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第16話  猫のような

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  翌朝。
 俺たちは、王都の宿屋から出た。
 食料を買い込むと、王都の北に位置する森に向かう。

「新しい戦斧♪ 綺麗な戦斧♪ 頬ずりしたくなるにゃ~」

 フローラが、歌を歌いながら新品の戦斧に頬ずりする。

「もう既に頬ずりしているじゃありませんか」

 ルイズが、苦笑する。

「ん。綺麗だから頬ずりしたくなる気持ちも分かる」

 エルフリーデが、無表情のまま言う。
 猫神族の美少女は、アダマンタイトの戦斧が本当にお気に召したようだ。
 肌身離さず持って、ずっと抱きしめるように抱えて歩いている。

「使うのが勿体ないから素手で闘うとか言わないでくれよ」

 俺が笑いながら言う。
 フローラがビクリと猫耳を立てた。

「……にゃ、にゃんで分かったの?」

 図星だったのか。ジョークのつもりだったのに。

「フローラ、綺麗な戦斧で勿体ないのは分かりますが、あくまで武器ですよ?」
「ん。使わないと意味が無い」
「で、でも~、こんなに綺麗なのに傷がついたら、可哀想だにゃ~」

 フローラが我が子を抱きしめるように戦斧をかばう。
 シュールな光景だな~。

「それに今の私なら、多分、素手でも相当強いと思うよ?」

 紅茶色の髪の猫神族の美少女が真剣な顔をする。

「まあ、フローラの身体能力からすれば素手でも相当強いだろうな」

 俺は頬をかいた。

「で、でしょ? だったら、戦斧は大事にしまっておいて、私は素手で闘う!」

 戦斧をしまっておくなんて初めて聞いた。なんて、斬新なアイデアだ。

「でも、素手だとフローラの拳が痛む可能性がある。それに素手と戦斧だと攻撃力が桁違いだ。やっぱり、戦斧を使った方が良いと思うぞ」
「にゃ~、でもぉ~」

 俺が忠告して、フローラは悲しそうな顔をする。
 う~ん。
 これは予想外の事態だ。
 ちゃんと説得しないとな。

「フローラ、もし戦斧を使わずにフローラが怪我をしたら、俺もルイズも、エルフリーデもとても悲しいし、心配する」
「う、……うん」

 フローラが、しっかりと俺の話を聞く。 

 翠緑色《エメラルドグリーン》の瞳の美少女は、素直な性格なので、ちゃんと人の話を聞いてくれる。

「その戦斧は綺麗だし、大事にしたくなる気持ちは分かるよ? でも、肝心のフローラが怪我をしたら大変だ。お願いだから、ちゃんと戦斧を使って欲しい。頼むよ」

 俺がフローラを真っ直ぐに見つめて言うと、フローラは頬を染めて翠緑色《エメラルドグリーン》の瞳をそらした。

「にゃー、う~、わ、分かったよ。カインの言うとおりにする……」
「ありがとう」

 俺は歩きながらフローラの頭を撫でた。

「にゃ~」

 紅茶色の髪の美少女は目を細めて嬉しそうに喉を鳴らす。
 猫みたいだな。いや、猫神族だから当然かな?
 

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