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第四章 ヘタレ領主
第二話 縁切り
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「かしこまりましたわ。お父様、いえ……エルグランデ・グライスナー」
駄姉が親父を名で呼ぶ。
完全に見限ったのだろう。
交渉決裂だな。
正直駄姉妹がここまで子供たちの為に意見してくれるとは思わなかった。
そして正直ここまで領主が平民に対して差別意識を持っているとは思わなかった。
「クリスティアーネ? 今なんと申した?」
「トーマ様、領主エルグランデに対して何か仰りたいことはございますか?」
「待てクリスティアーネ! 父上はそこの平民に発言を許していないぞ!」
「兄上!」
「シルヴィアも控えよ!」
「私、いえ、俺が言いたいのは」
「私は発言を許してはいないぞ」
「お前の許可なんか要るかクソ領主! 臣下の顔色を窺って金貨数枚の予算すら通せない無能がここの領主とはな!」
「なんだと! この無礼者め! クリスティアーネ! シルヴィア! そこの平民を取り押さえよ!」
「お兄様! わたくしはあの二人を見限りました! ご指示を!」
「トーマ様! ご命令を! いえ、『やれ』と言って頂くだけで結構です!」
「すまんな、力を借りるぞクリス、シル。『やれ』!」
「「はい!」」
「シルヴィアはセドリックを取り押さえなさい! <風縛>!」
「はい、姉上! <氷の棺>!」
俺が即座に立ち上がりながら抜刀して指示を出すと駄姉、いやクリスが領主を風縛で拘束し、シルが長男セドリックの頭だけを残して氷の棺に閉じ込める。
「<極光の雷剣>!」
一期一振に仕込まれた魔法石の力を借り、サンダーブレードの上位魔法で刀身を延伸する雷魔法を行使して領主に向ける。
「クリス、風縛を解け」
「かしこまりました」
拘束を解かれた領主は、俺が向けた日本刀の切っ先に怯え、ただ震えている。
「クリス、城内の掌握はどこまで進んでいるんだ?」
「今侍女に命じて騎士団に行動を起こすように伝えました。すぐに城内の制圧に動くはずですわ旦那様」
旦那呼ばわりに突っ込む余裕がない。
正直ビビりまくってるが、駄姉に作法を聞いている時に、「騎士団は既に取り込み済みです。群臣の一部にも協力の内諾を得ております」と聞かされてなかったらここまでの行動は起こせなかった。
まさか本当にこんな事になるとはな。ヘタレな俺が革命か。
「シル! この謁見の間を封鎖しろ! 誰もここから出すなよ!」
「はいお兄様!」
「シルヴィア貴様、実の兄にこんなことをして、更に平民を兄呼ばわりとは!」
「黙れセドリック、わたくしは二度と貴様を兄とは思わん」
「ええい! お前たち何をしている! この不届き者どもを捕えよ!」
セドリックが謁見の間にいる護衛や侍女たちに捕縛命令を出すが
「おっと動くなよ! 動けば領主の首が即座に飛ぶぞ!」
俺が領主を人質に取り、護衛達の動きをけん制する。
というかこいつら領主姉妹の連れてきた俺だから油断したのか、武装解除もしないどころか抜刀したうえで魔法を行使して領主を拘束しても、驚くだけで全く動けなかった無能だからな。
多分脅さなくても何もできないだろう。
「そしてエルクランデとセドリック、今後俺の許可なく喋ることを一切禁止する」
「なっ!」
「シル、まだ状況がわかっていないようだぞ、お前の兄だった男は」
「はっ」
シルヴィアが自身の愛刀、一期一振影打をセドリックの首にあてる。
剃刀のような斬れ味を持つ刃をあてられ、セドリックの首から一筋の血が流れる。
「警告だ、次に喋ったら胴から首が離れるぞ」
「っ……」
とりあえず膠着状態に持ち込んだ俺達は、まずは最初の難関を突破したと言っていいだろう。
大きく深呼吸をすると、先程の発言で怒り心頭だった俺の頭が冷静になる。
「どうしてこうなった?」
「流石わたくしの夫ですね。とても素敵でしたわ!」
クリスが真っ赤な顔で俺の腕に絡んでくる。
こいつ鎧をつけていないのに胸部装甲の圧力が凄い。
「とにかくこうなった以上、もう引くに引けん。内部工作はどこまで済んでいるんだ? いつもの侍女を呼んで城内の状況を逐次知らせろ」
「かしこまりました旦那様」
そういって顔を横に背けると、いつの間にかクリスの横にいつもの侍女が控えていて、小声でクリスに報告する。
クリスが更に指示を与えると、その侍女は一瞬で姿を消す。
忍者みたいなもんかと無理やり納得して深く追求することはしない。
「賛同者は予想以上に多いようです。一、二時間もすれば城内の反対勢力は全て降伏するでしょう」
「誰も殺してないよな?」
「もちろんですわ旦那様。旦那様の望まぬことを妻であるわたくしが行うわけがありません」
「なんで妻なの?」
「ファルケンブルク領を統治するために必要ですからね」
「お前が領主になればいいだろう、優秀だしな」
「あら? 革命を主導しておいて逃げるのですか? ヘタレですわね」
「主導って、『やれ』ってやつか?」
「その通りですわ。わたくしども姉妹は旦那様の命によって革命を起こしましたから」
「……正妻はエリナ、二番目はクレアというのは譲れない。あとはもうお前たちで話し合ってくれ」
「ふふふっ。旦那様のそういう所にもわたくし惚れたのですよ」
「チョロいなー俺って」
「姉上! 三番目はわたくしです!」
「姉を差し置いてそれは許されませんわシルヴィア」
「姉妹喧嘩は終わってからにしろ駄姉妹」
「かしこまりました旦那様」
「はい、お兄様」
緊張感無いのなこの駄姉妹。
一応お前らの父親と兄貴に脅しをかけてる最中なんだが。
駄姉が親父を名で呼ぶ。
完全に見限ったのだろう。
交渉決裂だな。
正直駄姉妹がここまで子供たちの為に意見してくれるとは思わなかった。
そして正直ここまで領主が平民に対して差別意識を持っているとは思わなかった。
「クリスティアーネ? 今なんと申した?」
「トーマ様、領主エルグランデに対して何か仰りたいことはございますか?」
「待てクリスティアーネ! 父上はそこの平民に発言を許していないぞ!」
「兄上!」
「シルヴィアも控えよ!」
「私、いえ、俺が言いたいのは」
「私は発言を許してはいないぞ」
「お前の許可なんか要るかクソ領主! 臣下の顔色を窺って金貨数枚の予算すら通せない無能がここの領主とはな!」
「なんだと! この無礼者め! クリスティアーネ! シルヴィア! そこの平民を取り押さえよ!」
「お兄様! わたくしはあの二人を見限りました! ご指示を!」
「トーマ様! ご命令を! いえ、『やれ』と言って頂くだけで結構です!」
「すまんな、力を借りるぞクリス、シル。『やれ』!」
「「はい!」」
「シルヴィアはセドリックを取り押さえなさい! <風縛>!」
「はい、姉上! <氷の棺>!」
俺が即座に立ち上がりながら抜刀して指示を出すと駄姉、いやクリスが領主を風縛で拘束し、シルが長男セドリックの頭だけを残して氷の棺に閉じ込める。
「<極光の雷剣>!」
一期一振に仕込まれた魔法石の力を借り、サンダーブレードの上位魔法で刀身を延伸する雷魔法を行使して領主に向ける。
「クリス、風縛を解け」
「かしこまりました」
拘束を解かれた領主は、俺が向けた日本刀の切っ先に怯え、ただ震えている。
「クリス、城内の掌握はどこまで進んでいるんだ?」
「今侍女に命じて騎士団に行動を起こすように伝えました。すぐに城内の制圧に動くはずですわ旦那様」
旦那呼ばわりに突っ込む余裕がない。
正直ビビりまくってるが、駄姉に作法を聞いている時に、「騎士団は既に取り込み済みです。群臣の一部にも協力の内諾を得ております」と聞かされてなかったらここまでの行動は起こせなかった。
まさか本当にこんな事になるとはな。ヘタレな俺が革命か。
「シル! この謁見の間を封鎖しろ! 誰もここから出すなよ!」
「はいお兄様!」
「シルヴィア貴様、実の兄にこんなことをして、更に平民を兄呼ばわりとは!」
「黙れセドリック、わたくしは二度と貴様を兄とは思わん」
「ええい! お前たち何をしている! この不届き者どもを捕えよ!」
セドリックが謁見の間にいる護衛や侍女たちに捕縛命令を出すが
「おっと動くなよ! 動けば領主の首が即座に飛ぶぞ!」
俺が領主を人質に取り、護衛達の動きをけん制する。
というかこいつら領主姉妹の連れてきた俺だから油断したのか、武装解除もしないどころか抜刀したうえで魔法を行使して領主を拘束しても、驚くだけで全く動けなかった無能だからな。
多分脅さなくても何もできないだろう。
「そしてエルクランデとセドリック、今後俺の許可なく喋ることを一切禁止する」
「なっ!」
「シル、まだ状況がわかっていないようだぞ、お前の兄だった男は」
「はっ」
シルヴィアが自身の愛刀、一期一振影打をセドリックの首にあてる。
剃刀のような斬れ味を持つ刃をあてられ、セドリックの首から一筋の血が流れる。
「警告だ、次に喋ったら胴から首が離れるぞ」
「っ……」
とりあえず膠着状態に持ち込んだ俺達は、まずは最初の難関を突破したと言っていいだろう。
大きく深呼吸をすると、先程の発言で怒り心頭だった俺の頭が冷静になる。
「どうしてこうなった?」
「流石わたくしの夫ですね。とても素敵でしたわ!」
クリスが真っ赤な顔で俺の腕に絡んでくる。
こいつ鎧をつけていないのに胸部装甲の圧力が凄い。
「とにかくこうなった以上、もう引くに引けん。内部工作はどこまで済んでいるんだ? いつもの侍女を呼んで城内の状況を逐次知らせろ」
「かしこまりました旦那様」
そういって顔を横に背けると、いつの間にかクリスの横にいつもの侍女が控えていて、小声でクリスに報告する。
クリスが更に指示を与えると、その侍女は一瞬で姿を消す。
忍者みたいなもんかと無理やり納得して深く追求することはしない。
「賛同者は予想以上に多いようです。一、二時間もすれば城内の反対勢力は全て降伏するでしょう」
「誰も殺してないよな?」
「もちろんですわ旦那様。旦那様の望まぬことを妻であるわたくしが行うわけがありません」
「なんで妻なの?」
「ファルケンブルク領を統治するために必要ですからね」
「お前が領主になればいいだろう、優秀だしな」
「あら? 革命を主導しておいて逃げるのですか? ヘタレですわね」
「主導って、『やれ』ってやつか?」
「その通りですわ。わたくしども姉妹は旦那様の命によって革命を起こしましたから」
「……正妻はエリナ、二番目はクレアというのは譲れない。あとはもうお前たちで話し合ってくれ」
「ふふふっ。旦那様のそういう所にもわたくし惚れたのですよ」
「チョロいなー俺って」
「姉上! 三番目はわたくしです!」
「姉を差し置いてそれは許されませんわシルヴィア」
「姉妹喧嘩は終わってからにしろ駄姉妹」
「かしこまりました旦那様」
「はい、お兄様」
緊張感無いのなこの駄姉妹。
一応お前らの父親と兄貴に脅しをかけてる最中なんだが。
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