に含んで、上目遣いでルイズを見る。
「え、あの……」
10歳の幼女にしかみえないミネルヴァが、涙目になって上目遣い。
そのせいで、ルイズが罪悪感を感じたように表情を曇らせる。
「残念だにゃー……、でも、ルイズお母さんが、そういうならしょうがないにゃー……」
「そう、ルイズは私たちのお母さんのようなモノ……。ルイズがダメといえば全てダメ。……鬼」
「誰が、お母さんですか! それとエルフリーデ! 私を鬼と言ったでしょう? 小声でも聞こえてますよ!」
さすがは、ハイエルフ。聴覚が並じゃない。
「うん。ルイズお姉ちゃんがダメっていうなら、あきらめるの。わがまま言ってごめんなさいなの……」
ミネルヴァが、しゅんと落ち込んで項垂れる。
うわぁ。
見てると辛くなってきた……。
「あ、いえ、私はその……、別に……」
ルイズが、やや慌てて気まずそうに銀髪を片手でなでる。
そして、俺に金瞳をむけて、助けを求める。
「その……、宿屋の手配とか、冒険者ギルドに行くとか色々あるけど……、まあ、少しは買い食いぐらはしても良いかな」
俺が言うと、ルイズも、
「そ、そうですね。先生が言うなら賛成です。私も甘いモノは好きですし」
と咳払いした。
「本当? カインお兄ちゃん、ルイズお姉ちゃん、ありがとうなの!」
ミネルヴァの顔が輝く。
「やったにゃー♪」
フローラが、純粋な笑顔を浮かべた。
「クックック……、ルイズの弱点を発見した。これからはたっぷり利用させてもらう」
エルフリーデが、悪魔のような笑みを浮かべた。
弱点って、……お前ら幼馴染みで、親友のはずだよね?
「エルフリーデ。『人様を利用して、自分の利益をはかるな』、と昔、教えましたよね? 覚えていますよね?」
ルイズお母さんが、美しい笑みを浮かべたまま、恐ろしい怒気を発する。
「……はい」
青髪の精霊族は、うつむいて縮こまった。
うん。
ルイズお母さんの勝ち。
っていうか、昔って何歳の頃だ?
今度、ルイズたちの子供時代について聞いてみよう。
なんだか、面白いエピソードが沢山ありそうな予感がする。
ま、何はともあれ。
「買い食いを楽しみながら、王都を歩こうか」
「了解です」
「にゃー♪」
「ん」
「はいなの」
美少女たちの嬉しそうな声がそろった。
俺も甘いモノが大好きだし、楽しくなってきた。
2
お気に入りに追加
757
あなたにおすすめの小説
スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす
Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二
その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。
侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。
裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。
そこで先天性スキル、糸を手に入れた。
だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。
「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」
少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
やがて最強になる結界師、規格外の魔印を持って生まれたので無双します
菊池 快晴
ファンタジー
報われない人生を歩んできた少年と愛猫。
来世は幸せになりたいと願いながら目を覚ますと異世界に転生した。
「ぐぅ」
「お前、もしかして、おもちなのか?」
これは、魔印を持って生まれた少年が死ぬほどの努力をして、元猫の竜と幸せになっていく無双物語です。
エルフで聖女で転生者
もぶぞう
ファンタジー
シャルテはエルフの里でも変わった子だった。
3歳になった頃には転生者であると気が付いた。
5歳になると創造神を名乗る声が聞こえ、聖女になれと言われた。
設定盛り過ぎと文句を言えば知らんと返された。
聖女のお仕事はあまりしません。
登場する地名・人名その他、実在であろうと非実在であろうと諸々無関係です。
お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~
雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた
思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。
だがしかし!
そう、俺には″お布団″がある。
いや、お布団″しか″ねーじゃん!
と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で
とんだチートアイテムになると気づき、
しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。
スキル次第で何者にでもなれる世界で、
ファンタジー好きの”元おじさん”が、
①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々
②生活費の為に、お仕事を頑張る日々
③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々
④たしなむ程度の冒険者としての日々
⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。
そんな物語です。
(※カクヨムにて重複掲載中です)
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜
ありぽん
ファンタジー
社畜として働いていた大松祐介は、地球での30歳という短い寿命をまっとうし、天国で次の転生を待っていた。
そしてついに転生の日が。神によると祐介が次に暮らす世界は、ライトノベルような魔法や剣が使われ、見たこともない魔獣が溢れる世界らしく。
神の話しにワクワクしながら、新しい世界では仕事に追われずスローライフを送るぞ、思いながら、神によって記憶を消され、新しい世界へと転生した祐介。
しかし神のミスで、記憶はそのまま。挙句何故か森の中へ転生させられてしまい。赤ん坊姿のため、何も出来ず慌てる祐介。
そんな祐介の元に、赤ん坊の祐介の手よりも小さい蝶と、同じくらいの大きさのスライムが現れ、何故か懐かれることに。
しかしここでまた問題が。今度はゴブリンが襲ってきたのだ。転生したばかりなのに、新しい人生はもう終わりなのか? そう諦めかけたその時……!?
これは異世界でスローライフ?を目指したい、大松祐介の異世界物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる