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「でも、詳しくは教えてもらえなかった……それでも、食い下がったよ。自分の妻と子供が良く分からない予言なんてものに関係あるって言われて、黙っていられないだろう?」
声に少し怒りが混じる。
「王様になっても予言は分からなかった、の?」
「世界に関係があることは知らされるけれど、その国固有のものは分からないんだ。予言なんてあってないようなもの……だからね。それに」
「……それに?」
「もうその時には……その……サインをした後で……それ以上言及出来なかったんだ」
「……」
今度はお父さんが俯いて顔を覆った。
今、サインした後って言ったよね?
……うかつ、すぎない?
―――――お父さん、王様だよね?
「キーラ、やっとお父さんって呼んでくれた!」
「え、な、何?」
急に抱きつかれて、何が起こったのか分からなくて固まる。
「今、お父さんって呼んだでしょ?」
「え?」
あ、もしかして声に出てた?
「もう呼んでくれないのかと思っていたよ」
嬉しそうな声に、心が痛い。
「……ごめんなさい」
「何で謝るの?」
お父さんが体を離して、私を覗きこむ。
眉を顰めたその顔はひどく不安そうだ。
「だって、私がキーラじゃなかったら……」
―――――お父さん、って言うのはおかしいよね?
「キーラはキーラだよ。何度も言うけれど、キーラはキーラなんだよ?」
「でもっ!」
「キーラ、さっきの話の続きをしよう。君たちが異世界転生者だと私は知っていた。そう言ったね」
確かめるように聞かれたので、私は頷いた。
「私はカーラが覚醒する時側にいた」
それは知っている。お父さんの記憶で見たし、お母様のノートにもあったことだ。
「君たちの覚醒の過程はほぼ同じだった」
「同じ?」
「そう、たとえるなら、小さな光が大きくなる。そんな感じだ」
「小さな光?」
何かを思い出すように、お父さんは空を見上げた。
「カーラと初めて会った時、彼女はどちらかと言うと希薄な存在だった。大きな魔力を持っていたし、行動も個性的だけど、なんて言うか何かあればすぐに消えてしまいそうな儚さがあった」
「お母様が?」
「そうだよ。強くて激しいのに何かが足りないんだ」
記憶の中のカーラを探す。でもすぐにやめた。
それが本物の記憶かどうかわからないから。
「でも、あの日、キーラを抱きながら覚醒したカーラから、その儚さみたいなものが無くなった。ふわりとして消えそうだった光が、強く輝きだした」
同じようなことをカークも言っていた。
爆発するような衝撃とか、なんとか……お父さんも見ていたんだ。
「キーラの時も同じだった。見てはいなかったけれど、キーラの存在が大きくなったのは感じていたよ。それは間違いなく覚醒前のキーラと変わらない、同じ気配だった」
「同じ? 本当に同じ?」
「同じだよ。私はキーラのお父さんで、キーラは私の娘だから、私は絶対にキーラを間違わないよ」
お父さんは、まっすぐに私を見てそう言った。
その声にも言葉にも少しも迷いが無い。
「……私」
目が痛い。
涙が出そうで、それを堪えるために目を見開いていたら、すごく目が痛いんだ。
「でも、私」
「かわいそうに」
お父さんがそう言って、私を抱きしめた。
「ずっと不安だったね。でも、大丈夫だよ。キーラは間違いなく、キーラ、だから」
我慢できなくて、私はまた泣いてしまった。
声に少し怒りが混じる。
「王様になっても予言は分からなかった、の?」
「世界に関係があることは知らされるけれど、その国固有のものは分からないんだ。予言なんてあってないようなもの……だからね。それに」
「……それに?」
「もうその時には……その……サインをした後で……それ以上言及出来なかったんだ」
「……」
今度はお父さんが俯いて顔を覆った。
今、サインした後って言ったよね?
……うかつ、すぎない?
―――――お父さん、王様だよね?
「キーラ、やっとお父さんって呼んでくれた!」
「え、な、何?」
急に抱きつかれて、何が起こったのか分からなくて固まる。
「今、お父さんって呼んだでしょ?」
「え?」
あ、もしかして声に出てた?
「もう呼んでくれないのかと思っていたよ」
嬉しそうな声に、心が痛い。
「……ごめんなさい」
「何で謝るの?」
お父さんが体を離して、私を覗きこむ。
眉を顰めたその顔はひどく不安そうだ。
「だって、私がキーラじゃなかったら……」
―――――お父さん、って言うのはおかしいよね?
「キーラはキーラだよ。何度も言うけれど、キーラはキーラなんだよ?」
「でもっ!」
「キーラ、さっきの話の続きをしよう。君たちが異世界転生者だと私は知っていた。そう言ったね」
確かめるように聞かれたので、私は頷いた。
「私はカーラが覚醒する時側にいた」
それは知っている。お父さんの記憶で見たし、お母様のノートにもあったことだ。
「君たちの覚醒の過程はほぼ同じだった」
「同じ?」
「そう、たとえるなら、小さな光が大きくなる。そんな感じだ」
「小さな光?」
何かを思い出すように、お父さんは空を見上げた。
「カーラと初めて会った時、彼女はどちらかと言うと希薄な存在だった。大きな魔力を持っていたし、行動も個性的だけど、なんて言うか何かあればすぐに消えてしまいそうな儚さがあった」
「お母様が?」
「そうだよ。強くて激しいのに何かが足りないんだ」
記憶の中のカーラを探す。でもすぐにやめた。
それが本物の記憶かどうかわからないから。
「でも、あの日、キーラを抱きながら覚醒したカーラから、その儚さみたいなものが無くなった。ふわりとして消えそうだった光が、強く輝きだした」
同じようなことをカークも言っていた。
爆発するような衝撃とか、なんとか……お父さんも見ていたんだ。
「キーラの時も同じだった。見てはいなかったけれど、キーラの存在が大きくなったのは感じていたよ。それは間違いなく覚醒前のキーラと変わらない、同じ気配だった」
「同じ? 本当に同じ?」
「同じだよ。私はキーラのお父さんで、キーラは私の娘だから、私は絶対にキーラを間違わないよ」
お父さんは、まっすぐに私を見てそう言った。
その声にも言葉にも少しも迷いが無い。
「……私」
目が痛い。
涙が出そうで、それを堪えるために目を見開いていたら、すごく目が痛いんだ。
「でも、私」
「かわいそうに」
お父さんがそう言って、私を抱きしめた。
「ずっと不安だったね。でも、大丈夫だよ。キーラは間違いなく、キーラ、だから」
我慢できなくて、私はまた泣いてしまった。
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