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赤い石と、ご丁寧にも青い石も光っている。
これって、こっちの音も拾っているってことだよね。……多分。
【キーラ?】
名前を呼ぶ声に、両手で顔を覆った。
思わずもれるため息の音も拾われそうだったから。
さっきもう声を聞かれているんだから、今更だけど。
それにしても、なんてタイミングが悪いんだろう。
せめてあっちの音が聞こえるだけなら、ごまかせるのに。
【キーラ、近くにいるよね?】
呼びかけに、少しだけ不安が混じっている。
壊れた箱からブレスレットを取り上げてテーブルへ移動し、覚悟を決めて声を出す。
「……いるよ」
小さな声はちゃんと向こうに届いた。
息を飲む音がして、それからほっとしたような吐息が聞こえた。
【キーラ、無事なんだね? 怪我とかしていない?】
「うん。元気だよ」
【……良かった。キーラにつけておいた魔法が反応したから、心配していたんだ】
「魔法……」
そうだ、イゴル達の時のあれだ。
「カーク、また勝手に私に何かしてたの?」
【え、今、その話?】
「大事なことだよ。もうしないって言ってたよね?」
【あれはキーラと約束する前だから!】
「ならちゃんと教えておいてくれればいいじゃない」
【だって、言ったらキーラ、嫌がるかと思って】
カークの声が遠くなる。
そりゃあ知らなかったら嫌だけど……
「言ってくれたら、嫌じゃないよ。だってカークのおかげで、助かったから」
【何があった?】
「何って……ちょっと蹴られそうになって……そしたら私を蹴ろうとした人が飛んいって……あれって、カークがフォルナトルから魔法で助けてくれたんでしょ?」
【いや、フォルナトルから魔法では助けられないよ】
え、違うの? エマさんはそう言っていたけど。
「そうなの?」
【流石に、ちょっと距離がありすぎて間に合わない。キーラが攻撃を受けたり、何かあったら私に分かるようにするものと、攻撃をした相手に衝撃が行くようなものだよ。でも、飛んで行くほどの威力は無い……はずだ】
「え、だって部屋の端まで飛んで行ったよ。それも魔法が使えない状態だったのに」
【……そう、か。どうしてそうなったか分からないけれど、きっとルキッシュの何かが影響したんだろう。そちらはどうやらフォルナトルとはいろいろ違うみたいだから」
「……そう、なんだ」
何だか腑に落ちないけど、結局はカークが私に何かしたのが良かったのは間違いないだろう。
「でも、カークのおかげでそんなに痛い思いをしなかったよ。ありがとう」
【……そんなに、じゃなく、絶対痛い思いをさせたくなかったよ。そうだ、キーラ、せっかくだから映像も送ってくれないか?】
「それは、嫌。もう寝る準備しちゃったから……」
【そっか。じゃあ、明日はいい?】
―――――明日もこれ、するの?
【キーラの顔が見たい】
「……気が向いたらね。それより、フォルナトルは大丈夫なの? 宣戦布告されたって聞いたけど」
面倒だから、話題を変えてしまおう。
【あぁ、大丈夫だよ。そろそろなことは分かっていたし、すぐに閉じたから多少攻撃は受けたけど影響は無いよ】
攻撃は、されたんだ。
【フォルナトルの損害は少しも無いから安心していいよ。ただ、面白いことが一つ】
「面白いこと?」
【うん、トクタムから送られてきた宣戦布告の映像があるんだけれど、それにリーナが映り込んでいたんだ】
「え? どう言うこと?」
【まだちょっと分からないけれど、リーナは今トクタムの上層部の一員で、フォルナトルへ攻撃を仕掛けた一人ってことのようなんだ】
「ごめん。意味がちょっとよく分からないんだけど」
リーナって、ゲームのヒロインだよね。
なんでそんなことになってるの?
―――――今日はもういっぱいいっぱいなのに、もういい加減にしてほしい。
これって、こっちの音も拾っているってことだよね。……多分。
【キーラ?】
名前を呼ぶ声に、両手で顔を覆った。
思わずもれるため息の音も拾われそうだったから。
さっきもう声を聞かれているんだから、今更だけど。
それにしても、なんてタイミングが悪いんだろう。
せめてあっちの音が聞こえるだけなら、ごまかせるのに。
【キーラ、近くにいるよね?】
呼びかけに、少しだけ不安が混じっている。
壊れた箱からブレスレットを取り上げてテーブルへ移動し、覚悟を決めて声を出す。
「……いるよ」
小さな声はちゃんと向こうに届いた。
息を飲む音がして、それからほっとしたような吐息が聞こえた。
【キーラ、無事なんだね? 怪我とかしていない?】
「うん。元気だよ」
【……良かった。キーラにつけておいた魔法が反応したから、心配していたんだ】
「魔法……」
そうだ、イゴル達の時のあれだ。
「カーク、また勝手に私に何かしてたの?」
【え、今、その話?】
「大事なことだよ。もうしないって言ってたよね?」
【あれはキーラと約束する前だから!】
「ならちゃんと教えておいてくれればいいじゃない」
【だって、言ったらキーラ、嫌がるかと思って】
カークの声が遠くなる。
そりゃあ知らなかったら嫌だけど……
「言ってくれたら、嫌じゃないよ。だってカークのおかげで、助かったから」
【何があった?】
「何って……ちょっと蹴られそうになって……そしたら私を蹴ろうとした人が飛んいって……あれって、カークがフォルナトルから魔法で助けてくれたんでしょ?」
【いや、フォルナトルから魔法では助けられないよ】
え、違うの? エマさんはそう言っていたけど。
「そうなの?」
【流石に、ちょっと距離がありすぎて間に合わない。キーラが攻撃を受けたり、何かあったら私に分かるようにするものと、攻撃をした相手に衝撃が行くようなものだよ。でも、飛んで行くほどの威力は無い……はずだ】
「え、だって部屋の端まで飛んで行ったよ。それも魔法が使えない状態だったのに」
【……そう、か。どうしてそうなったか分からないけれど、きっとルキッシュの何かが影響したんだろう。そちらはどうやらフォルナトルとはいろいろ違うみたいだから」
「……そう、なんだ」
何だか腑に落ちないけど、結局はカークが私に何かしたのが良かったのは間違いないだろう。
「でも、カークのおかげでそんなに痛い思いをしなかったよ。ありがとう」
【……そんなに、じゃなく、絶対痛い思いをさせたくなかったよ。そうだ、キーラ、せっかくだから映像も送ってくれないか?】
「それは、嫌。もう寝る準備しちゃったから……」
【そっか。じゃあ、明日はいい?】
―――――明日もこれ、するの?
【キーラの顔が見たい】
「……気が向いたらね。それより、フォルナトルは大丈夫なの? 宣戦布告されたって聞いたけど」
面倒だから、話題を変えてしまおう。
【あぁ、大丈夫だよ。そろそろなことは分かっていたし、すぐに閉じたから多少攻撃は受けたけど影響は無いよ】
攻撃は、されたんだ。
【フォルナトルの損害は少しも無いから安心していいよ。ただ、面白いことが一つ】
「面白いこと?」
【うん、トクタムから送られてきた宣戦布告の映像があるんだけれど、それにリーナが映り込んでいたんだ】
「え? どう言うこと?」
【まだちょっと分からないけれど、リーナは今トクタムの上層部の一員で、フォルナトルへ攻撃を仕掛けた一人ってことのようなんだ】
「ごめん。意味がちょっとよく分からないんだけど」
リーナって、ゲームのヒロインだよね。
なんでそんなことになってるの?
―――――今日はもういっぱいいっぱいなのに、もういい加減にしてほしい。
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