このやってられない世界で

みなせ

文字の大きさ
上 下
283 / 336

283

しおりを挟む
 カークが陛下からどこまで聞いているか分からないけど、とにかく説明を始める。ピーちゃんの話はもう何回も話しているから、すらすらと言葉は出てくる。
 思ったより簡潔に要点は伝えられたはずだ。
 カークはずっと黙って聞いていて、それがあまりにも無反応だから、本当にちゃんと聞いているのかとこっちが不安になるくらいだった。
 長い話をしてる時は、相槌は欲しいよね。

 で、最後まで話し終わっての一言目が、

【ふうん】

 だって。

「ふうんって、他に感想はないの?」
【感想……と言われても……】
「カークなら何か分かるんじゃないかって言うから、わざわざこうして連絡したのに」

 したくないのにもの凄く我慢して連絡をして、一生懸命話をしたのに、なに? その興味なさそうな返事。

【したのにって、ピーちゃんの事がなければ、連絡しないつもりだったの?】
「そ……そんなことないよ。だから今日、ちゃんと連絡したじゃない」

 図星を指されて、少し焦る。慌ててそう言ったけど、カークはまた、ふうん、って言った。

「ねぇ、カーク、その“ふうん”って何? ……他に何か言うことないの?」
【……キーラ、もしかして怒ってるの?】
「怒ってないよ。その“ふうん”って言うのが気になるだけ」

 その言い方が、何だかとってもいらつくんだよね。

【……ふう】
「ほら! また!」
【……ごめん。もう言わない……ようにする。でもキーラだって悪いよ。昨日連絡くれるって約束したのに連絡くれないし……】
「れ、連絡は気が向いたらって言ったじゃない!」
【そう言うと思って、いつ連絡が来てもいいように、私はこうしていつもブレスレットを身につけて魔力を通して連絡が来るのを待っていたんだ。それなのにやっと連絡が来たと思ったら変なマント被って顔も見せてくれないし、言い訳してくれない】
「そ、それは……」
【その上……】
「まだあるの!?」
【あるよ】

 カークは抑揚なくそう言って続けた。

【キーラがフォルナトルに帰ってこないつもりだなんて言われて、連絡が来るまで、私がどんな気持ちで待っていたか分かるかい?】

 抑揚ない応えだからこそ、その感情が分かりやすい。

【……この間の通信だって、途中で切れてしまったし、父の話を聞いて、あぁ、本当に嫌われたのかもしれないと思ったよ。なのに父はキーラがフォルナトルに帰ってくるように説得しろって言う。もし嫌われていたら、説得なんて出来るわけがないのに】
「……もしかしてカーク、怒ってるの?」

 もしかしなくても怒っていると思うけど。

【そうだね、怒ってるよ】

 間髪いれずに答えられる。今度はちゃんと怒っている口調だ。
 これって謝った方がいいのかな。でも、私何か悪いことした?

「……連絡が遅くなったのは謝るよ。でも、フォルナトルに帰らないって言ったのはそっちが戦争してるからで、カークとは関係ないよ。誰が悪いって言ったら、リーナが悪いと思う」

 少しムッとしながら言うと、カークは大きくため息をついた。

【リーナが悪い、ね……そうだね。リーナが悪い……】

 今度は呆れたように首を振った。

【……キーラは私を嫌いにならない?】
「嫌いには……ならないよ」

 多分、と言うのを飲み込んで首を傾げると、カークも同じように首を傾げた。

【そう。か】
「そうだよ。だから、ピーちゃん見て」

 私もだけど、カークも落ち着いたみたいだから、そう振ってみる。

【あぁ、ピーちゃんか。少し遠いな。その瓶をこっちに近づけること出来るか?】
「うーん、私瓶に触っちゃいけないってお父さんに言われてるから……誰か呼んで」
【あぁ、魔力がとられるのか……ブレスレットを……】

 言いかけて、止まる。そしてそのまま暫くピーちゃんの方を見て。

【……緑色の鳥じゃなくなったのか】

 え、今更?

【うーん、見た目はただの鳥だな。全体の感じも、前のピーちゃんとあまり変わってないな】
「そう、なんだ」
【……黒いものを食べたんだよね】
「うん。結構な量を食べたと思う」
【黒いもの……あぁ、そうだ。その黒いものなんだけれど、見える人と見えない人がいるみたいなんだ】
「そうなの?」
【あぁ。ミランダの魔石を展開した時黒い霧が出ていたろう?】
「うん」
【あの時、黒い霧としてアレを認識してたのは、私とキーラ、ケビンだけだったんだ。ミランダ嬢は分からないが、ローニャ嬢もアリーダも黒い霧は見えてなかったと言ってる。あの後映像でも何人かに確認してもらったが、デリックは見えたがダリルは見えなかった】
「陛下も見えなかったって言ってた」

 何だろう、その区分け。
 私とカークに、ケビン、デリックって、ゲームに出てくる人だよね。

【あぁ、そうだ。父も見えないと言っていた。他に見えたのは……】
「お父さんも見えたよ」
【ルキッシュ王が?】

 カークが不思議そうに眉を寄せる。

「ピーちゃんに入ってたから……かな?」

 なんとなくそう言ってみたけど、お父さんもゲームに関係あるのかな……あれ、やっぱりラスボス?
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

モブ令嬢はモブとして生きる~周回を極めた私がこっそり国を救います!~

片海 鏡
ファンタジー
――――主人公の為に世界は回っていない。私はやりたい様にエンディングを目指す RPG顔負けのやり込み要素満載な恋愛ゲーム《アルカディアの戦姫》の世界へと転生をした男爵令嬢《ミューゼリア》 最初はヒロインの行動を先読みしてラストバトルに備えようと思ったが、私は私だと自覚して大好きな家族を守る為にも違う方法を探そうと決心する。そんなある日、屋敷の敷地にある小さな泉から精霊が現れる。 ヒーロー候補との恋愛はしない。学園生活は行事を除くの全イベントガン無視。聖なるアイテムの捜索はヒロインにおまかせ。ダンジョン攻略よりも、生態調査。ヒロインとは違う行動をしてこそ、掴める勝利がある!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...