このやってられない世界で

みなせ

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【ん? キーラは、私たちが黒いものが見える理由分かってるのか?】

 適当に考えていて出た言葉に、カークが喰いついた。

「分かるって言うか、なんとなくなんだけど、予言に関係ある人と、ない人……じゃないかなって思ったんだけど」
【ん?】
「見えるのは私と、カークとデリックでしょ」
【……あぁ、そうか、そう言えばそうだな】

 少し考えてから、カークが頷いた。

「でも、お父さんって、予言に関係ないよね?」
【関係ないのか?】
「うーん。私が知っている分では、お父さん出てこないよ。でも、見えたから、ピーちゃんと一緒にいたから見えるのかなって……思ったけど」
【けど?】
「……その前から見えてたの思い出した」
【その前?】
「デリックが私を叩いた時……あの時お父さんは私の側にいて、デリックの腕に黒い靄がかかっていたのを見てたんだよね」
【それは、ルキッシュ王も、予言に関係あるってことか?】

 と、聞かれても、

「うーん、関係あるのかなぁ?」

 いろいろこんがらがっていて、私もよく分からないから首を傾げる。

――――大体、キーラのお父さんって、ゲームでもラーシュがお父さんだったっけ?

 私が覚えている、キーラの記憶では、父親はチェルノと言うことになっていた。
 ラーシュと言う“お父さん”が出てくる事は無い。

「ねぇ、カーク、カークの知ってる予言で、ラスボスとの戦いの記録ってある?」
【ラスボス? 戦い?】
「えーっと、私……キーラって、話の途中でカーク達と戦うでしょ?」
【……戦わない】
「分かってる、予言の話だよ。で、キーラを倒した後、もう一回戦う事になってるよね?」
【ちょっと待ってくれ】

 カークがそう言って固まる。
 何か考えているのか、思い出しているのか。

【……そうだな。闇の存在を倒す、とあるな】
「その詳しい内容って分かる?」
【……詳しい内容?】
「それが誰かとか、どんなものか、とか」

 カークがまた固まった。暫く止まって、首を振った。

【……すまない、少し量が多い。すぐには精査出来ない……明日までに調べておくよ】
「明日……」
【嫌か?】

 うん、面倒……って言ったらまた怒るよね。

「……ううん。いいけど……」
【すごく嫌そうだけど、私と話すのが嫌なのか?】
「えーっとそうじゃなくて……」

 凄く悲しそうな声に罪悪感。理由くらい教えたほうがいいのかな。

「ちょっと諸事情により、今の姿をカークに見せなくない」
【……何で?】
「何でって……」
【キーラの風貌が少し違っていたって父から聞いたよ。そのせい?】
「うん」

 やっぱり陛下、そう言った事も話してるんだ。

【どう変わったかは聞いてないけど、すごく綺麗だって言っていた】
「……そんなことないよ」
【じゃあ、そのフード取って見せて】
「ヤダ」
【何で……父には見せたのに?】

 あの時は急でそこまで気が回らなかったから……。

「……だって、恥ずかしい」
【……恥ずかしいって】
「カークには分からないよ」

 ムッとしてそう言うと、肩をすくめる仕草の後、ため息が聞こえた。

【……そうか……】
「ごめん」
【いや、キーラが嫌ならしょうがない……他に何かある?】

 カークはあっさりと話題を元に戻した。
 もうそろそろ通信が切れるころなのかもしれない。

「キーラのお父さんが予言では誰になってるかも、調べてほしい」
【キーラの父はルキッシュ王だろう?】
「今はそうだけど、多分予言ではチェルノになってるんじゃないかなって思う」
【チェルノは……】
「分かってる、でも一応調べて。なんか気になるから」
【分かった……明日もこれくらいの時間でいい?】

 やっぱり明日も……なんだ。

「うん」
【気が向いたら、そのマントはやめてほしい】

 いや、たぶんそれは無理。
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