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「お仕置きって……」
お父さん、それ、お父さんが言う言葉じゃないよね。
お父さんが皆に内緒で体を離れなければこうならなかった……って、思ったけれど、元はと言えば私のせい……かな?
うん、黙っていよう。
「どうするの?」
妙な間があったけれど、私はそう続けて首を傾げた。
「そうだね。とりあえず喧嘩を止めようかな」
「喧嘩……」
「ちょっと飛ぶから、キーラはちゃんとつかまっているんだよ」
「う、うん」
どう飛ぶのか良く分からないので、とりあえず頷き目の前の布にしがみつく。
お父さんは少し不満そうな顔をしたれど、すぐに扉の方へ目を向けて、
「派手にやってるなぁ。直すのが面倒だから、あまり傷つけないでほしいんだけど……」
なんてため息をついた。
そして、私を抱いたままポンって飛び上がった。
飛ぶって、本当に飛ぶんだ……。
急に遠ざかる床に、思わずただしがみついていた手をお父さんの首にまわしてしまう。
だって、意外と……かなり、怖いんだよ。
「怖くなるから、下は見ない方がいいよ。キーラ」
幾分嬉しそうな声で言いながら、お父さんはさらに上昇した。
天井代わりの葉っぱまで近付くと、葉っぱが左右に避けて道が出来た。
お父さんはその間を器用にバランスを取りながら進むと、足元から嫌な音が聞こえてきた。
「二人ともやり過ぎだ……」
空中に止まったお父さんの言葉に下を見ると、アーサーとバルドが……多分戦っているんだろう。
「あれって、魔法?」
「うん。魔法だけど……ひどいなぁ」
お父さんが頭を振った。
二人は部屋の端と端に立って、まるで雪合戦するみたいにいろんな色の玉を投げ合っている。
アーサーが投げて、バルドが避ける。バルドが投げて、アーサーが避ける。
一つの時もあるし、二つ以上の時もある。避けきれないときは、手で弾き飛ばしたり、新たな玉を投げて相殺する。
そんな感じだ。
「何をやっているんだ、二人は……これじゃあ子供の遊びじゃないか」
そうだね。遊んでるみたい。二人とも顔はすごく真剣だけど。
困り顔のお父さんは、またため息をつく。
「力が拮抗してるからこんな風になったのか? まったく無駄に力が強いから、子供の遊びでも被害が大きい」
「どうやって止めるの?」
「そうだね、とりあえず……『捕獲』」
お父さんがそうつぶやくと、アーサーとバルドが急に動きを止めた。
玉を投げようとしていた二人の手から光が消えて、驚いた顔できょろきょろとあたりを見回している。
「何したの?」
「ちょっと閉じ込めてみた」
お父さんはそう言って、ゆっくり下降を始めた。
二人に近付いていくと、二人はそれぞれ何か透明の膜みたいなものの中にいるのが分かった。たとえるなら、シャボン玉の中にいるみたい。
「ラーシュ様!」
バルドが先に気がついてこっちを見る。それにつられるようにアーサーも私たちの方へ視線を向けて、目を見開くのが分かった。
「……ラーシュ様?」
ほっとしたようなバルドと違って、アーサーは驚愕の表情をしてる。
―――――アーサー、本当にお父さんのこと気が付いていなかったんだ。
お父さんはゆっくりと地面に降りた。
「……君たちは一体何をやっているんだい?」
お父さんは二人を交互に見比べて、肩をすくめる。
「バルド、君の闘い方はこんなものだったろうか? これじゃあ、仕事を任せられないよ。そしてアーサー、君はいつから私のことを認識できなくなったんだい? キーラに対してしたことも、ちゃんと説明できるんだろうね?」
お父さんの静かだけど、冷たい声が部屋に響く。
アーサーもバルドも、身動き一つしない。
お父さんを見ると、とてつもなくいい笑顔で……ちょっと怖い。
お父さん、それ、お父さんが言う言葉じゃないよね。
お父さんが皆に内緒で体を離れなければこうならなかった……って、思ったけれど、元はと言えば私のせい……かな?
うん、黙っていよう。
「どうするの?」
妙な間があったけれど、私はそう続けて首を傾げた。
「そうだね。とりあえず喧嘩を止めようかな」
「喧嘩……」
「ちょっと飛ぶから、キーラはちゃんとつかまっているんだよ」
「う、うん」
どう飛ぶのか良く分からないので、とりあえず頷き目の前の布にしがみつく。
お父さんは少し不満そうな顔をしたれど、すぐに扉の方へ目を向けて、
「派手にやってるなぁ。直すのが面倒だから、あまり傷つけないでほしいんだけど……」
なんてため息をついた。
そして、私を抱いたままポンって飛び上がった。
飛ぶって、本当に飛ぶんだ……。
急に遠ざかる床に、思わずただしがみついていた手をお父さんの首にまわしてしまう。
だって、意外と……かなり、怖いんだよ。
「怖くなるから、下は見ない方がいいよ。キーラ」
幾分嬉しそうな声で言いながら、お父さんはさらに上昇した。
天井代わりの葉っぱまで近付くと、葉っぱが左右に避けて道が出来た。
お父さんはその間を器用にバランスを取りながら進むと、足元から嫌な音が聞こえてきた。
「二人ともやり過ぎだ……」
空中に止まったお父さんの言葉に下を見ると、アーサーとバルドが……多分戦っているんだろう。
「あれって、魔法?」
「うん。魔法だけど……ひどいなぁ」
お父さんが頭を振った。
二人は部屋の端と端に立って、まるで雪合戦するみたいにいろんな色の玉を投げ合っている。
アーサーが投げて、バルドが避ける。バルドが投げて、アーサーが避ける。
一つの時もあるし、二つ以上の時もある。避けきれないときは、手で弾き飛ばしたり、新たな玉を投げて相殺する。
そんな感じだ。
「何をやっているんだ、二人は……これじゃあ子供の遊びじゃないか」
そうだね。遊んでるみたい。二人とも顔はすごく真剣だけど。
困り顔のお父さんは、またため息をつく。
「力が拮抗してるからこんな風になったのか? まったく無駄に力が強いから、子供の遊びでも被害が大きい」
「どうやって止めるの?」
「そうだね、とりあえず……『捕獲』」
お父さんがそうつぶやくと、アーサーとバルドが急に動きを止めた。
玉を投げようとしていた二人の手から光が消えて、驚いた顔できょろきょろとあたりを見回している。
「何したの?」
「ちょっと閉じ込めてみた」
お父さんはそう言って、ゆっくり下降を始めた。
二人に近付いていくと、二人はそれぞれ何か透明の膜みたいなものの中にいるのが分かった。たとえるなら、シャボン玉の中にいるみたい。
「ラーシュ様!」
バルドが先に気がついてこっちを見る。それにつられるようにアーサーも私たちの方へ視線を向けて、目を見開くのが分かった。
「……ラーシュ様?」
ほっとしたようなバルドと違って、アーサーは驚愕の表情をしてる。
―――――アーサー、本当にお父さんのこと気が付いていなかったんだ。
お父さんはゆっくりと地面に降りた。
「……君たちは一体何をやっているんだい?」
お父さんは二人を交互に見比べて、肩をすくめる。
「バルド、君の闘い方はこんなものだったろうか? これじゃあ、仕事を任せられないよ。そしてアーサー、君はいつから私のことを認識できなくなったんだい? キーラに対してしたことも、ちゃんと説明できるんだろうね?」
お父さんの静かだけど、冷たい声が部屋に響く。
アーサーもバルドも、身動き一つしない。
お父さんを見ると、とてつもなくいい笑顔で……ちょっと怖い。
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