このやってられない世界で

みなせ

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 先頭車両からやっぱりカークに持ち上げられて運ばれた先は、最後尾に一両まるごと使ったカーク専用の客車だった。

 彫の入った木製の二重扉をくぐると、壁がほぼガラスで出来た部屋があって、振り返った扉側にはカウンターキッチンが付いていた。
 毛足の長い絨毯の真ん中に、ソファーとテーブル。その奥にベッドとバス・トイレスペースがあって、今はカーテンで隠されている。

 カークは私を当たり前のように横抱きにして、ソファーに腰掛けた。

「カーク、そろそろ離して欲しいんだけど」

 本当は適当に挨拶したら、すぐに部屋へ籠ろうと思ってた。
 出来るだけカークとは接触したくなかったから。

「嫌だ。まだこうしていたい」

 カークはそんな私を覗きこんで、駄々っ子みたいにそう言った。

「ずっと、ずっと会いたかった。声は聞けたけど顔は見せてくれなかったし、なかなか連絡もくれないし、心配でいてもたってもいられなかった。だから、父に無理を言って迎えに来たんだ。やっと会えたんだ。今はキーラがここにいるって感じていたい」

 って、さらに強く抱きしめられた。
 ヤバイ、このままじゃ圧迫死する。
 仕方が無い、甘んじてこの体制を受け入れよう。

「分かった……我慢する」
「我慢?」

 言った途端にカークの手が緩んだ。

「そんなに、嫌?」
「嫌って言うか、もう子供じゃないんだから、持ち運ばれたり、こうされる意味が分からない」
「そうか……なら理由があればいいか?」

 そんなものあるもんかって思うけど、言いくるめられそうだ。よし、一応理由を聞いてみよう。
 私が疑ってますよって目で見ながら頷くと、カークはいい笑顔になった。

「キーラの魔力、あちこちで滞ってる。ほっておいてもそのうち治るけど、こうしていないときっと具合が悪くなると思う」
「なると思うって、私、どこも悪くないよ」
「今はね。私も調整してるから」

 そうニコニコしながら言うんだよ。嘘っぽいよね。

「調整って何? そんなの信じられない」
「うーん。なら、少し離れてみる?」
「うん」

 頷くと同時にカークの手が離れたので、私はさっさと立ちあがって、向かいのソファーまで逃げた。

「キーラ」
「大丈夫、何処も何ともないよ」

 カークが寂しそうな顔をしてるけど無視無視。
 大体これが正しいソファーの使い方だ。

「しょうがないな。具合が悪くなったら言ってくれ」
「分かった。でもそんなことにはならないよ」
「だといいけれどね……あぁ、でもちょうどよかった。そろそろ地下に入るころだ」
「地下?」
「ちょっとまってくれ」

 カークはそう言って窓の外を見た。そしてひらりと手を振った。

「これでいい」
「何したの?」
「地下への道を開いたんだ。しばらく外は見えなくなるから、見ておくといい」

 と、言われても外は草原で平原で、別に珍しいモノがあるわけでもない。目を瞬かせていると、窓の外が急にトンネルに入ったみたいに暗くなった。

「これで、しばらくは安全だ」
「……ねぇ、カーク。危険とか安全とか、どういうこと? 地下を通るのと何か関係あるの?」
「あぁ、ある。草原だと狙ってくれって言ってるようなものだ。戦いやすいが守りにくい。進路を変えるにも限界がある。その点、地下なら進む方向を読まれにくいから、攻撃も受けにくい。それに逃がしやすいからね」
「その言い方だと誰かが、誰かを狙ってるの?」
「狙われてるのはキーラだ。そして狙ってるのはジョシュア。キーラが帰る前に捕まえられれば良かったんだけど、上手く隠れられてね」

 カークはそう肩をすくめた。

















※※※ ※※※ ※※※ ※※※ 

おかしい、書きたい方向に進まない……
どうしてだろう?

すみません、まだまだだらだら続きます。
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