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第四章 ヘタレ領主
第十四話 恋慕の情
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両腕にエリナとクレアをぶら下げながら、前後を駄姉妹に挟まれて工事を眺めていると、ふと気になった案件を思い出したので、駄姉妹に聞いてみる。
「そういや駄姉妹は、婚約指輪は本当に要らないのか?」
まだ叙爵式を経ていない為に爵位や領主としての立場はまだ仮ではあるが、叙爵の内定を得たと同時に駄姉妹との婚約は正式に認められている。
一度婚約指輪を用意すると言ったが断わられたのだが……。
「ええ、大丈夫ですわ旦那様」
「わたくしもですお兄様!」
「どうしてもエリナやクレアと同じ価格帯のものになるから普段から身に着けるにはお前らの身分じゃ厳しいってのもあるのか?」
「いいえ! 金額など問題ではありませんよ。旦那様のお気持ちは大変うれしく思います。でも今頂いても無駄になってしまいますから」
「無駄?」
「叙任式が終わりましたらクレア様とわたくしたち姉妹との結婚式を行う予定ですからね。今婚約指輪を頂いてもすぐに結婚指輪が必要になりますから。聞いておりませんか?」
「兄さま聞いてなかったんですか?」
「全く聞いてない上に、クレアはまだ十歳だろ」
「あれ? 私お兄ちゃんに話してなかったかも!」
「もう! 姉さま!」
「お兄様! 貴族の婚姻に年齢制限は無いのですよ。貴族が爵位を捨てて平民に嫁ぐ場合は、もちろん平民と同じ立場になるので十五歳以上の制限がありますが」
「は?」
「旦那様。婚姻政策を行うのに年齢制限は弊害になりますし、過去に六歳の貴族令嬢が九歳の王子に嫁いだ前例もございます。もちろん子を成す行為は若いうちは推奨されませんが」
「それで同時に結婚式か?」
「ええ、どうでしょうか? そろそろわたくしたち姉妹にも恋慕の情を抱かれたのではありませんか?」
「正直もう惚れてるし、俺なんかには勿体ない位のいい女だと思うけどなお前たち姉妹は。でもクレアはそれでいいのか? 俺としてはやはりクレアと先に結婚するのが筋だと思うし」
「私はクリス姉さまもシル姉さまも大好きですし、元々年齢の事もあって先に姉さまたちが結婚しても構わないと思っていたのですけど、どうしても私より先に結婚はできないと私の事を考えてくれましたしね。兄さまが貴族になればその年齢制限も無くなると聞きましたので、だったら一緒に式を挙げましょうと提案したのは私なんですよ」
「クレアがそういう気持ちなら俺としては否やは無い」
「兄さま! ありがとうございます!」
「旦那様ありがとう存じます!」
「お兄様! 嬉しいです!」
「よかったねクレア! クリスお姉ちゃん! シルお姉ちゃん!」
「はい姉さま!」
「「ありがとう存じますエリナ様」」
前後左右から嫁たちに挟まれて暑苦しい。
非常に柔らかいし良い匂いしかしないのだが、なんなんだろうこの嬉しいんだけど、なんとなく罪悪感もあるんだよな。
嫁同士で仲が良いからその辺りは助かるんだけど、果たして俺に複数の嫁を囲える甲斐性があるんだろうか?
『ペッ!』
「ほら、独身のブサイクなおっさんが俺達に嫉妬して、作業現場にツバ吐いてるからちょっとおとなしくしような!」
「「「はーい」」」
無論一生懸命働いてる人たちの前でイチャついてた俺が悪いから罰したりはしないんだけど、領主に向かって凄い度胸だな。
あのおっさん兵士に向いてるかもしれん。
忠誠度低そうだけど。
「今は問題無いみたいだけど、嫁同士で喧嘩したりとかそういうのは絶対にないようにな。あと俺に何か不満があればすぐ俺に言ってくれ。ヘタレ以外は治すように頑張るから」
「みんな仲良いし大丈夫だよ! でもお兄ちゃんはヘタレを治す気が無いんだね!」
えへへ! と右腕にぶら下がるエリナが俺にそう言ってくる。
「ま、一応治そうと頑張ってはいるんだがな。ヘタレとは一生の付き合いになりそうだ」
「そういえば兄さま、叙爵式には私もついて行きますからね!」
「うーん、託児所の方は大丈夫なのか? 弁当販売もあるしクレアがいなくなったら無理なんじゃね」
「アラン達が頑張るから行ってこいって言ってくれたんだよお兄ちゃん!」
「私のわがままでみんなに迷惑をかけちゃうのは気が引けるのですけど、みんなが是非行って来いと言ってくれたので甘えちゃいます!」
「しかし、道中の安全もわからないし、貴族の式典なんかに出て大丈夫なのか? 俺も非常に怪しいけど」
「お兄様、馬車も六人乗りのものを用意いたしますし、護衛も手練れを用意いたしますから道中の安全はお任せください」
「出発当日までには貴族の立ち振る舞いの勉強もして頂きますし、立ち振る舞いも大丈夫ですよ旦那様」
「わかった、新婚旅行みたいなもんだと思って嫁全員で王都に行くか」
「「「はい!」」」
「駄姉、服とかアクセサリーとか必要なのか? ファルケンブルク城に登城できるギリギリのレベルの服じゃまずそうだが」
「もうすでに前回の服と一緒に叙爵式で着る衣装は作らせておりますよ旦那様。無論エリナ様とクレア様の分もです」
「流石クリス、有能だな」
「ありがとう存じます旦那様。お役に立ててうれしいですわ」
しかし王都か。
嫌な予感しかしないんだが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて四章は終了です。ご愛読いただきありがとうございました!
五章からはファルケンブルクの町を飛び出して、ラインブルク王国へ向かうストーリーとなります(作中十日ほどで孤児院に戻ってきます)!
町を飛び出したトーマ君と新たに加わる新ヒロインに是非ご期待ください。
引き続き「ヘタレ転移者」をよろしくお願いいたします!
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
「そういや駄姉妹は、婚約指輪は本当に要らないのか?」
まだ叙爵式を経ていない為に爵位や領主としての立場はまだ仮ではあるが、叙爵の内定を得たと同時に駄姉妹との婚約は正式に認められている。
一度婚約指輪を用意すると言ったが断わられたのだが……。
「ええ、大丈夫ですわ旦那様」
「わたくしもですお兄様!」
「どうしてもエリナやクレアと同じ価格帯のものになるから普段から身に着けるにはお前らの身分じゃ厳しいってのもあるのか?」
「いいえ! 金額など問題ではありませんよ。旦那様のお気持ちは大変うれしく思います。でも今頂いても無駄になってしまいますから」
「無駄?」
「叙任式が終わりましたらクレア様とわたくしたち姉妹との結婚式を行う予定ですからね。今婚約指輪を頂いてもすぐに結婚指輪が必要になりますから。聞いておりませんか?」
「兄さま聞いてなかったんですか?」
「全く聞いてない上に、クレアはまだ十歳だろ」
「あれ? 私お兄ちゃんに話してなかったかも!」
「もう! 姉さま!」
「お兄様! 貴族の婚姻に年齢制限は無いのですよ。貴族が爵位を捨てて平民に嫁ぐ場合は、もちろん平民と同じ立場になるので十五歳以上の制限がありますが」
「は?」
「旦那様。婚姻政策を行うのに年齢制限は弊害になりますし、過去に六歳の貴族令嬢が九歳の王子に嫁いだ前例もございます。もちろん子を成す行為は若いうちは推奨されませんが」
「それで同時に結婚式か?」
「ええ、どうでしょうか? そろそろわたくしたち姉妹にも恋慕の情を抱かれたのではありませんか?」
「正直もう惚れてるし、俺なんかには勿体ない位のいい女だと思うけどなお前たち姉妹は。でもクレアはそれでいいのか? 俺としてはやはりクレアと先に結婚するのが筋だと思うし」
「私はクリス姉さまもシル姉さまも大好きですし、元々年齢の事もあって先に姉さまたちが結婚しても構わないと思っていたのですけど、どうしても私より先に結婚はできないと私の事を考えてくれましたしね。兄さまが貴族になればその年齢制限も無くなると聞きましたので、だったら一緒に式を挙げましょうと提案したのは私なんですよ」
「クレアがそういう気持ちなら俺としては否やは無い」
「兄さま! ありがとうございます!」
「旦那様ありがとう存じます!」
「お兄様! 嬉しいです!」
「よかったねクレア! クリスお姉ちゃん! シルお姉ちゃん!」
「はい姉さま!」
「「ありがとう存じますエリナ様」」
前後左右から嫁たちに挟まれて暑苦しい。
非常に柔らかいし良い匂いしかしないのだが、なんなんだろうこの嬉しいんだけど、なんとなく罪悪感もあるんだよな。
嫁同士で仲が良いからその辺りは助かるんだけど、果たして俺に複数の嫁を囲える甲斐性があるんだろうか?
『ペッ!』
「ほら、独身のブサイクなおっさんが俺達に嫉妬して、作業現場にツバ吐いてるからちょっとおとなしくしような!」
「「「はーい」」」
無論一生懸命働いてる人たちの前でイチャついてた俺が悪いから罰したりはしないんだけど、領主に向かって凄い度胸だな。
あのおっさん兵士に向いてるかもしれん。
忠誠度低そうだけど。
「今は問題無いみたいだけど、嫁同士で喧嘩したりとかそういうのは絶対にないようにな。あと俺に何か不満があればすぐ俺に言ってくれ。ヘタレ以外は治すように頑張るから」
「みんな仲良いし大丈夫だよ! でもお兄ちゃんはヘタレを治す気が無いんだね!」
えへへ! と右腕にぶら下がるエリナが俺にそう言ってくる。
「ま、一応治そうと頑張ってはいるんだがな。ヘタレとは一生の付き合いになりそうだ」
「そういえば兄さま、叙爵式には私もついて行きますからね!」
「うーん、託児所の方は大丈夫なのか? 弁当販売もあるしクレアがいなくなったら無理なんじゃね」
「アラン達が頑張るから行ってこいって言ってくれたんだよお兄ちゃん!」
「私のわがままでみんなに迷惑をかけちゃうのは気が引けるのですけど、みんなが是非行って来いと言ってくれたので甘えちゃいます!」
「しかし、道中の安全もわからないし、貴族の式典なんかに出て大丈夫なのか? 俺も非常に怪しいけど」
「お兄様、馬車も六人乗りのものを用意いたしますし、護衛も手練れを用意いたしますから道中の安全はお任せください」
「出発当日までには貴族の立ち振る舞いの勉強もして頂きますし、立ち振る舞いも大丈夫ですよ旦那様」
「わかった、新婚旅行みたいなもんだと思って嫁全員で王都に行くか」
「「「はい!」」」
「駄姉、服とかアクセサリーとか必要なのか? ファルケンブルク城に登城できるギリギリのレベルの服じゃまずそうだが」
「もうすでに前回の服と一緒に叙爵式で着る衣装は作らせておりますよ旦那様。無論エリナ様とクレア様の分もです」
「流石クリス、有能だな」
「ありがとう存じます旦那様。お役に立ててうれしいですわ」
しかし王都か。
嫌な予感しかしないんだが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
これにて四章は終了です。ご愛読いただきありがとうございました!
五章からはファルケンブルクの町を飛び出して、ラインブルク王国へ向かうストーリーとなります(作中十日ほどで孤児院に戻ってきます)!
町を飛び出したトーマ君と新たに加わる新ヒロインに是非ご期待ください。
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