219 / 336
219
しおりを挟む
どうどうめぐり、なんだよね。
答えのないことをいつまで考えていても、結局たどりつく場所は同じ。
そんなこと分かっているけど、どうしても考えてしまう。
お父さんが目を覚ましてもう二日が立つ。
二ヶ月近く眠っていた上、前王派とか、アーサーとか、フォルナトルのこととかいろいろと忙しいみたいで、会うことは無かった。
この部屋に来るのはエマさんだけで、それも時々だから、私は部屋で箱の中の青い鳥を撫でながら、ぐるぐる考え続けてる。
キーラのことを。
キーラが乗っ取られ系なんじゃないかって言うのは、キーラになってから何度も頭に浮かんでいた。
ずっと気にしていたけど、そう考えると嫌な答えになるから、なるべく考えないようにしていたんだ。
この世界で生きていくために必要な記憶はあった。
ゲームの記憶――――違うな、情報とか、キーラじゃなくとも持っているような当たり前の記憶は。
だけど、キーラ個人の記憶は、少ない気がする。
転生って言うのが産まれた時からのもので、たまたまあの時何かの拍子で“前世の私”の記憶が戻ったなら、そんなことないはずだ。私になる前のキーラの記憶が、多少目減りしていたとしても、あるんじゃないかな……と思う。
オンリンナの直系だけが転生者として“覚醒”し、前世の記憶を思い出す。
それって、この世界に生きた記憶の上に、前世の記憶が戻るってことだよね。
お母様のノートでも、こっちのお母様の記憶がそのままで、前世の記憶を取り戻していたような感じだった。
私が考える異世界転生も、それが普通な気がする。
今までキーラの個人的な記憶を確かめるような場面がなかったから、なんとなくごまかしていられたけれど、お父さんが見せてくれたあの記憶が全くないのは流石におかしい。
そう、おかしいんだ。
それが、今回のことで分かってしまった。
私にキーラの記憶がないって、ことが。
私の持っているキーラの記憶が、本当のキーラの記憶じゃないって事が。
そして、多分、それは、あの黒い物のせいなんだ。
あの時、デリックがキーラを叩こうとした時、あの黒い物が本当のキーラを追い出して、キーラの中にはいるはずだったんだろう。
でも、お父さんが邪魔をした。
キーラの体は一瞬空になって、その隙間に、何の因果か私が入った……。
入ってしまったんだ。
私、どうしたらいいんだろう?
だって、私はキーラじゃないんだよね。
黒い物に関しては仮定で予想だけど、私的には、もう間違いない感じだ……。
「本当に、どうすればいいんだろう? これって誰に言えばいいの?」
私が転生者だって知っているのは、アーサーとマリー、カークと陛下。それからお父さんだ。
話すならその中の誰かだ。
―――――でも、話してどうするの?
キーラになってからの私を知っている人たちは、そんな話をするとみんな心配しなくていいって言う。
私はキーラだよって言うけど、誰も安心させるほどの何かを与えてはくれない。
そしたら、私はどうすればいいの?
キーラじゃないことを証明すればいいの?
それとも、キーラだって証明すればいいの?
どうやってそれを証明するの?
誰に向かって?
そして、私がキーラじゃないと証明されたら……その後は?
―――――怖い。怖すぎる。
「でも、このまま知らないふりは出来ないよね」
気がつかない振りをしていても、いずれお父さんがあの黒い物と、ピーちゃん人形を調べればきっとどこかで私がキーラじゃないって分かってしまう。
そうしたら……私はどうすればいいんだろうって、何度も何度も、繰り返し考えてしまう。
他にすることも無いのも駄目なんだろうけど、頭の中はそればっかりで……。
今は、お父さんに会うのも嫌だ。
そして、お父さんが目を覚ましたらフォルナトルに帰る、そう思っていたけど、今は、帰るのも嫌だ。
カークに会いたくない。
どっちも、怖い。
「大体、キーラじゃないって分かったら、どうなるのかな?」
キーラを殺したって、牢にいれられるのか、それともフォルナトルに送り返されるのか。
「あぁ、不幸な未来しか見えない……」
私、本当にどうなるんだろう?
「逃げたいけど……」
キーラになってから、フォルナトルでも、ここでも、与えられた部屋から殆ど出たことがないし、何も持ってない。
「どうやって、どこに逃げればいいんだろう?」
「キーラ! キーラってば!」
その日何十度目かの大きなため息をついて、テーブルに突っ伏したその時、フェイの声が聞こえて、背中を叩かれた。
答えのないことをいつまで考えていても、結局たどりつく場所は同じ。
そんなこと分かっているけど、どうしても考えてしまう。
お父さんが目を覚ましてもう二日が立つ。
二ヶ月近く眠っていた上、前王派とか、アーサーとか、フォルナトルのこととかいろいろと忙しいみたいで、会うことは無かった。
この部屋に来るのはエマさんだけで、それも時々だから、私は部屋で箱の中の青い鳥を撫でながら、ぐるぐる考え続けてる。
キーラのことを。
キーラが乗っ取られ系なんじゃないかって言うのは、キーラになってから何度も頭に浮かんでいた。
ずっと気にしていたけど、そう考えると嫌な答えになるから、なるべく考えないようにしていたんだ。
この世界で生きていくために必要な記憶はあった。
ゲームの記憶――――違うな、情報とか、キーラじゃなくとも持っているような当たり前の記憶は。
だけど、キーラ個人の記憶は、少ない気がする。
転生って言うのが産まれた時からのもので、たまたまあの時何かの拍子で“前世の私”の記憶が戻ったなら、そんなことないはずだ。私になる前のキーラの記憶が、多少目減りしていたとしても、あるんじゃないかな……と思う。
オンリンナの直系だけが転生者として“覚醒”し、前世の記憶を思い出す。
それって、この世界に生きた記憶の上に、前世の記憶が戻るってことだよね。
お母様のノートでも、こっちのお母様の記憶がそのままで、前世の記憶を取り戻していたような感じだった。
私が考える異世界転生も、それが普通な気がする。
今までキーラの個人的な記憶を確かめるような場面がなかったから、なんとなくごまかしていられたけれど、お父さんが見せてくれたあの記憶が全くないのは流石におかしい。
そう、おかしいんだ。
それが、今回のことで分かってしまった。
私にキーラの記憶がないって、ことが。
私の持っているキーラの記憶が、本当のキーラの記憶じゃないって事が。
そして、多分、それは、あの黒い物のせいなんだ。
あの時、デリックがキーラを叩こうとした時、あの黒い物が本当のキーラを追い出して、キーラの中にはいるはずだったんだろう。
でも、お父さんが邪魔をした。
キーラの体は一瞬空になって、その隙間に、何の因果か私が入った……。
入ってしまったんだ。
私、どうしたらいいんだろう?
だって、私はキーラじゃないんだよね。
黒い物に関しては仮定で予想だけど、私的には、もう間違いない感じだ……。
「本当に、どうすればいいんだろう? これって誰に言えばいいの?」
私が転生者だって知っているのは、アーサーとマリー、カークと陛下。それからお父さんだ。
話すならその中の誰かだ。
―――――でも、話してどうするの?
キーラになってからの私を知っている人たちは、そんな話をするとみんな心配しなくていいって言う。
私はキーラだよって言うけど、誰も安心させるほどの何かを与えてはくれない。
そしたら、私はどうすればいいの?
キーラじゃないことを証明すればいいの?
それとも、キーラだって証明すればいいの?
どうやってそれを証明するの?
誰に向かって?
そして、私がキーラじゃないと証明されたら……その後は?
―――――怖い。怖すぎる。
「でも、このまま知らないふりは出来ないよね」
気がつかない振りをしていても、いずれお父さんがあの黒い物と、ピーちゃん人形を調べればきっとどこかで私がキーラじゃないって分かってしまう。
そうしたら……私はどうすればいいんだろうって、何度も何度も、繰り返し考えてしまう。
他にすることも無いのも駄目なんだろうけど、頭の中はそればっかりで……。
今は、お父さんに会うのも嫌だ。
そして、お父さんが目を覚ましたらフォルナトルに帰る、そう思っていたけど、今は、帰るのも嫌だ。
カークに会いたくない。
どっちも、怖い。
「大体、キーラじゃないって分かったら、どうなるのかな?」
キーラを殺したって、牢にいれられるのか、それともフォルナトルに送り返されるのか。
「あぁ、不幸な未来しか見えない……」
私、本当にどうなるんだろう?
「逃げたいけど……」
キーラになってから、フォルナトルでも、ここでも、与えられた部屋から殆ど出たことがないし、何も持ってない。
「どうやって、どこに逃げればいいんだろう?」
「キーラ! キーラってば!」
その日何十度目かの大きなため息をついて、テーブルに突っ伏したその時、フェイの声が聞こえて、背中を叩かれた。
1
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する
山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。
やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。
人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。
当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。
脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ
弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は、たった今をもって解消させてもらう!!』
国のこれからを背負う若者たちが学院を卒業することを祝って開かれた舞踏会の日、めでたい筈のその席に響いた第一皇子の声を聞いた瞬間、私の頭にこの場面と全く同じ“ゲーム”の場面が再生された。
これ、もしかしなくても前世でやり込んでた乙女ゲームの終盤最大の山場、“断罪イベント”って奴じゃないですか!?やり方間違ったら大惨事のやつ!!
しかし、私セレスティア・スチュアートは貧乏領地の伯爵令嬢。容姿も社交も慎ましく、趣味は手芸のみでゲームにも名前すら出てこないザ・モブ of the モブ!!
何でよりによってこのタイミングで記憶が戻ったのか謎だけど、とにかく主要キャラじゃなくてよかったぁ。……なんて安心して傍観者気取ってたら、ヒロインとメインヒーローからいきなり悪役令嬢がヒロインをいじめているのを知る目撃者としていきなり巻き込まれちゃった!?
更には、何でかメインヒーロー以外のイケメン達は悪役令嬢にぞっこんで私が彼等に睨まれる始末!
しかも前世を思い出した反動で肝心の私の過去の記憶まで曖昧になっちゃって、どっちの言い分が正しいのか証言したくても出来なくなっちゃった!
そんなわけで、私の記憶が戻り、ヒロイン達と悪役令嬢達とどちらが正しいのかハッキリするまで、私には逃げられないよう監視がつくことになったのですが……それでやって来たのが既に悪役令嬢に攻略され済みのイケメン騎士様でしかも私の初恋の相手って、神様……これモブに与える人生のキャパオーバーしてませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる