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カークから逃れようと、がっつり回った腕と格闘していると、進行方向の扉が開いた。
「お前ら、いつまでもいちゃいちゃしてるんじゃねーよ」
なんて言われて、そちらを見れば、物凄く嫌そうな表情のケビンが立っていた。
「ケビン!」
「よっ、キーラ、久しぶりだな」
「うん、久しぶり……ずっとルテルで待っててくれたんでしょ。おかげで……」
「キーラ、いろいろ聞きたいことあるが、それは後でな」
感謝を伝えようと思ったのに、簡単に遮られた。
「カーク、そろそろトンネルを抜ける。担当官が待ってるぞ」
「あぁ、分かった、すぐ行く」
「まったく、いちゃいちゃするなら部屋でやれ。ベルもないからみんな声かけられなくて困るだろう」
「そう言うな。やっと会えたんだから。仕方が無いだろう」
やっと離してもらえると思ったのに、カークはそう言いながら私を持ち上げた。
「ちょっと!」
「先頭車両まで結構あるんだ。せっかくだから案内するよ」
「そうじゃなくっ!」
一生懸命暴れたけど、全然効果なし。
カークは私を抱えたまま、足取りも軽く進行方向へ歩き出した。
ケビンが入ってきた扉を抜けると、バルトルさんとミリアさん、職員らしき人たちが何人か、気不味そうに顔をそむけて立っていた。
――――ちょっとこれって、見られてたってこと?
嫌な予感にケビンを見れば、呆れたって顔をされた。
「お前らがいちゃついてるから声かけられないって、俺が呼ばれたんだ。次から気をつけろ」
って小声で言われたけど、それはカークに言って欲しい。私はちゃんと逃げるつもりだったんだから。
車両を抜けるたび、すれ違う人の目が気になる。
カークはちっとも気にしていないみたいだけど、すれ違う人の笑顔が引きつってるよ。
恥ずかしくて俯いていると、いつの間にか先頭車両に着いたらしい。
他の車両と違う両開きの扉が開くと、前面がガラス張りの車両に出た。
内装はアンティークな感じで、左右に据え付けのソファータイプの椅子が二脚ずつ置かれた以外、何もない。
前方の窓の外はまだトンネルの中らしく、真っ暗闇に線路らしい二本の光る線がだけが見えた。
「殿下、お待ちしていました。あと五分ほどでトンネルを抜けます」
数人の職員らしき人の一人が、こちらを見ると同時にそう言った。
カークはそれに頷いて、私を椅子の傍に下ろした。
「キーラはここに座っていて」
「ねぇ、何が始まるの?」
カークに言われて、遠慮なく立派な椅子に腰かけながら、二人を見上げる。
「ちょっと進路を変えるんだ」
「進路?」
「あぁ、せっかくこっちに来たからね。遠回りになるけどオンリンナ家の領地をキーラに見せたいと思ってね」
「オンリンナの領地ってこっち側なの?」
言いながら思い出したのは、アーサーから教えてもらってつけていた領地に関しての帳簿。
領地から送られてくる報告書から数字を埋めてたけど、何処にあるとか詳しいことは覚えてない。
「そうだよ。どうせ自分の領地の場所なんて知らないだろう。だからこれを機に知っていた方がいいと思ってね」
「うん。でもわざわざ行かなくても」
「わざわざってわけでもない。このままの進路だとちょっと危険だから、ついでみたいなものだ」
うわっ、今度は危険だって。
思わず顔をしかめる。
「殿下、そろそろです」
何か言いかけたところで、職員さんがそう声をかけてきた。
カークは肩をすくめて、
「キーラ、後で詳しく教えるから」
と、車両の一番前へと行ってしまった。
魔法使いが進路を変えるってのは知ってるけど、わざわざカークが呼ばれるのって。
「ケビン、もしかしてカークが進路を変えるの?」
「あぁ、そうだ」
「出来るの?」
ちょっと心配になってそう聞くと、ケビンは少し笑った。
「まぁ、見てなって、ほら、始まるぞ」
ケビンが前方を指差すと、光る線路しか見えなかった景色の向こうに、出愚痴らしい光が見える。
カークは車両の三分の一辺りに立つと、ひらりと手を振った。
一度目で、ガラスに白く光るぐにゃぐにゃした線で出来た四角形が浮かび上がった。
二度目で、四角形のほぼ真ん中に赤い点が。
三度目で、緑色の点があちこちに、不規則に。
四度目で、青い線が四角の下、中央部分から赤い点に向かって真っすぐに伸びる。
五度目で、青い線の始点の部分に黄色い点が打たれた。
「ケビン、あれ、何?」
「あれか、あれはフォルナトルの地図だ。白い線が国境だ。赤い点が王都。緑の点は街。青い線が現在の列車の進路で、黄色い点が現在地だ」
ケビンの説明にもう一度、ガラスの上の絵を見ると、確かにいつか教科書で見たフォルナトルの地図と似ている気がする。
カークが、また手を振った。
六度目は、黄色い点から赤い線が出て、青い線の上を少し進んでから右に大きく曲がった。そしてすぐ紫色に変わり、白い線のぎりぎりまで近付いて止まった。
「こんな感じだな」
カークがそう手を下すと、職員が近付いて声をかけた。
「町は通らないのですね」
「あぁ、その方が危険が少ない。それと、微調整がしやすいだろう」
「そうですね。ありがとうございます。後は私たちが」
「あぁ、よろしく頼む。だが地下に入る時はこちらで調整する。多分、一時間後くらいだ」
「分かりました」
職員が頷くと、ちょうど列車がトンネルを出て、山と山の間を進み始めた。
ルキッシュとも、ルテルとも違う太陽の光が車内を照らす。
「ケビン、今、地下って言ってなかった?」
「あぁ、言ったな」
「地下?」
「あぁ、地下だ。フォルナトルの地下は結構入り組んでるから、線路を作るのが難しい。だからカークが進路変更したんだ」
「ちょっと、ちゃんと説明して」
地下って、穴が無いと駄目でしょ。
どうやって穴を掘って、線路作るのよっ!
魔法って一言で片づけないでよ。
ってケビンを睨んだけど、
「面倒だから、カークに聞け」
だって。
※※※※※
最近無駄に長いです。
1500~2000縛り……復活させたい。
「お前ら、いつまでもいちゃいちゃしてるんじゃねーよ」
なんて言われて、そちらを見れば、物凄く嫌そうな表情のケビンが立っていた。
「ケビン!」
「よっ、キーラ、久しぶりだな」
「うん、久しぶり……ずっとルテルで待っててくれたんでしょ。おかげで……」
「キーラ、いろいろ聞きたいことあるが、それは後でな」
感謝を伝えようと思ったのに、簡単に遮られた。
「カーク、そろそろトンネルを抜ける。担当官が待ってるぞ」
「あぁ、分かった、すぐ行く」
「まったく、いちゃいちゃするなら部屋でやれ。ベルもないからみんな声かけられなくて困るだろう」
「そう言うな。やっと会えたんだから。仕方が無いだろう」
やっと離してもらえると思ったのに、カークはそう言いながら私を持ち上げた。
「ちょっと!」
「先頭車両まで結構あるんだ。せっかくだから案内するよ」
「そうじゃなくっ!」
一生懸命暴れたけど、全然効果なし。
カークは私を抱えたまま、足取りも軽く進行方向へ歩き出した。
ケビンが入ってきた扉を抜けると、バルトルさんとミリアさん、職員らしき人たちが何人か、気不味そうに顔をそむけて立っていた。
――――ちょっとこれって、見られてたってこと?
嫌な予感にケビンを見れば、呆れたって顔をされた。
「お前らがいちゃついてるから声かけられないって、俺が呼ばれたんだ。次から気をつけろ」
って小声で言われたけど、それはカークに言って欲しい。私はちゃんと逃げるつもりだったんだから。
車両を抜けるたび、すれ違う人の目が気になる。
カークはちっとも気にしていないみたいだけど、すれ違う人の笑顔が引きつってるよ。
恥ずかしくて俯いていると、いつの間にか先頭車両に着いたらしい。
他の車両と違う両開きの扉が開くと、前面がガラス張りの車両に出た。
内装はアンティークな感じで、左右に据え付けのソファータイプの椅子が二脚ずつ置かれた以外、何もない。
前方の窓の外はまだトンネルの中らしく、真っ暗闇に線路らしい二本の光る線がだけが見えた。
「殿下、お待ちしていました。あと五分ほどでトンネルを抜けます」
数人の職員らしき人の一人が、こちらを見ると同時にそう言った。
カークはそれに頷いて、私を椅子の傍に下ろした。
「キーラはここに座っていて」
「ねぇ、何が始まるの?」
カークに言われて、遠慮なく立派な椅子に腰かけながら、二人を見上げる。
「ちょっと進路を変えるんだ」
「進路?」
「あぁ、せっかくこっちに来たからね。遠回りになるけどオンリンナ家の領地をキーラに見せたいと思ってね」
「オンリンナの領地ってこっち側なの?」
言いながら思い出したのは、アーサーから教えてもらってつけていた領地に関しての帳簿。
領地から送られてくる報告書から数字を埋めてたけど、何処にあるとか詳しいことは覚えてない。
「そうだよ。どうせ自分の領地の場所なんて知らないだろう。だからこれを機に知っていた方がいいと思ってね」
「うん。でもわざわざ行かなくても」
「わざわざってわけでもない。このままの進路だとちょっと危険だから、ついでみたいなものだ」
うわっ、今度は危険だって。
思わず顔をしかめる。
「殿下、そろそろです」
何か言いかけたところで、職員さんがそう声をかけてきた。
カークは肩をすくめて、
「キーラ、後で詳しく教えるから」
と、車両の一番前へと行ってしまった。
魔法使いが進路を変えるってのは知ってるけど、わざわざカークが呼ばれるのって。
「ケビン、もしかしてカークが進路を変えるの?」
「あぁ、そうだ」
「出来るの?」
ちょっと心配になってそう聞くと、ケビンは少し笑った。
「まぁ、見てなって、ほら、始まるぞ」
ケビンが前方を指差すと、光る線路しか見えなかった景色の向こうに、出愚痴らしい光が見える。
カークは車両の三分の一辺りに立つと、ひらりと手を振った。
一度目で、ガラスに白く光るぐにゃぐにゃした線で出来た四角形が浮かび上がった。
二度目で、四角形のほぼ真ん中に赤い点が。
三度目で、緑色の点があちこちに、不規則に。
四度目で、青い線が四角の下、中央部分から赤い点に向かって真っすぐに伸びる。
五度目で、青い線の始点の部分に黄色い点が打たれた。
「ケビン、あれ、何?」
「あれか、あれはフォルナトルの地図だ。白い線が国境だ。赤い点が王都。緑の点は街。青い線が現在の列車の進路で、黄色い点が現在地だ」
ケビンの説明にもう一度、ガラスの上の絵を見ると、確かにいつか教科書で見たフォルナトルの地図と似ている気がする。
カークが、また手を振った。
六度目は、黄色い点から赤い線が出て、青い線の上を少し進んでから右に大きく曲がった。そしてすぐ紫色に変わり、白い線のぎりぎりまで近付いて止まった。
「こんな感じだな」
カークがそう手を下すと、職員が近付いて声をかけた。
「町は通らないのですね」
「あぁ、その方が危険が少ない。それと、微調整がしやすいだろう」
「そうですね。ありがとうございます。後は私たちが」
「あぁ、よろしく頼む。だが地下に入る時はこちらで調整する。多分、一時間後くらいだ」
「分かりました」
職員が頷くと、ちょうど列車がトンネルを出て、山と山の間を進み始めた。
ルキッシュとも、ルテルとも違う太陽の光が車内を照らす。
「ケビン、今、地下って言ってなかった?」
「あぁ、言ったな」
「地下?」
「あぁ、地下だ。フォルナトルの地下は結構入り組んでるから、線路を作るのが難しい。だからカークが進路変更したんだ」
「ちょっと、ちゃんと説明して」
地下って、穴が無いと駄目でしょ。
どうやって穴を掘って、線路作るのよっ!
魔法って一言で片づけないでよ。
ってケビンを睨んだけど、
「面倒だから、カークに聞け」
だって。
※※※※※
最近無駄に長いです。
1500~2000縛り……復活させたい。
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